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第50回 「つながる世界の品質指針検討ワーキング・グループ」についてII
前回作成の生い立ちをご紹介したIoT機器・システムの品質確保のガイドブックについて、今回はガイドブックの発表されている一部を抜粋してご紹介します。ガイドブックではIoTが分野横断的に連携していくことを想定し、その品質を確保するために考慮すべきポイントがまとめられています。
「つながる世界の品質指針検討ワーキング・グループ」についてII
前回、IoT機器・システムの品質確保のガイドブック作成の生い立ちを書きました。
第49回 「つながる世界の品質指針検討ワーキング・グループ」についてI(ERPナビ)
今回は、ガイドブックの発表されている一部を抜粋してご紹介します。また、正式な発行はこのコラム以降となります。内容的に変更の可能性がありますのでご了解ください。
はじめに、ガイドブックの背景を記述しています。
今まで、IT 化があまり進んでいない農業や林業、水産業など第一次産業にもIoTの波が押し寄せており、第二次産業、第三次産業の分野とも連携が進みつつあります。IoTは一つの産業内の連携にとどまらず、産業間を跨いで連携し、新しい価値を創生する時代が本格的に到来しています。
このような状況の中で、IoTは、さまざまな形態でシステムが構成され、IoT機器はさまざまな場所や人々で使われるようになります。IoTは、SoS(System of Systems)と捉えることができ、日々、拡張し、変化していく特性があることから、その品質を保証するためには、従来の延長線上では、解決できないさまざまな課題が存在します。特に、IoTの開発に経験が少ない分野や企業にとっては、何をどう考えれば品質を担保できるのか、手探りの状況であると考えられます。
IoTの品質の確保における代表的な課題としては、以下が想定されます。
- 開発部門がIoTに不慣れなためIoTの特徴を考慮した設計ができない
- 品質保証部門がIoT開発の早期から参画したいがIoTとしてのレビューポイントが見いだせない
- さまざまなモノがつながるときのセキュリティテストの考慮事項が分からない
- さまざまなつながり方が想定され、テストの組み合わせが爆発する
- IoTの品質の説明責任が求められるが何をどうすればよいか分からない
- IoTはライフサイクルが長く、かつ、システムや利用者が変化していくため、保守・運用でも品質を維持したいが考慮すべき事項が分からない
そこで、本ガイドブックでは、IoTが分野横断的に連携していくことを想定し、その品質を確保するために考慮すべきポイントをまとめました。基本的な捉え方としては、IoT機器やシステム開発において、リリース前に品質を確保する考え方とリリース後の保守・運用で品質を維持・改善する考え方の二つでまとめています。
(1)リリース前の品質の確保
IoTの品質確保では、品質保証関係者が開発の早期から妥当性確認のレビューなどに参画することが重要と考え、IoTの特徴などを考慮した指摘ができることを目指しています。また、IoTのテストに関して、IoT特有なテスト環境の準備やテスト設計ができることを目指して、テストを実施するうえでの考慮事項を示しています。
(2)リリース後の品質の維持・改善
IoTはリリース後の変化が激しいこと(IoT機器の増減によるシステム構成の変化やシステム連携、利用環境・利用者の変化など)から、保守・運用者が持つべき品質視点を示すことが重要と考え、IoT のライフサイクルにわたり安全安心を維持・改善するための考慮事項を示しています。
正式リリース後に、ガイドブックを活用することで、IoT開発で陥りやすい考慮不足やテスト漏れを未然に防止することが可能となり、品質確保の重要性を認識することで、適正な経営資源を確保して安全安心なIoTを実現することを期待しております。
次回は4月26日(木)更新予定です。
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