発注業務では、FAXやメールを使ったアナログな発注を行っている中小・中堅製造業も多く見られますが、人手不足が深刻化していく昨今、発注業務のデジタル化を推進し、効率化することが求められています。この記事では、製造業の発注業務の流れや課題、受発注EDIシステムによる効率化の方法などを解説します。
製造業の発注業務とは? 業務の流れや課題、受発注システムによる効率化の方法を解説
2024年 5月 9日公開
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目次
製造業における発注業務とは
発注業務とは、生産に必要な原材料や部材などを仕入先(受注企業)に注文する業務です。製造業においては、生産の一部または全てを仕入先に注文することも発注業務に含まれます。
製造業では、原材料や部材が足りないと予定どおりに生産できず、顧客に製品を提供できなくなる恐れがあります。また、必要以上に注文してしまうと無駄なコストが増加し、経営状況を悪化させる可能性もあります。在庫状況や生産計画から必要な数量を判断し、適切なタイミングと方法で注文することが、製造業にとって重要です。
主な発注方法とその特徴
製造業の発注業務における代表的な発注方法とそれぞれの特徴をご紹介します。
FAX
注文書や図面などの添付資料をFAXで仕入先に送信する方法です。メールの普及に伴って日常生活での使用頻度は少なくなってきましたが、製造業の発注業務では今でも頻繁にFAXが使用されています。
FAXでの発注には、電話とは違って履歴が残る、注文書のフォーマットを自由に決められる、といったメリットがあります。図面などに数量や希望納期などの情報を書き足して注文書代わりにし、FAXで発注するケースもあります。
メール
メールに直接注文内容を記入したり、注文書や図面などを添付したりして送信する方法です。パソコンとネットワーク環境さえあれば誰でも活用できるため、現在では最も一般的な発注方法といえるでしょう。
メールでの発注には、FAXとは違って紙やインクなどの消耗品が必要ない、Excelなどで注文書のフォーマットを自由に作れる、といったメリットがあります。また、仕入先とのやり取りの履歴が残るため、後で見返すことができる点もメリットです。
EDI
EDIは「Electronic Data Interchange」の略称で「電子データ交換」のことです。企業間の取引をデジタル化する仕組みであり、専用のシステム上で発注情報をやり取りする方法です。
EDIでの発注には、Excelなどで発注書を作成する必要がない、発注履歴や発注後のやり取りを把握しやすい、といったメリットがあります。発注業務を効率的に行えるため、昨今では導入する企業が増えつつある方法です。
発注業務の基本的な流れ

