第37回 ソフトウェア品質の測定

2016年6月6日にソフトウェア品質の測定を定めた国際規格がリリースされました。
「利用時の品質」の測定を定めたISO/IEC 25022、製品品質の測定を定めたISO/IEC 25023の二つの国際規格です。

この規格は、ソフトウェアの品質の定量化と可視化を可能とする規格として早くから望まれていた規格です。品質の測定方法として具体的な「算式」を提示していることが特徴で、たとえば、測定量の要素としてテスト項目数、テスト工程障害数を定義し、項目数に対して障害数の割合を算出することで障害率(バグ率)を出します。この数値がデータとして蓄積されてくると、ベースライン値として100件のテストで障害件数の目安が可視化され、尺度として許容範囲が見えてくることになります。
単体テストの場合、100件のテスト項目があるときに許容範囲を0.8件と設定すると
この範囲内の結果をもって、次のフェーズに進めとか、納品してもよいとの数値的な条件を明確に設定することが可能となります。

これまで何度もお話しているように、ソフトウェア製品の品質を判断することは非常に困難です。ですから標準化する必要性があります。標準化とは、「品質要求に対する合意基盤の確立」、つまり要求を出す側と受ける側の共通理解であり、合意形成となります。「評価の客観性、反復性、定量性の確保」も重要です。結果の信頼性とともに信憑性を証明することが重要です。数値化して品質が向上している状況をグラフ等で明示することが可能となると、より測定された評価の信頼性が高まります。「受け入れ、選定の拠り所となる評価方法基準の設定」については、前項と重なりますが、これまで定量的な測定方法が定められていませんでした。一定の方法が、認知されてくれば評価結果に対して誰でも解釈が一致します。特保のマークがあれば、購入者には体に良いと無条件に評価してもらえます。評価方法が確立できれば、ソフトウェア品質は画期的に進化すると思います。

国際規格がリリースされたからといって、即時にこれまでの問題が解決されるわけではありません。規格はあくまで必要な要求事項を定めてあるだけですから、これを元に実用レベルで解釈してモデルを作成する必要があります。今回の製品品質の測定を定めたISO/IEC 25023では「内部品質」と「外部品質」の測定に関する要求事項を定めています。
また、「利用時の品質」の測定を定めたISO/IEC 25022では、対象となるソフトウェアを利用した際の効果を品質としています。使ってみたら業務の効率が良くなった。手作業では1時間かかっていた処理が、システムを導入したら5分で処理ができるようになった。これは利用時の品質の「効率性」となります。新システムを導入したら、入力時の処理のレスポンスが向上し効率があがった。これは利用時の「満足性」であり、「快感性」、「快適性」が改善されたとの判断となり、定量的に測定可能な品質となります。
今回のリリースはISO/IECの規格書で英語表記なのでJIS化が期待されています。品質の専門化を自称する私たちとしては、そこまで待てませんのでひたすら翻訳して、一日も早く実用化できるよう頑張ります。

次回は7月28日(木)更新予定です。

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この記事の著者

日本ナレッジ株式会社 代表取締役社長

藤井 洋一

1957年生まれ。大学卒業後、金融機関を経て27歳で創業。業種に特化したパッケージソフトウェア開発を中心にビジネス展開し、2005年からソフトウェアの品質向上の手法として、第三者検証の有効性と必要性を説き事業化。
一般社団法人 IT検証産業協会 会長
一般社団法人 コンピュータソフトウェア協会 理事兼PSQ品質基準委員会 委員長
著書:
「スポーツでの映像システム活用法」 日本文化出版
「IT検証技術者認定試験 知識試験テキスト」 BCN
日本ナレッジ株式会社

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