原価管理とは? 目的や製造原価の分類、生産管理システム導入のメリット

2020年 5月 7日公開

原価管理は、企業の利益に直結する重要な業務です。しかし、今も多くの会社でエクセルの原価管理表などで管理しているのが現状です。原価管理を備えた生産管理システムを導入することで、利益を確保できる原価管理が可能になります。この記事では、原価管理の目的や製造原価を構成する各要素(費目)、原価計算の方法と生産管理システム導入でできることついて解説します。

原価管理とは

製造原価とは

原価管理を正しく行うために、まずは製造原価について理解する必要があります。製造原価とは、一つの製品の製造にかかる、全てのコストのことです。具体的には以下のようなコストが含まれます。

  • 原料、材料、部品、資材
  • 製造までに携わった作業者の人件費
  • 製造工場の賃料や水道光熱費
  • 機械・設備の費用

原価管理の目的

原価管理は、製造のムダをなくして利益を上げるために行います。
製造業が利益を上げるための方法は、売り上げを上げる、原価を下げる、の二つになりますが、いくら売り上げを上げても製造にかかる費用にムダがあれば利益は確保できません。原価管理は、製造業の経営に直結する重要課題なのです。

製造業における原価管理は、1製品あたりの製造原価を算出し、予定原価と実績を比較して問題点を分析し、改善策を立てて実行する、ということを繰り返し行います。これにより、原価低減や販売価格の適正化を図ります。

原価管理を適切に行うと、損益分岐点(英語でBreak-even point、BEP)が分かります。売上高が原価を超えて、どこから利益が出るか、を把握することによって経営判断がしやすくなります。

製造原価の要素(費目)

製造原価を集計する際は、発生した原価の要素を適切な「費目」として分類し、集計する必要があります。「費目」は、以下のように分類されます。

直接費・間接費の違い

直接費とは、製品を製造するために使われたことが明らかな費用のことです。それに対し、間接費とは、製品を製造するために使われたことが明らかでない費用を指します。

材料費・労務費・外注費・経費の分類

材料費
製品製造の際に使用した材料の購入費用
労務費
製品製造に携わった作業者の人件費
外注費
製品製造の際の外注加工費用(注)
経費
製造現場にかかわる経費全般(運送費、機械・設備の減価償却費や修繕費、工場の賃料や固定資産税、水道光熱費など)
  • (注)外注費は、製造業特有の財務諸表である「製造原価報告書」上では、「外注加工費」として「経費」に計上されます。

上記の「材料費、労務費、外注費、経費」と「直接費、間接費」を組み合わせると、以下のようになります。

直接費間接費
直接材料費
製品製造の際に使用した材料の購入費用
間接材料費
製品ごとの消費量が不明確な材料の購入費用
直接労務費
製品製造にかかわった直接作業時間分の人件費
間接労務費
直接労務費以外の全ての労務費
直接外注費
製品製造の際の外注加工費用
間接外注費
製品ごとの特定が不明確な外注加工費用
直接経費
製品製造の際の諸経費(運送費など)
間接経費
製品製造以外の諸経費(減価償却費や光熱費、貸借料、保険料など)

標準原価・実際原価とは

原価計算では、まず要素別(費目別)に原価計算を行います。一定期間にかかった原価を費目別に分類・計算するのですが、このとき、製造に際して実際に発生した金額を実際原価といい、これに基づいて原価計算することを実際原価計算といいます。また、実際原価計算の前に、標準原価としてあらかじめ設定した製造原価(予定原価)を計算しておくことも大事です。

標準原価
製造前にあらかじめ設定した製造原価(予定原価)
実際原価
実際に発生した製造原価

標準原価(予定原価)と実際原価との間に大きなズレが発生することも当然よくあります。しかし、この二つの原価をきちんと把握できていない企業も多くあります。標準原価と実際原価を比較・分析しながら、定期的に標準原価の見直しと更新を行うことは非常に重要です。

標準原価・実際原価とは

累加法・非累加法とは

製品は複数の製造工程を経て完成します。そのため、最終完成品の製造原価は、各工程で生じた原価を積み上げて集計しなければなりません。部品構成においても、子品目から親品目へ原価が積み上げられていきます。

【原価積み上げのイメージ(下図は標準原価の場合)】

原価積み上げのイメージ

各工程や親子品目間で生じた原価を費目別に積み上げていく方法には、「累加(るいか)法」と「非累加(ひるいか)法」の2種類があります。

累加法

前工程の製造原価(材料費・労務費・外注費・経費)を次の工程に前工程費(あるいは材料費)として集約する計算方法です。前工程の製造原価を前工程費や材料費として合算(累加)します。