製造業の発注業務における基本的な流れをご紹介します。
見積り
正式に発注する前に仕入先に見積り依頼をして、価格や納期を確認します。同じ商品を継続的に発注している場合は、見積りを省略してすぐに発注することも可能です。
仕入先に見積り依頼をする際には、商品や数量だけでなく納期や支払い条件などの希望も伝えることで、より正確な回答が得られるようになります。同じ原材料や部品を複数の仕入先が取り扱っている場合は、相見積りを行って、より良い条件の仕入先を選定します。
発注
見積りの結果を基に作成した注文書を仕入先に送付することで、正式に発注します。継続的に発注する場合は取引条件を定めた購買契約を締結しておくと、その後の取引をスムーズに行えるでしょう。
FAXやメールによる発注で送信したとしても、仕入先側は受注したことに気付かない恐れがあるため、発注後に仕入先に電話し、発注した旨をあらためて連絡する、といった手間がかかることがあります。
納期確認
発注時に伝えた希望納期に対して、実際に対応可能な納期がいつになるのかを仕入先に確認します。商品によっては発注したタイミングや数量によって単価が変わることもあるため、納期だけでなく単価も確認しなければなりません。
仕入先からの回答が自社の希望に沿わない場合は、電話やメールで交渉する必要があります。
受入・検収
発注した商品が納品されたら、受入作業として商品の内容や数量、品質を確認します。納期どおりに納品されない場合や、納品物に不備があった場合は、仕入先に対して対応を依頼しましょう。
受入作業の結果が問題なければ、基幹業務システムなどで検収処理を行います。必須ではありませんが、検収書を発行して仕入先に渡しておくと、トラブル防止や売上計上の基準として役立ちます。
支払い処理
仕入先から請求書が届いたら、経理部門の担当者が買掛内容と請求内容が一致しているかを確認します。間違いがなければ請求内容を基幹業務システムなどに入力し、支払い処理を行います。
支払い方法やタイミングは仕入先によって異なる場合があります。事前に整合した支払い条件に従って、支払い処理を確実に行いましょう。
製造業の発注業務でよくある課題
製造業におけるFAXやメールでの発注業務でよくある課題をご紹介します。
発注方法の統一が難しい
ある仕入先はFAX、別の仕入先はメールといったように異なる発注方法を使い分けているケースでは、仕入先ごとに発注方法を覚える必要があったり、注文書のフォーマットが複数あったりして、発注業務が煩雑になりがちです。また、仕入先ごとに発注手順が異なるため標準化・効率化が進まないという課題もあります。
仕入先とのやり取りに時間がかかる
FAXやメールで送信した注文書が届いているかを電話で確認する、納期や出荷状況を電話で確認するなど、仕入先とのやり取りに時間がかかってしまい、本来やるべき業務に時間が割けなくなる傾向にあります。また、電話でのやり取りでは、言い間違いや聞き間違いなどのヒューマンエラーが発生する恐れもあります。
膨大な書類を管理する必要がある
FAXやメールのようなアナログな方法で発注している場合、注文書・納品書・検収書・請求書などの紙の書類が発生します。一部の書類は長期間保管することが法律で定められているため、適切に管理しておかなければならず、膨大な書類をファイリングしたり、探したりする手間が発生してしまいます
FAXやメールでの発注に課題がある
FAXの場合、文字がつぶれて見えなくなってしまったり、手書きの文字が読めずに正しく仕入先に伝わらなかったりする恐れがあります。メールの場合は、個別の担当者しか確認できずに見落としが発生する、後で見返す際に一覧性が低いといった問題があります。FAXやメールには誰でも手軽に使えるというメリットがありますが、発注業務を効率化するにあたっては課題も多くあります。
発注業務を効率化する方法
製造業が発注業務を効率化するために有効な三つの方法をご紹介します。
業務フローを「見える化」する
既存の発注業務のどこに課題があるのかを把握するには、まずは業務フローを「見える化」する必要があります。上述した発注業務の流れに沿って、何を行っているのか、どれだけの時間がかかっているのか、どのようなミスが発生しているのかを整理してみましょう。
例えば、Excelなどで注文書を作成するのに時間がかかっているのであれば、継続的に発注する商品の注文書を事前に用意しておく、EDIシステムを導入するといった改善策が考えられます。
発注方式を最適化する
原材料や部材が必要になったタイミングで都度発注していると、発注業務が煩雑になり、発注漏れや欠品のリスクも高まります。常に在庫を確保しておきたい商品の場合は、「定量発注方式」と「定期発注方式」のいずれかを適用することで、発注業務を効率化できます。
「定量発注方式」は、特定の数量(発注点)を下回ったら一定数発注する方法であり、「定期発注方式」は事前に決めた発注間隔で定期的に発注する方法です。原材料や部材の特性に合わせてこれらの発注方式を使い分けるようにしましょう。
EDIシステムを導入する
EDI(企業間の取引を電子化する仕組み)は、受発注業務の効率化に役立ちます。以前は大手企業が自社独自のEDIシステムを構築して仕入先に提供するのが一般的でしたが、昨今ではWeb上で受発注連携を行えるクラウド型のパッケージシステムが増えたことで、中小・中堅企業でもEDIシステムを導入しやすい環境が整っています。
EDIシステムで発注業務を電子化するメリット
EDIシステムを導入することで、次のように発注業務を効率化できます。
- FAXやメールを送信したり、注文書を発行したりする手間が削減される
- 情報がリアルタイムに共有されるため、発注・納入の状況や納期がすぐに分かる
- 仕入先と同じ画面・同じデータを確認できるため、認識違いやコミュニケーションロスが削減される
- 基幹業務システムと連携することで、入力・転記作業が不要になる
- 買掛・売掛の照合がシステム上で確認でき、経理担当者によるチェックやミスが削減される
このようにさまざまな業務が効率化された結果、業務コストを大幅に削減できる点がEDIシステムを導入する最大のメリットといえます。また、発注書や納品書などの紙帳票がなくなるため、ペーパーレス化の推進や電子帳簿保存法への対応といった面でも効果的です。

