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第31回 ソフトウェア試験の国際標準規格ISO/IEC/IEEE 29119が公開 ~「つながる世界のソフトウェア品質ガイド」-IPAも動き出した-~
最近のIT分野で良く目にする3文字英語の略語は「IoT」(Internet of Things)です。直訳としては「モノのインターネット」となりますが、意味合いは自動車、家電、携帯電話等々のモノがインターネットに接続してさまざまな情報収集と提供ができる技術やサービスを示しています。まさに電子機器を通じてつながる世界が始まったということです。
例えば、自動車で自動運転モードにすると、道路状況のデータを収集して最適なルートを自動的に選択する。旅行の際は、目的地の旅館へ到着時刻を自動配信することも可能となります。昼間は都心のオフィス街に大容量の電気を供給し、夕方は住宅街へ切り替えることで、適切な電気供給も可能となります。無駄な発電設備が不要となり電気料金も節約できるでしょう。人の流れ、車の流れで道路整備も計画的に行えます。いろいろなメリットがありますが、実現に向けて解決すべき課題もたくさんあります。
つながるということは、製品、機器同士の互換性が重要となります。同じ基盤のソフトウェア品質が求められます。そこで、独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)が表題の「つながる世界のソフトウェア品質ガイド」を作成しました。このコラムをお読みいただいている読者の皆様は「ソフトウェア品質に国際規格があるのだからそれに準拠すればいい。」という簡単明快な見識をお持ちですが、業界全体としてはほとんど認知されていないのが実情です。
理由としては、日本のソフトウェア業界が内需向けの開発が中心で、外需(世界)を意識してこなかったことにあります。しかし、これからは製品や機器に組み込まれたソフトウェアが接続の要となるのですから、遅ればせながら国もようやくガイドブックを作成し、普及活動が始まったということです。このガイドブックのすばらしい点は、ソフトウェア品質の特性を非常に分かりやすく解説していることです。特に利用時の品質に関する解説はこれまで整理された本がありませんでしたから、リファレンスマニュアルとしても最適です。ソフトウェアに関わる開発者はもちろんのこと、ものづくりに関わる経営者の方はぜひ一読していただきたいと思います。ちなみに、私も委員として執筆しており、IPAのWebサイトからどなたでも購入できます。
つながる世界のソフトウェア品質ガイド~あたらしい価値提供のための品質モデル活用のすすめ~(情報処理推進機構Webサイト)
次回は11月26日(木)更新予定です。