第26回 「生産性を向上させる」ということ

最近の円安により、日本の製造業とりわけ自動車関連の企業は完成車輸出において活発な動きを見せています。
一方で、海外生産も世界各地で増加し続けており、特にASEANや北米地域においては多くの日系製造業が自動車メーカーとともに進出し、工場新設等で大型の設備投資を行っています。

このような状況下、海外生産における操業は多くの場合は2交代または3交代制のフル稼働に近い形がとられています。
これは、稼働時間を増やし製品の生産量を拡大することで、取引先への安定供給体制を構築するとともに、投入した生産設備から得られる製品の製造原価に占める固定費の割合を低減し適正コストでの製品提供を目的としているためでもあります。
ただし、このフル稼働体制は需要が拡大傾向にある海外市場などでは効果が得られやすいのですが、現在の日本国内の状況では需要の減少からフル稼働体制の維持が難しく、思ったほどの効果が得られないのが実情です。

そしてこれに加え現行の国内市場では、需要が縮小傾向から供給能力過剰、設備過剰が顕在化してきており、まさに海外事例とは正反対の環境と言えます。

このような環境の下、国内の鋼材流通加工業界ではさまざまな対応が行われています。
特に各社の動向の中でも興味深いのは、コイルセンターの生産設備の見直しです。
代表的な例としては余剰設備の廃棄や合併を含む企業連合体による協業作業での資源の有効活用が挙げられます。

上述のような生産設備の見直しを行うと企業の生産能力は低下します。しかし、工場の設備稼働率は上昇し現状に見合った設備能力への転換が可能となるという狙いです。

コイルセンターには普遍的な最重要課題として「生産性の向上」というテーマがあります。
これは、生産設備ごとの時間当たりの生産量や、作業員一人当たりの時間当たりの生産量を数値目標として管理する指標となるものです。
この「生産性の向上」は単純により多くの生産が可能となること(生産能力の向上)だけが目的ではありません。
生産量の多寡にかかわらず、生産コストである製造原価が引き下げられることで、同じ資源投入量でより高い利益が得られるようになることを目指しています。

まさに「生産能力の向上」と「生産性の向上」では、意味合いに大きな違いがあるのです。
そして時代は確実に「拡大志向から環境に応じた適応力」に変わっています。
重要なのは求めるものの本質(よりよいものをより適正なコストで提供する)を見失わないことだと思います。

次回は2月14日(金)更新の予定です。

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この記事の著者

三由 浩司

株式会社CANVASは 2018年12月、株式会社日本金城印へ事業を移管いたしました。
鉄鋼流通・コイルセンターにおける業務全般(営業・生産・IT)のコンサルタントを中心に製造業全般の提案活動を実施。国内外における複数コイルセンターの標準化システム構築実績有。
株式会社日本金城印

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