クラウド型EDI「BtoBプラットフォーム 受発注 for 製造業」でできること

大塚商会では、製造業の発注業務を効率化するクラウド型EDI「BtoBプラットフォーム 受発注 for 製造業」を提供しています。EDIシステムの特長を簡単にご紹介します。
発注から検収までの一連の流れが電子化できる
「BtoBプラットフォーム 受発注 for 製造業」は、発注・納期確認・受入・検収までの一連の流れをWeb上で完結できるEDIシステムです。FAX・メール・電話などの手間を省くことができ、仕入先に確認した納期や単価などを転記する必要もありません。従来のアナログな発注業務に比べて業務時間を大幅に短縮でき、発注業務にかかるコストを削減します。

基幹業務システムと連携ができる
「BtoBプラットフォーム 受発注 for 製造業」では、生産管理システムなどの基幹業務システムと連携して発注業務を効率化できます。例えば、基幹業務システム上で発注数量を入力して発注ボタンを押すだけで、自動で発注情報を連携させて仕入先に発注できます。
これにより、基幹業務システムで登録した内容を基に注文書を別途作成したり、FAXやメールを作成・送信したりする手間がなくなります。図面などの添付ファイルも基幹業務システム上にアップロードしておけば、発注情報と共に連携できます。

仕入先も賛同しやすい仕組みを構築できる
EDIシステムは自社だけでなく、仕入先にとってもメリットがなければなかなか受け入れてもらえません。「BtoBプラットフォーム 受発注 for 製造業」はその名のとおりプラットフォームとして汎用(はんよう)的に活用できるシステムであり、仕入先側も複数の企業と連携して受発注を一元管理することが可能です。
また、サポート体制の一貫として仕入先向けの導入説明会なども実施するなど、仕入先が賛同しやすい環境づくりも行っています。

発注業務の電子化事例
- 業種
- 製造業(業務用の変圧器や制御盤を製造)
- 課題
- 仕入先との発注・納期のやり取りを簡略化したい
- 注文書などの紙の保管業務をなくしていきたい
- 成果
- 発注時のFAX・メールにかける時間を1/7に削減
- 仕入先との図面のやり取りにかける時間を1/12に削減
- テレワークへの円滑な移行を実現
まとめ
EDIシステムなどを導入して発注業務を効率化すれば、業務コストの削減、ペーパーレス化やヒューマンエラーの防止にもつながります。自社の発注業務に課題を感じている場合は、EDIシステムの導入を検討してはいかがでしょうか。
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本記事の監修者

朝井 雄一郎 氏(株式会社インフォマート パートナー事業部)
業界・規模を問わず幅広い企業に対し、請求業務の電子化による業務改善ソリューション営業を担当。
2020年より、外食業界で20年以上の実績を誇る受発注システムを製造業界にも広げるために立ち上がった、「BtoBプラットフォーム 受発注 for 製造業」部門の一員となる。
現在は「BtoBプラットフォーム受発注 for 製造業」「BtoBプラットフォーム 請求書」のノウハウを活かし、BtoBプラットフォームを国内のスタンダードにするため活動中。
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