あるいは、製品構成において子品目の製造原価(材料費・労務費・外注費・経費)を親品目に材料費として合算(累加)する方法です。

この方法では、自工程や自品目の費用の把握がしやすくなる一方、前工程や子品目の費目内訳が分かりづらくなります。

非累加法

前工程の製造原価の費目要素(材料費・労務費・外注費・経費)を保持したまま次の工程に積み上げる計算方法です。前工程の製造原価を前工程費や材料費として合算(累加)しません。

あるいは、製品構成において子品目の費目要素(材料費・労務費・外注費・経費)を保持したまま親品目に積み上げ、材料費として合算(累加)しない方法です。

この方法では、最終完成品・親品目の原価の費目内訳が把握できる一方、工程ごと・子品目ごとの原価が分かりづらくなります。

原価を積み上げていく際には、累加法か非累加法かをあらかじめ確認しておく必要がありますが、どちらがいいとは一概にはいえません。生産管理システムの中には、累加法と非累加法のどちらでも選択・対応できるものもあるので、事前に確認しておくと良いでしょう。

完成品の製造原価の計算方法

製番別原価・品目別原価とは

完成品の製造原価の計算方法には、「製番別原価」と「品目別原価」の2種類があります。

製番別原価

製造原価を受注案件ごとに分類して、製番別に集計・積み上げ計算を行う方法です。

製番別原価

主に個別品や特注品を中心に、受注ごとに毎回仕様が異なるモノを製造している製造業で採用されています。

品目別原価

製造原価を品目ごとに分類して、集計・積み上げ計算を行う方法です。
主に共通品や標準品を中心に、毎回仕様が同じモノを繰返製造している製造業で採用されています。

品目別原価

品目別原価では、同じ品目でも発生したタイミングによって原価がそれぞれ異なるため、通常、月次平均という形で計算されます。

この品目別原価ができない原価管理ソフトもあるため、結局エクセルで管理しているという会社は少なくありません。生産管理システムを導入する際には、「製番別原価」と「品目別原価」のどちらに対応しているのか、あるいは両方に対応しているのか事前に確認することをお勧めします。

一部個別品のハイブリッド原価計算

共通品や標準品をもとに一部分を個別カスタマイズして生産している場合、あるいは、個別品や特注品の中に共通ユニットや標準部品を組み合わせて生産している場合は、「製番別原価」と「品目別原価」の二つをハイブリッドで利用する必要があります。つまり、共通ユニットや標準部品は「品目別原価」で、個別や特注部分については「製番別原価」で計算します。

二つの異なる方法で行う原価管理は非常に複雑で大変ですが、生産管理システムの中にはこうしたハイブリッド原価計算に対応できるものがあります。

間接費の配賦

間接費の配賦とは

間接費は、どの製品にどれだけ消費されたのか判別しづらい原価です。そのため、何らかの基準を設けて製品ごとに費用を振り分ける必要があます。その製品ごとの費用の振り分けを、原価計算では「配賦(はいふ)」といいます。生産量や機械の稼働時間などに応じて、企業ごとに基準を設けて配賦を行っています。

部門別共通費の配賦計算

間接費の中で、部門ごとに発生した共通費(例えば、水道・電気・光熱費など)については、部門別に配賦を行います。

部門別に配賦計算をする際は、配賦対象となる部門を「直接部門」と「補助部門」の2種類に分けます。

直接部門
製品の製造を直接行う部門(加工部門、組立部門など)
補助部門
製造部門のサポートを行う部門(修繕部門、工場事務部門など)

補助部門の共通費は、最終的に直接部門に配賦する必要があるため、以下の図のような2段階配賦になるケースが多いです。こうした非常に複雑な配賦計算も、生産管理システムによってはシンプルな操作だけで計算可能なものもあります。

【配賦の流れ】

部品別共通費の配賦の流れ

原価管理に関する改善事例

生産管理システム導入により、どのように原価管理の課題が解決できるのか、企業様の改善事例を幾つかご紹介します。

株式会社9Times

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生産革新ファミリー

まとめ

製造業にとって、原価管理は利益にかかわる重要事項です。厳密に原価管理を行おうとすると複雑な計算が必要になりますが、生産管理システムを導入すれば、手間をかけずに緻密な原価管理を行うことが可能です。

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