迫る2025年。「建築基準法」と「建築物省エネ法」の改正ポイントを押さえる

2022年6月に改正された「建築基準法」と「建築物省エネ法」。2025年4月からは改正された内容がいよいよ施行されます。そのため建設業界全体では、今から内容を把握して準備をしていく必要があります。
今回の改正が行われた背景としては、2021年10月に閣議決定した「エネルギー基本計画」に基づく、2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みが挙げられます。この法改正により2030年度には温室効果ガス46%削減(2013年度比)の実現をしなくてはなりません。それに伴い、今後企業は建物の新築や増改築の際の手続き方法や、運用面を変えていかなくてはならないのです。では、これら二つの法改正がどのようなものなのか、企業はどのようなことに対応するべきなのでしょうか。ポイントをお伝えしていきます。

改正建築基準法の注目ポイント

まず建築基準法の改正ポイントについてお伝えしていきます。2025年4月に施行される改正点のうち、大きなポイントは、いわゆる「4号特例」の見直しです。

4号特例とは、建築基準法第6条第1項第4号にまつわる特例のことで、木造2階建て以下、高さ13メートル以下、軒高9メートル以下、延べ床面積500平方メートル以下の条件を満たす木造住宅を建築士が設計する場合、建築確認の際の構造審査を省略することが可能な制度のことです。

出典:2025年4月(予定)から4号特例が変わります(国土交通省・PDF)p2(1)「建築確認・検査」「審査省略制度」の対象範囲が変わります 図より引用転載

今回の改正では、建築基準法第6条第1項第4号に該当する「小規模の建築物」の該当範囲が変わります。2025年以降、現行法で4号の条件に適合する木造2階建て以下、高さ13メートル以下、軒高9メートル以下、延べ床面積500平方メートル以下の建築物は、2号または3号に区分されることになります。さらに、300平方メートル超の建築物は許容応力度計算が義務化されます。つまり、確認申請を省略できるのは、平屋かつ延べ面積200平方メートル以下の建築物に限られることになりました。

これによって、一戸建て住宅の大規模修繕をする場合に影響が出る可能性があります。

具体的には、建物の大規模修繕を行う場合、本来は建築計画が建築基準法に適合しているかどうかをチェックするための「建築確認申請」が必要となります。これまで、例外的に審査不要と認めているのが4号特例だったのです。つまり、これまでは木造2階建て住宅も従来は4号特例の対象でしたが、2025年4月以降は4号特例の対象外となります。

出典:2025年4月(予定)から4号特例が変わります(国土交通省・PDF)p2(2)確認申請の際に構造・省エネ関連の図書の提出が必要になります 図より引用転載

他にもチェックしておかなくてはならないことがあります。その一つが既存不適格への対応です。既存不適格とは、建築時点の法令では合法でも、建築後の法令などの改正によって不適格な箇所がある建築物のことを指します。今回の法改正によって、現在は建築中の建物でも、2025年以降、構造上の問題で既存不適格建築物になることがあります。もちろん法改正前に竣工していればこの限りではありません。

令和4年改正 建築基準法について(国土交通省Webサイト)

改正建築物省エネ法の注目ポイント

建築物省エネ法についてもポイントを見ていきましょう。主だった改正点はどんな点なのでしょうか。

まず、2020年に政府は2050年カーボンニュートラル宣言をしました。これに伴い、2030年度温室効果ガス46%排出削減(2013年度比)の実現に向け、2021年10月に地球温暖化対策などの削減目標を強化することを決定しました。

上記宣言を受けて、わが国のエネルギー消費量の約3割を占める建築物分野における取り組みは急務となっています。

具体的には、建築物のエネルギー消費性能の向上を図るため、建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)を制定・改正し、建築物のエネルギー消費性能基準への適合義務等の措置を講じていています。

原則として現行の省エネ基準(断熱等性能等級4)に適合する義務が発生します。また省エネ化に伴い、建築物の重量化に対応した建物構造のルールが強化されます。今後は木造住宅であれば、筋交いなどを入れた耐震壁を増やす必要があり、建築コストが増加する可能性があるのです。また、建築確認申請時にも、従来は審査されなかった壁量のバランスチェックなどの審査プロセスの強化が図られることになります。

これらの改正点によって懸念される1番のポイントは、賃貸住宅を新築する場合も建築コストの上昇などの影響があるということなのです。

改正建築基準法に向けた対応策

では一体どんな点について対策をしていく必要があるのでしょうか。

まずは改正建築基準法について見ていきましょう。
先ほど列記した4号特例の縮小によって必要になった手続きが増えました。新築はもとより、特に増改築の場合の対応を見逃してはなりません。

これまで4号特例に該当していた木造住宅は、今後柱や梁(はり)などの主要構造部の50%以上に手を入れるような大規模なリフォームをする場合も、新築と同様に建築確認申請の必要があります。
一方木造2階建て住宅でも、クロスの張り替えなどの表層リフォームだけなら大規模の修繕に該当しないため、建築確認はこれまでどおり不要のままです。

このように「4号特例」により、建築確認の際の構造計算書の添付なしで認められていた建物であっても2025年4月以降に、新築およびリフォーム・リノベーションを行う場合、2階建て以下の木造建築物で300平方メートルを超えるものは、建築確認の際の構造計算書の添付が義務となります。つまり、これまで以上に着工まで時間がかかるため、着工前の申請期間の猶予を鑑みて、工事計画を立てるべきなのです。そのことを念頭に置いておきましょう。
また、既存不適格の建物についても頭に入れておく点があります。法改正前に建築を開始し、法改正施工後の段階で未竣工の場合の建物は、既存不適格の建物となります。ただし、既存不適格の建物を増改築する場合は、基本的には既存不適格の部分に新規定を適用することになります。そのことを念頭に置きながら対応をしましょう。

改正建築物省エネ法に向けた対応策

建築物省エネ法に向けた対応策はどのような点が挙げられるでしょうか?
2025年4月以降は、新築の最高基準とされてきた「省エネ等級4」が全ての新築住宅、新築非住宅に課せられることになります。
また、スケルトンリフォームなどの大規模改修で、建築確認書を提出しなければならない物件は、耐震補強と同時に断熱強化も義務化され、新築並みの「省エネ等級4」をクリアしなければ、建築申請が通らなくなるのです。
このように新築・リフォーム共に、省エネ基準への適合義務が住宅を含む全ての建築物に拡大されるという点を押さえておかなくてはなりません。

出典:改正建築基準法について(国土交通省・PDF)p5 省エネ性能の底上げ 図より引用転載

そして、全ての建築物に「適合義務」が課されることから、2023年4月時点の現行法に存在する「届出義務」は廃止されます。そのため、市場の混乱なく義務化を実現するには、建築士などに対しても十分な周知および準備の期間が必要です。

1番の注意が必要なのは、施工の際に省エネ基準を満たした住宅設計を行うと共に、省エネ性能を備えた建築構造・設備に対応していくことが求められます。

令和4年度改正建築物省エネ法の概要(国土交通省Webサイト)

まとめ

このように、各種法改正により、設計基準や審査、施工スケジュールの見直しが各事業者には求められます。これまで行っていたことを新たなルールに置き換え遂行することは簡単ではありません。いつも以上に手間がかかり、確認することに時間を要します。そんな慣れないスケジュールや設計図の作成、施工計画の管理をサポートするために効率の良いツールを取り入れましょう。

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