第29回 「原価を知る」ということ(2)

前回は、製造業における原価管理での売上原価構成の考え方と財務会計及び管理会計の違いについて説明しました。
今回はさらに管理会計上での原価計算のポイントと、原価管理をより有効に活用するうえで欠かせない、実績原価と想定原価との差異分析について説明します。

現在の多くの企業で、IT化により複雑で手間のかかる原価計算をシステム化し、社員が意識しなくても日常の業務とほぼ同じタイミングで管理会計上の原価計算を可能とする体制をとっている事例をよく目にします。

例えば、鉄鋼流通・加工業における具体的な原価計算は概ね下記要素から成り立っています。

[鉄鋼流通・加工業における原価計算要素]

【1】鋼材購入時の材料原価
 *引取の場合は引取運賃を加算

【2】鋼材を加工する生産ラインの直接加工原価
 *加工設備本体の減価償却、人件費、電力費、修繕費

【3】鋼材を加工する生産ライン以外の間接加工原価
 *間接加工原価は一定基準で案分(その他人件費、電力費、修繕費、荷役設備)

【4】鋼材を加工するうえで発生したスクラップの評価落ち原価

【5】加工した鋼材の荷造費

【6】加工した鋼材の客先への運賃

このような各種原価要素を実績ベースで積み上げた実績原価と理論的な数値をもとに積み上げた想定原価とを比較し差異分析を行うことは、タイムリーな変化への対応を行う上でより重要となります。

そしてその原価の差異分析を行う上での分析ポイントは下記のようになります。

a.【1】の材料原価、【4】のスクラップ評価落ち原価は実績値からの算出が可能なため、異常値が見られた場合、仕入価格と加工実績・品質状況からの加工歩留りを中心に詳細の差異分析を実施

b.【2】の直接加工原価は実績値からの算出であるため、生産性・加工条件の変化を中心に詳細の差異分析を実施

c.【3】の間接加工原価は基本的に間接加工原価合計金額を案分するため、案分基準や比率を詳細に分析

d.【5】の荷造費は副資材等まとめて購入するケースが多いため、案分基準や比率を詳細に分析

e.【6】の運賃は積み合わせ・車建て等各種運賃形態があるため、必要に応じた原価計算上での運賃形態の設定のルール化と分析が効果的

以上が実績原価と想定原価との差異分析における代表的なポイントとなります。

そしてこれらのポイントに加え、想定原価の算出結果の検証は短期間ではなく、中長期的な評価を相応の期間で行うこと、見直しを行う際は本当に想定原価としての更新の必要性が認められた場合にだけ更新を行うことが重要となります。
原価分析とは、決して一時的に台風並みの瞬間最大風速が記録されたからといってその風速への対応をいつまでも継続するというものではありません。
通常の風速はどの程度なのか分析・評価を永続的に行うことでより適切な自社分析につながり、企業としての更なるステップアップを狙いとしているのです。

次回は5月23日(金)更新の予定です。

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