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既存事業の拡大を成功させるために必要な考え方とは? 具体的な手法と注意点も解説
本記事では、既存事業拡大に取り組むべき理由や具体的な手法、成功させるためのポイントや注意点について解説します。企業拡大に向けた戦略を確認し、成果を最大化するためのヒントを探していきましょう。
「既存事業の拡大」は、企業の成長を目指す上で欠かせません。新たな顧客へのアプローチはもちろん、既存の顧客基盤を活用した売上拡大を目指すことが求められます。
目次
1.売上・利益の向上を目指すために大切な「既存事業の拡大」
既存事業の拡大は企業成長の基本戦略
「既存事業の拡大」は、企業が市場や業界で成長するために行う経営戦略の一つです。売上や利益を伸ばすために既存製品やサービスの拡大を目指したり、既存の市場や顧客層でのシェア増大を目指したりすることを意味します。
既存事業の拡大の二つの柱
既存事業の拡大を目指す方法は主に二つあります。
新規顧客の獲得
事業を持続的に成長させ、市場シェアを拡大するためには、新規顧客の獲得が欠かせません。
そのためには、営業活動の強化や、新製品・サービスの開発といった施策が挙げられます。さらに、新規市場への進出も戦略の一つです。具体的には、新たな地域や海外展開があります。また、新しい販売チャネルの開拓を通じて、これまでリーチできなかった顧客層にアプローチを図ることも含まれます。
これらの多角的な取り組みを合わせることで、新規顧客の獲得を効果的に推進し、事業の拡大を図ることができます。
既存顧客との取り引きの拡大
既存顧客との取り引きを拡大することは、安定した収益基盤を確保し、市場での競争力を維持するために欠かせません。
まず、製品の品質や提供方法の改善に注力し、顧客満足度を維持・向上させてリピート購買を促進する方法があります。さらに、クロスセルによる関連商品・サービスの提案や、アップセルによる高付加価値商品への移行を促すことで、取り引き規模を拡大できます。
これらの戦略を組み合わせることで既存顧客との関係を深化させ、事業の拡大を目指すことができます。
2.既存事業の拡大に取り組む理由
既存事業の拡大に取り組むべき理由は、「安定した収益源の確保」と「売上・利益向上を目指す際のリスクを最小に抑えること」にあります。
安定した収益源の確保につながる
既存事業の拡大は、安定した収益源の確保に直結します。
既存事業はすでに顧客基盤があり、市場での地位が確立された状態であると考えられます。そのため、それらの基盤と地位を生かしてさらなる成長を図ることで、予測可能な収益を生み出せます。
リスクを抑えた取り組みが目指せる
既存事業の拡大は、新規事業立ち上げに比べてリスクを抑えた取り組みであるといえます。
思ったような成果が上がらず、失敗した際の損失が大きい新規事業の立ち上げに比べ、自社のノウハウや強み、実績があるため、売上・利益の予測可能性が高く、同様に失敗した際の損失リスクを抑えることができます。
また、既存の顧客基盤や販売チャネルを活用できるため、初期投資を抑えつつ効率的に事業を拡大できるという利点もあります。
これらの理由により、売上・利益の向上を目指す際に既存事業の拡大が重要となるのです。
3.既存事業の拡大につながる三つの手法
では、既存事業の拡大を進めるためにはどのような方法が考えられるでしょうか。ここでは三つの手法を解説します。
海外展開
一つ目の手法は「海外展開」です。既存製品やサービスを新たな国や地域の市場に展開する戦略です。海外展開を進める主な方法は、「輸出」、「直接投資」、「販売代理店との連携」があります。
輸出
日本の商社や現地の販売代理店を介して商品やサービスを販売する方法です。初期投資が少なくリスクも低いため、海外展開の第一歩として適しています。ただし、現地ニーズの把握が難しい面もあり、詳細な調査・分析が必要不可欠です。
直接投資
現地に自社の拠点を設立し、製品・サービスを直接展開する方法です。初期投資が大きい一方、市場ニーズに柔軟に対応でき、ブランド構築もしやすいという利点があります。
販売代理店との連携
現地の流通網を持つ代理店と連携し、製品・サービスを展開する方法です。現地の市場知識や販売網を活用でき、比較的低リスクで市場参入が可能です。
海外展開は、特に新規顧客の獲得を目指す際に有効な手段です。現地ニーズに合わせた製品開発や越境ECの取り組み、海外ECモールへの出展などで、より効果的に推進することができます。
SFA活用・営業強化
SFA(営業支援システム)の活用は、営業活動を効率化し、顧客との関係を強化するための効果的な手法です。以下の三つの取り組みを推進することで、営業プロセスの最適化と顧客ニーズの的確な把握が可能となり、既存事業の拡大を効果的に進められます。
- 営業支援ツールやCRMシステムの導入
- 顧客情報の適切な管理と共有
- データを活用した営業戦略の立案と実行
SFA活用・営業強化は、新規顧客獲得、既存顧客との取引の拡大のどちらにも貢献する手法です。これにより、売上・利益の向上だけでなく、顧客満足度の改善や市場シェアの拡大も期待できるでしょう。持続的な成長を目指す企業にとって、SFAの活用による営業強化は不可欠な戦略といえます。
