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第52回 つながる世界の品質確保について 視点2
前回に続いて「つながる世界の品質確保に向けた手引き」について解説します。IoTの時代ではさまざまな情報機器がネットワークにより接続されます。大きな利便性が享受できる反面、社会的影響やリスクが発生することを想定する必要があります。
つながる世界の品質確保について 視点2
前回に続いて「つながる世界の品質確保に向けた手引き」について解説します。
*参考
第51回 つながる世界の品質確保について(ERPナビ)
「視点2」つながる機能の要求仕様が利用者を満足させるか確認する
IoTの時代ではさまざまな情報機器がネットワークにより接続されます。大きな利便性が享受できる反面、社会的影響やリスクが発生することを想定する必要があります。
前回は、「提供する製品の利用範囲を検討しその範囲内でのリスクを洗い出し、その対処方法を検討することです」と説明しました。早速、その範囲のリスクとはどのような範囲でしょうか? との質問がありました。今回はその回答です。
IoT特有の機能や性能、互換性や拡張性に着目する
IoT特有の機能はネットワークにつながることによって付加されます。昔の携帯電話は不具合が発生すると回収して、ソフトウェアを入れ替え、返送するため莫大な費用負担が必要となり企業の収益を圧迫しました。今は自動アップデート機能により、随時更新が可能となりました。その際には更新の作業領域をあらかじめ確保しておかないと、更新プログラムが実行できないといった不具合が生じます。また、更新作業中に通信が遮断され失敗したケースなどの対処方法も考慮する必要があります。
接続機器の性能の差も考慮が必要です。自分の処理能力が高くても、通信機器や通信方法が大量データに対応していない場合などです。例えば最近のゲーム機器は高画質となり大容量のデータとなります。ところが古い家庭用の通信機器は転送速度が遅く、場合によっては画面がモザイクとなり、表示されないケースがあります。
あわせて、利用環境や利用者の使い方に着目する必要があります。
また、IoT機器は、利用する期間が長期となる可能性も考慮が必要です。監視カメラなどは一度設置したら、数年間は交換することはありません。その期間中に新たなセキュリティ脅威が必ず発生します。その際、機材の劣化によって充分な機能が働かない可能性があるのです。
そのため、監視カメラなどは、定期的に自動で機能チェックプログラムを起動させ、状態を利用者に伝えるなどの考慮が必要だと思います。
機器の利用目的によって、このような非機能要件を整理するのが範囲内のリスクの洗い出し作業となります。その内容については関係者の合意事項とすることが必須と考えています。
*参考資料 独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)技術本部ソフトウェア高信頼化センター
「つながる世界の品質確保に向けた手引き~IoT開発・運用における妥当性確認・検証の重要ポイント~」 2018年6月4日発行
次回は8月23日(木)更新予定です。
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