第1回 中小企業経営者のための銀行との上手なつきあい方

みなさま、はじめまして。川北英貴と申します。

私は「財務活動」を中心とした経営コンサルティングを行っています。
元銀行員の経験を生かして、中小企業の経営者様、財務経理担当者様向けにどのように銀行から融資を受けたらよいか、どのように銀行とつきあったらよいかについて、少しでもご参考にして頂ける情報を提供していきたいと思っておりますのでよろしくお願いします。

【第1回】信用保証協会代位弁済後の世界
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信用保証協会保証付融資の返済ができず、信用保証協会から銀行に肩代わり(代位弁済)してもらった場合、その後、どういうことが待っているのか。

代位弁済後は、債権者は銀行から信用保証協会になります。

その後、信用保証協会と、その企業や連帯保証人との間で交渉し、毎月いくらなら信用保証協会に支払っていけるかを話し合います。

そして毎月の返済額が決まったら、信用保証協会に返済を行っていきます。

例えば信用保証協会保証付融資で5000万円を、A社はB銀行から借りました。

残り3000万円となったところでA社は返済困難となり、信用保証協会に代位弁済されました。

ちなみに代位弁済の範囲は、返済不能の元金・利息、期限の利益喪失後120日までの延滞利息を加えた額までです。なお、この場合の延滞利息の計算は、銀行から企業への該当融資の金利と同率となります。

そして信用保証協会は内容証明郵便で、A社に対し、一括請求、つまり肩代わりした3000万円を一括で支払え、という通知を送ってきます。

しかし3000万円なんて支払えるわけありません。A社は保証協会と交渉し、毎月5万円ずつ、信用保証協会に支払っていくことになりました。

しかしもともとは一括請求ですから、遅延損害金が14.6%つくことになります。
毎月5万円ずつ返済し元金に充当しても、返済ペースが追い付かず、遅延損害金が大きく膨らんでいくことになります。

なお遅延損害金がつくのは元金に対してであり、遅延損害金に対しさらに遅延損害金がつくわけではありません。

この状況の中で頭に入れておきたいことが三つあります。

1.遅延損害金の減額、2.求償権の放棄、3.求償権消滅保証制度です。

1.遅延損害金の減額
信用保証協会との交渉により毎月決まった金額の返済を続けると、遅延損害金の減額を交渉することが可能となることもあります。

また元金をまとまった金額や、一括で支払う場合は、遅延損害金を大幅にまけてくれることもあります。

そこまでいかなくても、通常の、銀行からの借入金利2~3%ぐらいに引き直すという交渉もできます。

要は、信用保証協会に誠意を見せること。全額一括返済は無理でも、返済に無理のない範囲でどこまでだったら返済できるかを話すこと、そして決まった返済は続けることが大事なポイントです。

誠意をもって信用保証協会に支払おうとする人には信用保証協会は相談に乗ってくれますが、支払うのが嫌だ、というような態度の人には相談に乗ってくれないことでしょう。

2.求償権の放棄
信用保証協会が、求償権の放棄、つまり信用保証協会に移った債権を、その後は免除する、ということがあります。

しかしそれには、大変厳しい基準があり、信用保証協会はむやみやたらに求償権を放棄してくれるものではありません。

求償権の放棄に係る基準については次のとおりです。

 ○次に掲げるすべての基準を満たすもの。

  ・求償権元本の放棄を行わなければほぼ確実に経営が破綻すること。

  ・経営姿勢等が次に掲げるすべての基準を満たすこと。

   債権者に対し必要な情報を開示しており、遊休資産の処分等の自助努力を誠実に行っていること。
   企業の事業継続が地域産業全体にとっても利益があると認められること。

  ・当該中小企業者に係る再生計画等が次に掲げるすべての基準を満たすこと。

    再生計画等において、各金融機関に求められている貸付金等の放棄等の権利変更が合理的かつ公正衡平なものである等、適正な内容・手続きを踏んで策定されたものと考えられ、かつ各金融機関が再生計画に同意する意思を表明していること。

    従業員が再生計画等に協力的であること。

    再生計画等の合理的なモニタリングを行われる等、再生計画等の円滑な実施が期待でき、かつ、再生計画等の成果(経常損益の黒字転換、債務超過の解消等)が適正な期間内に達成される見通しであること。

これらは、基準を要約したものですが、詳細については下記ページをごらんください。

再生支援のための取扱い(大阪信用保証協会Webサイト)

3.求償権消滅保証制度

信用保証協会に求償権があれば、信用保証協会保証付融資は新たに受けられないですし、また企業の決算書の負債の欄を見れば信用保証協会の名前が出て、信用保証協会の求償権が残っていることが分かるため、それを見た銀行は警戒し、プロパー融資(信用保証協会保証付でない融資)を受けることも難しくなります。

このような求償権が残っている企業に対し、その企業が自力再生の見込みがあり、今後の事業計画や債務弁済計画を含めた経営改善計画が策定され、その計画が外部の専門家や有識者で組織された再生審査会で承認された場合に、その求償権を借り換えるための保証である求償権消滅保証があります。

例えばA社は3000万円を代位弁済され、がんばって返済を続けて残り1800万円となったところで、これを借り換えて、通常の信用保証協会保証付融資に戻し、銀行からの融資を正常化するものです。


以上、銀行からの融資を信用保証協会に代位弁済された企業が、頭に入れておいた方がよい三つのこと。
1.遅延損害金の減額、2.求償権の放棄、3.求償権消滅保証制度、を述べました。

私どものコンサルティング先でも、このような事例がいくつか出ております。

信用保証協会の代位弁済は、企業の死、つまり倒産を意味するものではありません。

代位弁済となっても、その後、経営改善し、銀行や信用保証協会との関係も正常化している企業も多くあります。

企業経営は、あきらめないことが大事です。

次回は10月15日(火)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社グラティチュード・トゥーユー 代表取締役

川北 英貴

株式会社グラティチュード・トゥーユー代表取締役。資金繰り改善コンサルタント。1974年、愛知県東海市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、97年、大垣共立銀行入行、主に中小企業向け融資業務を行う。同行を退職後、2004年に株式会社フィナンシャル・インスティチュートを設立。代表を退いた後、2016年、株式会社グラティチュード・トゥーユー設立。中小企業向けに資金繰り改善・経営改善のコンサルティングを行う。著者は『絶対にカネ詰まりを起こさな い!資金繰りの教科書』他、合計11冊。
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