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第3回 競争から協業へ
既に言うまでもないことですが、日本の製造業はさまざまな面で苦境に立たされています。国内では今後の大幅な需要拡大の兆しは見当たらず、円高による相対的なコスト高の影響により、国際間での価格競争力も低下し続けている状況です。
この困難に立ち向かうために、製造業では製造拠点の海外シフトなどで、新たな活路を見いだそうとしています。私の専門である鋼板加工業においても、複数の大手商社系列コイルセンターで統合の動きがあります。しかし、これら大手の取引先の変化に合わせ、従来の取引関係を維持できる企業はどの程度あるのでしょうか。残された企業は、同業他社との価格・差別化含めた競争により、国内の限られた需要を奪取することを余儀なくされます。
今回は、さらなる競争時代に移行する中で、同業者間の協業という形を選択した企業のケースをご紹介したいと思います。鋼材加工業では、従来、生産負荷の調整弁的役割や加工仕様上やむない対応として、他社と外注加工で連携することはよくあります。しかし現在、他社との業務提携をさらに強化し、外注加工・商品仕入などを信頼できる企業と提携し、協業する動きが出てきています。企業単体ではなく、連携した企業連合体の中での生産の集約と再分配、最適生産の強化です。
自前での生産にこだわらず、連携各社が自社の強みに特化して、お互いの過不足分をカバーしあうことで、生産性の向上と既存設備の有効活用・余分な設備投資のトータルでの削減も期待されます。また営業面では、自社扱い以外のアイテムの受注・手配範囲が広がることで、顧客に発注集約による手間と管理の軽減を提供することも可能となります。
ただし、このような業務提携を行う上では、考慮しなければいけない点があります。
第一は業務提携先の選定です。企業の進む道や企業風土はお互いに理解できるものである必要があり、場当たり的な外注依頼ではない、継続して信頼できるパートナーとなりえるかの判断とお互いの本気度が重要でしょう。
また、顧客との調整を充分に行なう必要があります。提携企業内での競合するお客様の有無の確認、業務提携後の主窓口の調整等は重要です。この調整がないがしろになると片手で手を握り、片手で殴りあう可能性が高まり、結果的に提携のマイナスといった危険性が発生します。
今回のケースのような競争激化のなかでの協業体制の構築。合併でも単独での競争力強化でもない、自社の最適なあり方を模索していく。この柔軟な経営発想には考えさせられるものがあります。
次回は3月16日(金)に更新予定です。
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