第26回 ソフトウェア試験の国際標準規格ISO/IEC/IEEE 29119が公開
~ソフトウェア試験の概念 -試験計画の考え方- ~

試験を行うにはまず計画が必要です。試験計画のプロセスは、プロジェクトのどこで、どのプロセスを実装するかによって各種試験計画書を作成します。例えば、プロジェクト試験計画書であったり、システム試験計画書のような特定のフェーズ用の試験計画書であったり、性能試験計画書のような特定の試験種別用の試験計画書などになります。

具体的には、以下の九つのプロセス活動と定義されています。

【1】背景の理解
【2】開発の組織
【3】リスクの識別と分析
【4】リスクの軽減策
【5】戦略
【6】人材と日程の決定
【7】試験計画
【8】合意の獲得
【9】計画の通知

このように定義された活動の実行を通じて使用可能になるため、試験計画書の原案は完全な試験計画書が記録されるまでは徐々に詳細化されていきます。より良い計画書とするには【3】~【6】の工程は反復して実行し改編することが必要です。

例えば、プロジェクトや製品提供品に新しいリスクの恐れがあると分かったり、既存のリスクからの脅威が変わったことが分かったりした場合は、【3】リスクの識別と分析、を再考して変更することが大切です。また、リスク以外の原因(例:異なる試験環境の使用)によって試験戦略の変更が必要になると判断した場合、【5】戦略、の再実行が必要となります。リスク以外の原因(例:開発からの試験対象項目の可用性の変更)のために試験の人材や日程の変更が必要になると判断した場合、【6】人材と日程の決定、の再検討が必要となります。

計画を作成する際に考慮するのが【1】背景の理解、です。どんな仕事でも理想の環境だけではありません。現状の環境(背景)をしっかり把握し分析して計画しなければ「絵に描いた餅」で実行できなかった言い訳を作りやすくするだけです。計画されたものを監視してしっかり管理することが必要です。プロジェクトにはそれぞれの背景がありどれも同じではありません。単純パターンで計画されたプロジェクトほど成功しないケースが多く見受けられます。

試験計画の目的は、試験で採用される範囲と方法を、開発し、同意し、記録し、関連する利害関係者へ伝達することです。そのことによって、早い段階で試験の資源、環境および他の要求事項を識別できるようにします。

試験計画を正確に作成できた場合下記の成果が期待できます。

a) 試験プロジェクトの仕事の範囲が分析され理解される。
b)試験計画に加わる利害関係者が識別され通知される。
c)試験で取り扱われるリスクが識別され、分析され、リスク発現の合意されたレベルによって分類される。
d)必要な試験戦略、試験環境、試験ツールおよび試験データが識別される。
  【例1】ツール、特別な装置、試験環境、事務所の場所
e)必要な人材と訓練が識別される。
f)それぞれの活動の日程がたてられる。
g)見積りが算出され、見積りの正当性のための証拠が記録される。
  【例2】費用、人材及び日程の見積り。
h)試験計画書は全利害関係者から承認され配布される。

以上のように何事も計画が重要です。時間がないからと計画書なしで進めているプロジェクトを散見しますが最終的には失敗プロジェクトになります。時間が無い、予算が無い時こそ、しっかりした計画を立て、関係者で合意し、告知することが必要です。

次回は5月28日(木)の更新予定です。

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この記事の著者

日本ナレッジ株式会社 代表取締役社長

藤井 洋一

1957年生まれ。大学卒業後、金融機関を経て27歳で創業。業種に特化したパッケージソフトウェア開発を中心にビジネス展開し、2005年からソフトウェアの品質向上の手法として、第三者検証の有効性と必要性を説き事業化。
一般社団法人 IT検証産業協会 会長
一般社団法人 コンピュータソフトウェア協会 理事兼PSQ品質基準委員会 委員長
著書:
「スポーツでの映像システム活用法」 日本文化出版
「IT検証技術者認定試験 知識試験テキスト」 BCN
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