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第2回 匠を活かすスパイス
日本の製造業における技術力は、匠の技に代表される高品質な技術などから世界各地で高い評価を受けています。これらの評価は、作り手が顧客の要望を真摯に受け入れ、応えることで築きあげてきたもので、わが国製造業の誇るべき財産といえます。
私たちは、引き継いだこの財産を活かし、今後の更なる進化に繋げるため、技術の継承とともに更なる探求を行う必要があります。今回は、この技術により生み出された製品に、さらに一味「匠を活かすスパイス」を加えることで、より製品の付加価値ひいては企業の価値が高まるのではないかという視点からお話をさせていただきます。
まず最初に、「匠を活かすスパイス」とはなにか。
それは製品自体とは別の、作り手から顧客へ提供できるいろいろな付加価値と考えてください。
私が専門とする鉄鋼流通では、大きなコイル状の鋼材から最終製品に近い寸法への切断加工があります。加工技術の進化により、製品自体の差別化は少なくなり、価格競争化が進んでいます。そこで製品価値以外のメリットを顧客へ提供することで、ライバル社との差別化が図れないか、戦略ツールとしての「匠を活かすスパイス」をどのように利用したらいいのかということが課題になります。
代表的な例としては、受注から加工・納品の過程で発生する情報の作り手と顧客の相互活用です。例えば、EDIによる受注情報・請求情報の提供による入力業務の削減、在庫情報の共有化による生産計画の効率化など、アイデア次第では企業のこれからの差別化・選別化への対応で、大きな貢献があげられるのではと考えています。
ただ、このスパイスを利用する上でひとつ大切なことは、メインである「製品自体」は製造能力・精度が必須となりますが、スパイスは「相手:顧客」をよく理解したうえで利用することです。スパイスは何種類か準備する事が有用でしょうが、必ずしも全部使用するものではなく必要に応じての利用がより味を引き立てるものです。そのためにも、「相手:顧客」の嗜好や業界動向を日々注視し、何が顧客にとって今価値があるものか常に意識し続けることが大切となります。
最後にひとつ付け加えさせていただくと、今回のケースはあくまでも、顧客満足に応えるための情報の活用方法が新たな価値を付加できるということです。けっして、情報自体が付加価値というものではありません。このポイントを誤ってしまうと、意味もないデータ収集や分析が結果を生まない仕事として発生してしまいます。この点に充分配慮いただき、あわせて、顧客の満足度が付加価値の評価となることを、常に意識していただくことをお勧めします。
今回は、「匠を活かすスパイス」の情報活用における付加価値について説明させていただきました。その他にもいろいろな種類のスパイスが国・地域を問わずあります。慣習にとらわれない自由な発想でのチャレンジが、これからの必要とされる企業の条件ではないのでしょうか。
次回は2月17日(金)更新予定です。
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