第37回 成果をあげるには、「仕事」ではなく「時間」から考える

通常の営業活動などの業務に加え、入力業務、承認作業、資料作成、打ち合わせ、メールの受発信…とにかく現代のビジネスパーソンはどなたも忙しそうです。「本来は、部下や顧客とのコミュニケーションにもっと時間を割きたいが、到底そのような時間はない…」という方も多いです。

研修やコンサルティングの場で、「このようなことが必要」「こういう取り組みができたらよい」というアイディアが数多く出たとしても、実務の現場に戻ると「やはり、実行する時間がない…」という状況も多々あります。

「意図」「アイディア」が山ほどあっても、それらが「実行」されなければ、成果にはなりません。成果にならなければ、最終的には誰も幸福になりません。自分自身も、関係者も、ハッピーにならないのです。何かこの状況を打破する策はあるのでしょうか。

■根本的な見方の転換 − 「やるべきこと」から考えない

ドラッカーは、このように語っています。

「私の見るところでは、成果をあげる者は、仕事からスタートしない。時間からスタートする。計画からもスタートしない。何に時間がとられているかを明らかにすることからスタートする。次に、時間を管理すべく、時間を奪おうと する非生産的な要求を退ける。そして最後に、得られた自由な時間をできるだけ大きくまとめる。」
(「経営者の条件」より)

我々は、ついつい「こういうことをやってみたい」「これを計画しよう」という考え方をしがちです。しかし、そこから入ってしまうと、「実行」にあてられる時間枠を大きくはみ出した「計画」ばかりが生まれてしまう。

ドラッカーは、成果を本当にあげたいのであれば、「自分の時間の使われ方はどうなっているか」「どれくらい使える時間があるのか」をまず見つめて、そこから先に考えた方がよい、と助言をくれます。

■「時間」から先に考えるメリットとは

車があってもエンジンがなければ動きません。同様に、意図や希望があってもそれを実行する「時間」がなければ、ものごとが動きません。時間から先に考えるメリットは、

・「何であれば『実行』ができるのか」という、「実行」を前提とした考え方になりやすい
(その結果、小さくても「成功体験」が積み上がり、働きがい・生きがいにもつながる)
・「先に時間をおさえる」と効率的なアクションがとりやすい
・時間の使い方を見直し、使える時間枠を大きくしたり、まとめて長くしたり、という工夫をしやすくなる

などがありそうです。

人間心理としても、「大きな話をしても、全く実現されない」よりも「小さいアクションでも、確実に実行が積み重なり、前に進んでいる」方が、気持ちが良いはずです。

部屋をきれいにしたいというイメージを考え続けるよりも、実際に一部だけでも一気に片付けてしまった方が、気持ちがすっきりするし、理想の結果に早く辿りつく、ということと一緒ですね。

そして、時間を先に注目することで、「なんでこれを自分はやっているのか」「やらなくてもよいのではないか」「自分以外の人に任せられるのではないか」というマネジメントの質向上にもつながります。

■本当に「ブレークスルー」を生むには、まとまった時間が必要

さらに、細切れの時間の中で、時間に追われながら仕事をこなしたとしても、実は根本的に満足のいく成果は得られにくいということがあります。

ドラッカーが言う「得られた自由な時間をできるだけ大きくまとめる」ことで、たとえば、

・抜本的な営業戦略やアクションプランの見直し
・目的や目指す成果についての徹底した話し合い
・新しいお客様との出会いやご提案
・新しい商品やサービスの企画、設計
・本当の顧客ニーズの把握(それを求められていたのか!という発見)
・実務で活かせる新しいスキルや知識の習得
・新しい営業/マーケティングツールの作成

など、本当にインパクトの高い成果を生む行動の時間を捻出できます。

私自身の経験からも、細切れではなく、ある程度「まとまった」時間を準備し、作業に集中することで、今までにない大きな発見や前進がある、ということがよくあります。

いかがでしょうか。特に経営者、リーダー、マネージャーの皆さんは、
「自分が使える時間がどれくらいあるか」
「どれくらい、まとまった時間を増やせるか」
「その時間で、何をするのか」
に注目し直すことで、大きなブレークスルーが生まれるはずです。

ぜひ、試してみてください。

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次回は1月8日(木)の更新予定です。

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