公認会計士・税理士
税理士法人ファーストライン 代表社員
増田 卓也(ますだ たくや)
大手監査法人にて、金融機関・外資系金融機関、製造業などの会計監査に従事した後、税理士法人ファーストライン代表社員に就任。現在、金融機関の会計監査の経験を生かし、中小企業や個人事業者を対象とした税務顧問、資金繰り改善支援、経営支援に従事している。
税制活用は見極めが肝心です。何が使えて何が使えないのか。設備投資なのか、修繕費なのか。この判断もまた大切なところ。今回はその点をお伝えします。
[2017年 2月23日公開、2023年12月27日更新]
国税庁が公表している統計によれば、令和3年3月に決算があった会社は50万社を超えており、全体の約18%を占めています。まだまだ3月決算の会社が多いようですが、最近では3月決算以外の会社も増えています。決算が近づいてくると利益の着地点がみえてきて、支払う税金の額も予想ができるようになります。
支払う税金の額が思っていたよりも増えてしまい、「節税のために何か買った方がよいですか?」というご質問を受けることがあります。その場合、「事業に必要なものであれば購入されてもよいですね」とお答えしています。節税のために事業に必要のないものを買うのは経営的に論外です。また、その事業に必要な買い物が当期の税金を減らす効果があるかどうかはケースバイケースになります。
通常、固定資産を購入した場合、固定資産は購入時に全て費用になるわけではなく、決められた耐用年数にわたって少しずつ減価償却費として費用化されていきます。さらに決算直前で購入しても減価償却費は月割りで計算されてしまうので、減価償却費はかなり小さくなります。固定資産であっても中小企業が30万円未満のものを購入すれば、購入した時に全て経費にできます。ただし、1年で総額300万円が限度となるので注意が必要です。
30万円以上の固定資産であっても、「特別償却が認められる税制」に該当する固定資産の取得であれば、購入した年に多額の費用を計上できます。特別償却とは、「通常の減価償却費」に追加して、取得価額の一定割合を購入時に費用とできるものです。ただし、その後の減価償却費は特別償却として先取りした分減ります。長い目でみれば全体の減価償却費は変わらないことに注意が必要です。現行制度では、「中小企業等投資促進税制」で取得価額の30%の特別償却などが認められています。
設備投資が固定資産の購入ではなく、修繕に該当すれば修繕費として、全て購入時の費用となります。LED照明でいうと照明設備(器具交換を伴うもの)そのものの入れ替えではなく、蛍光灯をLEDランプに取り換えた場合などが該当します。
決算間際に税金を減らす対策は、ほとんどの場合はキャッシュアウトを伴います。税金の支払額を減らすことばかりに気を取られていると資金繰りに窮する場合もあります。決算対策で設備投資をする場合は慎重に判断しましょう。決算月付近で設備を導入して、その年度の経費にしたり、償却を開始したりしたいという場合には、年度内に工事が完了して引き渡しされるように余裕を持った計画をすることが重要です。
決算月付近でLED設備を導入するケースもあるかと思います。その場合にその年度の経費になるのか、来年度の経費になるのかは大きな違いです。
まず、LED設備の工事が【修繕費として処理できる場合】ですが、経費として計上できるタイミングは(1)債務が成立し、(2)原因となる事実の発生、(3)金額の合理的な算定が可能になった時とされます。LED設備の場合は「一般的には工事の完了・引き渡しのタイミング」となります。工事が完了して、発注者に引き渡された際には金額も分かっており、支払い義務も発生します。
経費が計上できるタイミングは、請求書の日付や実際に支払いをした日と考える方もいるかもしれません。確かに請求書の日付や支払日が上記の3要件を満たす日である場合もあります。店舗で何かを購入する場合などがそれに該当します。しかし、設備の工事であれば一般的には工事の完了・引き渡しと支払日は別になります。
次にLED設備が【新規の固定資産の取得と考えられる場合】です。固定資産を資産に計上し、減価償却を始める日はその固定資産を事業の用に供した日になります。もう少し分かりやすく言いますと、そのLED設備が使えるようになった時になります。修繕費の場合と同様に「工事の完了・引き渡しのタイミング」となります。
決算月付近で設備を導入して、その年度の経費にしたり、償却を開始したりしたいという場合には、「年度内に工事が完了して引き渡し」されるように余裕を持った計画をすることが重要です。
最適な導入方法の考え方は企業によってさまざまです。これまでのまとめを行いながら、「資金繰り計画」を中心にとらえた内容をお届けします。
公認会計士・税理士
税理士法人ファーストライン 代表社員
増田 卓也(ますだ たくや)
大手監査法人にて、金融機関・外資系金融機関、製造業などの会計監査に従事した後、税理士法人ファーストライン代表社員に就任。現在、金融機関の会計監査の経験を生かし、中小企業や個人事業者を対象とした税務顧問、資金繰り改善支援、経営支援に従事している。
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