Web強化やEC展開
Web強化やEC展開を通じて、オンライン販売チャネルを構築・強化することは、既存事業を拡大する効果的な手法の一つです。自社ECサイトの新規構築や機能改善、大手ECプラットフォームへの出店、さらにデジタルマーケティングを活用したEC展開などを行うことで、地理的制約を超えて幅広い顧客層にアプローチできるようになります。その結果、新規顧客獲得や既存顧客との取引拡大も期待できるでしょう。
また、コンサルティングなど無形商材を扱う企業にとっても、Web強化は事業拡大において欠かせない取り組みです。Webを活用することで、地域の壁を越えた顧客リーチを実現し、顧客との関係を深めるコミュニケーションが可能になります。
さらに、顧客の信頼や関心を惹き付けるコンテンツを発信することで、新規顧客の獲得と既存顧客との関係強化の両面で成果を上げることができるでしょう。
4.既存事業の拡大を成功させる四つのポイント
既存事業の拡大を成功させるためには、どのような観点で取り組むべきでしょうか。ここでは抑えておきたい四つのポイントを解説します。
【1】市場調査と顧客ニーズの深掘り
提供中の製品やサービスに対する顧客の評価や改善点を徹底的に分析し、より深い市場調査を実施することが重要です。これにより、顧客ニーズや市場の動向を正確かつリアルタイムに把握できるようになります。
こうした取り組みを通じて、顧客満足度の高い製品やサービスの開発・改良が可能となります。また、顧客ニーズに応じた効果的なサポートやサービス提案を行いやすくなるため、定期的に市場調査を行い、ニーズを深掘りすることが事業拡大において不可欠です。
【2】データに基づく戦略立案
市場調査や顧客ニーズの深掘りで得られたデータを活用し、的確な分析を行ったうえで戦略を立案することが、事業拡大の鍵となります。
データ分析を丁寧に進めることで、マーケティング施策や商品開発の方向性を明確化できるだけでなく、顧客ニーズに合ったサービス提案の、具体的なアプローチを策定することが可能になります。こうしたデータに基づく戦略立案は、既存事業拡大への重要なステップといえるでしょう。
【3】リソースの適切な配分
資金や人材、技術、物流といったリソースを適切に配置することは、事業拡大をスムーズに進めるための重要な要素です。リソース不足や配分のミスは、事業拡大を妨げる要因となりかねません。
自社の現状をしっかりと把握し、どの分野にどれだけのリソースを投資するべきかを慎重に見極めることが求められます。適切なリソース配分を行うことで、効果的かつ効率的に事業拡大を進めることが可能となります。
【4】自社の強みの活用
既存事業の拡大を図る際には、顧客基盤やブランド力、技術力など、自社が持つ強みを最大限に活用することが重要です。新しい分野への挑戦に比べて、自社の強みを生かしたアプローチは成功の可能性が高く、売上・利益の向上も見込めます。
さらに、既存事業の収益向上は、新規事業への投資や企業のさらなる成長の原動力となります。自社の強みと経営資源を効果的に活用し、拡大戦略を練ることが持続的な成長への鍵となるでしょう。
5.既存事業の拡大を進める際の注意点
既存事業の拡大において、損失を最小限に抑えて成功を目指すために、取り組みに関する注意点も把握しましょう。ここでは三つの視点で解説します。
段階的な拡大
事業拡大を進める際にまず抑えておきたいのは、「段階的に推進する」という考え方です。一気に大規模な拡大を図るのではなく、自社の状況や市場の変化を見極めながら、その影響を丁寧に検証しつつ進めることが重要です。
事業の急激な変化は社内体制の混乱を招き、サービスの品質低下につながるリスクがあります。また、事業拡大に失敗した時の損害が大きくなりすぎるといったリスクも考えられます。これを防ぐためには、内部統制を強化しながら、段階的に拡大を進めることが求められます。慎重かつ計画的なアプローチにより、持続可能な成長を実現しましょう。
リソースの確保と調整
事業拡大を成長させるには、必要な資金や時間が十分に確保されているかを慎重に確認することが重要です。自社の能力やキャパシティを超えてリソースを投じると、事業基盤が不安定になり、事業拡大が思うように進まないリスクが高まります。
さらに、取り組み開始時に十分だったリソースも、進捗状況に応じて必要量が変化する可能性があります。そのため、リソースの状況は定期的に見直しを行い、柔軟に調整を図ることが大切です。
人材の適切な配置
既存事業の拡大において、人材の適切な投入や配置も成功を左右する要素です。新規人材を安易に増やすのではなく、まずは現体制でできることを検討し、既存の人材を最大限に活用することを優先しましょう。必要に応じて、社内リソースを活用して育成できる範囲で、新たな人材を獲得することも、拡大戦略の一環として重要です。
6.まとめ
本記事では、既存事業拡大の重要性、具体的な取り組み方法、成功のためのポイントや注意点について解説しました。
既存事業の拡大は、企業の成長を目指すうえで欠かせない戦略です。新規顧客獲得と既存顧客との取り引き拡大を通して、事業拡大を推進していきましょう。海外展開や、SFAを活用した営業強化、Web強化・EC展開など、三つの手法から自社に適した方法を選び、実行することが重要です。