ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
ERP導入のポイント
ERPのスムーズな導入には、何が大切なのでしょう。ERP導入に失敗しないための最大のポイントは、具体的なゴール設定にあります。
何をしたいか明確化することが大切
具体的なゴール設定を時間軸に沿って整理
ERP導入で最初に行うべきことは、「販売管理と生産管理の連携を実現したい」「リアルタイムにデータ分析を行いたい」など、具体的なゴールを設定することです。システム導入は予算的な制約もあり、あれもこれもというわけにはいかないのが一般的です。そのため、まずは何を実現したいかを明確にすることが大切です。その際、第一段階として実現したい目標だけでなく、その後、段階を踏んで実現したい目的を時間軸に沿って整理するとより合理的なシステム導入が可能になります。
業務全体を熟知しているプロジェクトリーダーを立てる
次に行うことが、経営企画部門、営業部門、製造部門、経理部門など各部門を横断したプロジェクトチームの立ち上げです。その際、特に重要になるのが俯瞰(ふかん)的な視点で各部門の要望の調整を行うプロジェクトリーダーの選定になります。プロジェクトリーダーは、業務全体を熟知していることが強く求められます。
まずは自分たちで業務の棚卸しを行う
次に必要なのが、ERP導入前の業務整理です。ERPシステムは全体最適のためのシステムであるため、各種業務が連携して一元管理できるように設計されています。このため、極力ERPシステムの機能内で全業務を運用することを重要視します。ERPシステム内で全業務を運用するということは、現状の業務運用方法に固執していては無理ということです。現状の業務を変更するという選択も必要となります。ERPシステム導入時に、コンサルティングが必要といわれる理由がここにあります。まずはベンダー選定前に業務の棚卸しを行い、ERP導入の目的を基に自分たちで現状の業務を整理しておくと、ベンダーからもより具体的な提案が出やすくなります。
機能と業務のギャップをどうするか
そのうえで複数のベンダーに提案を依頼し、ベンダーを選定します。選定を終えると、いよいよプロジェクトが本格的に動きはじめます。第一段階として行うのが、ERPパッケージの機能と業務の適合部分(フィット)とかい離部分(ギャップ)とを見極めるフィット&ギャップ分析と呼ばれるプロセスです。そこで重要になるのが、かい離への対応をどう判断するか、という点です。特に中堅・中小企業の場合、パッケージが備える機能だけでは対応が難しい、独自の業務手順が存在することが少なくありません。フィット&ギャップ分析では、それらの業務をパッケージ機能に合わせて変更すべきか、費用がかさんでもカスタマイズを行うべきか判断していくことになります。
この時、企業の競争力を維持強化するためのギャップは良しとします。この部分は、無理にフィッティングさせる必要はありません。しかし、それ以外の業務に関しては、ERPシステムを運用するために業務を変更する事が重要です。つまり、業務改善を行ったうえでERPシステムを導入するという手順が必要となります。
業務現場とのコミュニケーションと経営トップによる進捗チェック
注意したいのは、プロジェクトの進行に伴い、当初の目的から逸脱してしまうことも少なくない点です。その理由としてまず挙げられるのは、業務現場とのコミュニケーション不足です。従来の業務手順の変更は、大なり小なり必ず反発があります。しかし、そこで妥協してしまうとプロジェクトの迷走にもつながりかねません。
こうした失敗を避けるには、より高次の視点でプロジェクトの進捗状況をチェックする体制を構築することが大切です。全社的取り組みが求められるERP導入では、全てをプロジェクトチームに任せるのではなく、経営トップがその進捗状況をチェックする必要があるのです。
ベンダーとパッケージ選びのコツ
ERP導入を成功させるうえで重要な役割を担うものの一つがベンダー選びです。では、ベンダーはどのような視点で選ぶべきなのでしょう。評価項目はいろいろ考えられますが、独自の情報システム部門を持たない中堅・中小企業の場合、最も重要になるのは営業担当やコンサルタントなど、ベンダー側のスタッフがどれだけ自社の業務を理解しているか、という点になります。例えば、パッケージの機能と業務のすり合わせの合理的な判断には客観的視点が不可欠です。その役割を担うベンダーが業務を正しく理解していない場合、結果は悲惨なものになるでしょう。
ERPパッケージの選定も重要なポイントです。中堅・中小企業を前提に考えるなら、取引先様式による帳票出力など、日本的商慣習への対応などを考えると、帳票様式の変更への対応などの柔軟性が大きなキーワードになります。
まとめ
- 具体的なゴールを設定する
- プロジェクトの進捗状況を経営層がチェックする仕組みを作る
- 自社業務をしっかり理解してくれるベンダーを選定する