第47回 注目されている「システムズエンジニアリング」

今回は、最近注目されている「システムズエンジニアリング」についてお話しします。システムズエンジニアリングには4つのポイントが示されています。

注目されている「システムズエンジニアリング」

前回までに、ソフトウェア製品の品質について測定から評価について一通り説明しましたので、ひと休みします。今回は、最近注目されている「システムズエンジニアリング」についてお話しします。

「つながる世界」としてネットワークを介していろいろなものがつながり、新しい価値やビジネスを創造できる環境になってきました。エンジニアリングというとハード製品というイメージですが、ソフトウェアを含む広い意味でシステムズと表現し、この「つながる世界」で製品やサービスを行う際の考え方を定義しているのが「システムズエンジニアリング」です。詳細のレポートはIPA(情報処理推進機構)のHPに掲載されております。

参考Webサイト
経営者および開発者のための「システムズエンジニアリング導入の薦め」を公開
~IoT時代の製品やシステムを開発するための新たなアプローチ~

システムズエンジニアリングには4つのポイントが示されています。

  1. 目的指向と全体俯瞰
    解決策を考える前に本来の目的を明確にし、目的を意識しながら考える
    対象の全体像を捉えて考える
  2. 多様な専門分野を統合
    システムだけでなくあらゆる分野との連携を考える
  3. 抽象化・モデル化
    具体的な定義をする前に抽象的に捉え、個々をモデル化して概念を共有する
  4. 反復による発見と進化
    測定と評価を繰り返し行い、進化を目指す

4つのポイントで、これまでと異なる考え方は、「目的指向と全体俯瞰」だと思います。
これまでのシステム開発の視点では、問題に対する要件定義を行い、その解決策を考えるのがシステム設計でした。システムズエンジニアリングでは、まずは大きな目的を明確にしようと考えます。例えば、人事システムでは、通常人事台帳をシステム化しよう。給与計算システムを導入しよう。勤怠管理をシステム化しようと考えていきます。
このような思考回路ではなく、「社員が効率的に、気持ちよく働けるシステム」をつくろうというように、本来システムは何のため? という大きな視点で目的設定します。
そうすると、一部のシステムではなく、全体を通してのシステムをどうしようとなります。
入社から始まり教育や昇格、最後は退職までのライフサイクル全体となります。また、効率化を考えて社員証を入退室管理や勤怠管理、社内食堂の精算までひとつで運用しようという発想になります。職種によっては、自動車の運行管理やセキュリティレベルの識別カードとしても活用可能と考えられます。もっと進化させれば、スマートフォンを社員証代わりとして活用し、連絡手段だけでなく、工場の生産稼働状況の入力装置として活用したり営業の位置情報管理をしたり、と無限に広がっていきます。

全体を俯瞰するという考え方はこれまでの日本人に少ない発想です。また、発想しても実現の可能性がありませんでした。しかし、「つながる世界」となった現代では、多様な専門分野の技術者と協力することで、コストを抑えて実現可能となってきました。
抽象化やモデル化は、それぞれの専門家たちが共通認識を持てるようにする手法です。
そして、製品やサービスを導入したら、常に進化させていくことが大切です。

何十億円もかけて、古いシステムを現在の環境に合わせるだけの大型案件がまだまだあります。経営者の皆さま、技術者の皆さま、次の開発案件を検討する際には、「システムズエンジニアリング」の考え方を取り入れることをお勧めします。

次回は10月26日(木)更新予定です。

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この記事の著者

日本ナレッジ株式会社 代表取締役社長

藤井 洋一

1957年生まれ。大学卒業後、金融機関を経て27歳で創業。業種に特化したパッケージソフトウェア開発を中心にビジネス展開し、2005年からソフトウェアの品質向上の手法として、第三者検証の有効性と必要性を説き事業化。
一般社団法人 IT検証産業協会 会長
一般社団法人 コンピュータソフトウェア協会 理事兼PSQ品質基準委員会 委員長
著書:
「スポーツでの映像システム活用法」 日本文化出版
「IT検証技術者認定試験 知識試験テキスト」 BCN
日本ナレッジ株式会社

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