第42回 プログラム法って知っていますか?

医療・介護など社会保障の改革の道筋を示した「プログラム法」が、今年初めの参院本会議で成立しました。高齢者医療の見直しを皮切りに、改革は計画から実行段階へと移ることになります。個人や企業にとって新たな負担増になる政策も多い内容になっています。
プログラム法は、正式には「社会保障制度改革推進法にもとづく法制上の措置」と言いますが(以下、プログラム法)、内容は大きく以下の四つに区分されています。

【1】少子化対策

既に成立した子ども、子育て関連法、待機児童解消加速化プランの着実な実行等

  • 子どものための教育・保育給付及び子ども・子育て支援事業の実施
  • 保育緊急確保事業の実施
  • 児童養護施設等における養育環境等の整備

【2】医療制度(医療供給体制と医療保険制度にさらに区分されています)

医療供給体制(平成26年の法案成立済み)

  • 病床機能に関する情報を都道府県に報告する制度の創設
  • 地域医療ビジョンの策定(必要な病床の適切な区分の設定、都道府県の役割の強化)
  • 新たな財政支援制度の創設
  • 医療法人間の合併、権利移転に関する制度等の見直し
  • 地域における医師、看護職員等の確保及び勤務改善
  • 医療職種の業務範囲及び業務の実施体制の見直し

医療保険制度(平成27年度通常国会に法案提出)

  • 国保の財政支援の強化
  • 国保の財政運営の都道府県化、市町村との役割分担
  • 健康保険法等の一部改正する法律附則第2条の規定の措置(協会けんぽへの財政支援)
  • 国保及び後期高齢者医療制度の低所得者の保険料負担の軽減
  • 被用者保険者に係る後期高齢者支援金を全て総報酬割(組合健保・共済組合負担増、協会けんぽ軽減)
  • 所得水準の高い国保組合の国庫補助の見直し
  • 国保保険料の賦課限度額及び被用者保険の標準報酬月額の上限額引上げ
  • 高額療養費の見直し(高所得者引上げ、低所得者引下げ)
  • 外来・入院に関する給付の見直し(紹介状なしに大病院に受診時の定額負担金導入)
  • 70歳~74歳の一部負担金の2割負担化⇒5か年かけて完全実施
  • 後期高齢者医療制度のあり方
  • 難病及び小児特定疾患の医療費助成の確立

【3】介護保険制度

地域包括ケアの推進、予防給付の見直し、低所得者の介護保険料の軽減等

  • 在宅医療及び在宅介護の連携の強化
  • 高齢者の生活支援及び介護予防に関する基盤整備
  • 認知症に係る施策
  • 要支援者への支援の見直し(介護保険給付対象から外し、市町村の地域支援事業へ切り替え)
  • 一定の所得を有する利用者の負担を引上げ(1割⇒2割へ)
  • 特養ホームの補足給付支給要件に資産を加える(低所得者でも一定の資産があれば対象から外す)
  • 特養ホーム入所対象者の見直し(中重度者~要介護3~5に限定)
  • 低所得者高齢者の保険料負担軽減
  • 介護納付金の算定方法を被用者保険は総報酬割を導入

【4】公的年金制度

既に成立した年金関連法の着実な実施、マクロ経済スライドのあり方等

  • 年金生活者支援給付金の支給、基礎年金の国庫負担割合2分の1への恒久的引上げ、老齢基礎年金の受給資格期間の短縮、遺族基礎年金の支給対象の拡大
  • マクロ経済スライドにもとづく年金給付額の改定(支給額の減額)
  • 短時間労働者に対する年金保険・医療保険の適応範囲を拡大
  • 高齢期における職業生活の多様性に応じ、年金支給のあり方の検討(年金支給開始年齢の引上げ)
  • 高所得者の年金給付のあり方、公的年金等控除を含めた年金課税のあり方検討

問題点も多くあります。

フリーアクセスと言っているものの、ゲートキーパー導入を同時に行っていることに矛盾があり、たしかに大病院の患者集中の結果3時間待ちの3分診療などと揶揄されますが、何らかの受診制限や自己負担増(これも受診制限の一手段ですが)が図られるでしょう。

都道府県への病院医療機能報告については、そのこと自体は悪いことではありません。この病院はどんな病院なのか、どんな分野が得意なのか、ということが明白になりますので患者の的確な判断基準にもなる重要な情報となります。注意するべき点は、都道府県がこの報告された機能報告をもとに作成する地域医療ビジョンです。

財源については、都道府県と市町村が保険料徴収、医療費適正化(医療政策)を実質では担うということですので、財源が豊かなところ、財源が乏しいところが当然出てきます。地域によって受けられる医療サービスが異なるということも考えられるわけです。

さらに病院会計は未だ準則ですが、この病院会計基準もいずれ準則が外れる可能性が高いと思います。理由は医療法人のM & Aを容易にするため、ホールディングカンパニー化を実現するなど、特に法人形態が異なる法人同士がM & Aを実施する際に共通の病院会計であればよりスムーズに話は進むのは明白です。今回の改革は患者や国民側だけでなく医療機関への影響も相当大きいのでM & A等を活発化させ医療機関側に経営的な体力を付けさせることが目的とも考えられます。

皆さんは、どう思いますか?

次回は6月10日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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