ストレスチェック義務化対応

労働安全衛生法の一部改正により、2015年12月からストレスチェックの実施が義務付けられました。これまでは、労働者50名以上の事業場において年1回の実施が義務化され、労働者50名未満の事業場についてはプライバシーの保護の観点から努力義務となっていましたが、今後は労働者50名未満の事業場も対象となり、全企業で実施が義務化される方針が示されました。企業は労働者のメンタルヘルスケアに注力する必要があります。ストレスチェック制度の背景、流れ、ポイントについて解説します。

ストレスチェック制度について

ストレスチェックとは

労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査です。医師や保健師などが実施者となりますが、外部に委託することも可能です。

ストレスチェックの項目は、厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」が基準として広く利用されています。この調査票は、職場でのストレス要因、心理的および身体的な反応、周囲のサポートの三つの分野に分かれ、職場の環境や働く人のメンタル状態を把握するための項目が設定されています。また、57項目以外にも、企業や産業医によって独自の質問票が利用される場合があります。

背景

1984年2月に発生した過労自殺が、日本で初めての労災認定となったことがきっかけとなります。のちにこの件は、精神障害労災認定の第1号事案として認定され、これを契機にメンタルヘルス対策が講じられるようになりました。

その後、2006年に労働者の心の健康と保持増進のための指針(メンタルヘルス指針)を策定をしましたが、精神障害による労災認定が増加傾向にあり、労働者の自殺が過労自殺と認定されるケースも増加しました。これにより、未然に労働者のストレスを把握し、労災を防止することの重要性が高まりました。

目的

ストレスチェック制度の目的は以下3点です。

【目的1】気づき
労働者自身のストレスへの気づきを促す
【目的2】一次予防
労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止する
【目的3】改善
ストレスの原因となる職場環境の改善につなげる

労働者自身が自分でメンタルヘルス不調に陥るのを「未然」に防止することが目的で、うつ病など、疾患の発見・スクリーニングを目的とはしていません。

ストレスチェック実施

受検の流れ

ストレスチェックを実施する際の基本的な手順は以下のとおりです。

01.実施準備

実施目的、個人情報の保護、実施概要などを決定し、表明します。
衛生委員会で実施体制、実施方法、社内規定を定めます。

ポイント:50名以上の事業場で年1回以上の実施。

02.ストレスチェック実施

質問票を配布し、労働者の方々に回答いただきます。

ITシステムを用いて実施することも可能です。

03.結果通知

プライバシー保護を徹底したうえで検査結果を個別に通知します。ストレス状況の評価を踏まえ、産業医面談の要否を判断します。

ポイント:高ストレスと判断された労働者は、産業医による面接指導を実施。

04.フォローアップ

産業医面談の結果から就業上の措置の要否・内容について医師から意見聴取し、業務上の措置を実施します。

05.集団分析と職場環境の改善

個人の結果を集団分析(一定規模のまとまりごとに集計・分析)し、職場環境や業務体制の改善を検討します。

ポイント:集団分析を実施するにあたり、一つの集団に含まれる労働者数が10名未満の集団の場合、受検者全員の同意を取る必要があります。

労働基準監督署への報告

ストレスチェックと面談指導の実施状況は、毎年、労働基準監督署に所定の様式で報告する必要があります。

ストレスチェック実施ツール

ストレスチェックは、紙のマークシートを活用した方法や、ITシステムを活用して、パソコンやスマートフォンでの実施が可能です。それぞれの特徴があり、企業の環境や従業員の利便性に応じて適した方法を選択ください。

注意点

  • 実施者は医師・保健師・一定の研修を受けた看護師もしくは精神保健福祉士のみであり、企業および個人が自由にストレスチェックを行っただけでは、ストレスチェック制度に対応したとはいえません。必ず実施者を選任しなければなりません。
  • 事業者はストレスチェックの結果を本人の同意なく見てはなりません(集団分析の結果は、人事権のある担当者も確認できます)。
  • 事業者はストレスチェックに関する報告(受検の有無、結果、面談希望者、結果の悪い部署)に対して不当な扱いをしてはなりません。
  • 受検者が同意し事業者に提供されたストレスチェックの結果は、5年間保存することが義務付けられています。また、結果だけでなく、以下の書類についても同様に5年間の保存が必要です。
    1. 面談希望者のリスト
    2. 面談希望者への対応内容や意見書
    3. 集団分析の結果

50名未満の事業場の義務化も検討が進んでいる

2024年10月10日に「ストレスチェック制度等メンタルヘルス対策に関する討論会」が実施されました。

労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することは事業場の規模に関わらないという観点から、今まで努力義務であった50名未満の事業場でもストレスチェック制度の義務化が検討されています。今後ますますメンタルヘルスケアの重要性が高まります。

ソリューション

ストレスチェックシステム(総合対策)

ストレスチェックサービス(簡易版)

システムを導入せず、お申し込みごとに必要な人数分のストレスチェック(マークシートもしくはWeb)を一回実施できる「ストレスチェックサービス」もご用意しています。受検後の個人結果を基にした企業単位での分析、労働基準監督署への報告フォーマットに沿った書類の作成、社内に向けた各種書類テンプレートなど、義務化に必要なサービスをワンパックでご提供します。

ストレスチェックサービス