第51回 つながる世界の品質確保について

独立行政法人 情報処理推進機構より2018年6月に「つながる世界の品質確保に向けた手引き~IoT開発・運用における妥当性確認・検証の重要ポイント~」が発行されました。本書の最大の特徴は、実際のソフトウェア開発担当者が実務において活用できることにあります。

つながる世界の品質確保について

独立行政法人 情報処理推進機構より2018年6月に「つながる世界の品質確保に向けた手引き~IoT開発・運用における妥当性確認・検証の重要ポイント~」(以下本書と略)が発行されました。書籍として購入できますので、ソフトウェア開発会社の品質向上の研修テキストとして有効に活用できると思います。

*参考:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)
「つながる世界の品質確保に向けた手引き~IoT開発・運用における妥当性確認・検証の重要ポイント~」の書籍発行のお知らせ

本書の最大の特徴は、実際のソフトウェア開発担当者が実務において活用できることにあります。従来説明してきた国際規格の原本や論文ですと、書かれている内容を理解するだけで相当の労力を要します。本書は、「品質の確保、維持・改善の視点」を定義し、その対応策を、事例を設定して「適用検討」できます。例えば、AIスピーカーが注目されていますが家庭内のIT化を行うソフトウェアサービスを提供する場合、どのような点を考慮すれば品質が担保できるかを検討するための手引書となるものです。

最近のニュースとして、自動車のドイツ・アウディ社の社長が逮捕されました。排気ガスの数値を検査段階で調整できるソフトウェアを組み込み不正な値を提出した罪で、証拠隠滅の恐れがあるためです。日本でも株式会社神戸製鋼所が、鋼材の品質データを改ざんして調査されています。映画では、「空飛ぶタイヤ」が大手自動車会社の車輪脱落事故をテーマとして大企業の隠蔽(いんぺい)体質にメスを入れています。ものづくり日本の品質ブランドが低下する危機だと感じています。
このような体質をつくる原因は、現場の取り組みに対して経営層が利益重視で必要な工数を認めないことにあります。私が取引先を訪問して、説明しても「品質=コスト増」と感じる経営者は、まだまだたくさんいます。その結果として、不具合が発生すると責任を現場に押し付け優秀な技術者をつぶす要因となっています。この問題を解決する方法として私が常に提案しているのが「関係者間の合意形成」です。とにかくしっかり説明して関係者同士が合意をすることしかありません。その説明根拠として、国際規格や基準、手法があると思っております。合意形成するには、その視点がずれているとできません。考慮すべき視点を明確にすることによって合意形成が可能となります。本書はIoT開発・運用に絞って解説されていますが、ソフトウェア以外の業種、業界でも同様だと思います。本書では、13の視点がありますので数回に分けて解説してまいります。

「視点1」IoTの社会的影響やリスクを想定する

あらゆる産業分野において、IoT製品・システム開発が進んでいます。単体の製品やシステムの品質が問題なくてもネットワークを介してつながることにより、想定していなかった障害やセキュリティ事故が発生する可能性が大きくなっていると共に品質の確保がとても困難になっています。例えば自動車産業において自動運転技術が注目されていますが、順調に進んでいたこの分野において、アメリカの実証実験中に死亡事故が発生して一部では中断しています。影響度合いで最大のポイントは人命に関わるリスクです。自動車以外では航空や防衛宇宙開発に関する分野が国家レベルで特別と考えられていますので、本解説からは除外します。一般的なIoT製品や産業機器で考えるときには、その範囲を明確化することです。
想定したらきりがありません。提供する製品の利用範囲を検討しその範囲内でのリスクを洗い出し、その対処方法を検討することです。そして、提供する利用時のマニュアルにも範囲を明確に記述することが重要です。そのうえで、その範囲のリスクをどのように検証・テストしたら除去できるか検討し、計画を立てます。その段階で、関係者間の合意形成が重要となります。全体像を明確に提示して経営者層に説明するのは、技術者の職務範囲です。
検証・評価計画は下記の工程がありますが、詳しくは本書を参考にしてください。

  1. 検証対象の範囲の明確化
  2. 接続検証環境の準備計画
  3. 調達品の検証計画
  4. 体制・要員計画
  5. スケジュール
  6. 評価基準の策定
  7. ツール等の検討と予算化
  8. 成果物の「見える化」

対象製品によって工程は変わりますが、工程ごとに関係者間の合意形成があれば適正な品質確保は可能と考えます。

*参考資料 独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)技術本部ソフトウェア高信頼化センター
「つながる世界の品質確保に向けた手引き~IoT開発・運用における妥当性確認・検証の重要ポイント~」 2018年6月4日発行

次回は7月26日(木)更新予定です。

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この記事の著者

日本ナレッジ株式会社 代表取締役社長

藤井 洋一

1957年生まれ。大学卒業後、金融機関を経て27歳で創業。業種に特化したパッケージソフトウェア開発を中心にビジネス展開し、2005年からソフトウェアの品質向上の手法として、第三者検証の有効性と必要性を説き事業化。
一般社団法人 IT検証産業協会 会長
一般社団法人 コンピュータソフトウェア協会 理事兼PSQ品質基準委員会 委員長
著書:
「スポーツでの映像システム活用法」 日本文化出版
「IT検証技術者認定試験 知識試験テキスト」 BCN
日本ナレッジ株式会社

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