第8回 鉄鋼流通業における提案型営業のすすめ

鉄鋼流通加工業における営業は、鋼材という特異な市場性ということもあり、特定のお客様に対するルートセールスが中心となります。
それに加え、この業界では、お客様である最終的に鋼材を使用するメーカー(自動車・家電)の注文に基づき、ほぼ決まった国内外高炉・電炉メーカーから規定の種類の鋼材を仕入れ、その注文内容に沿って加工・販売を行っています。
そのため大ざっぱに表現すると鋼材の調達・供給能力と価格競争力以外で差別化を図ることは非常に難しい状態となっています。

今回は差別化の選択肢の一つとして、鉄鋼流通業界だけではなく各種業界でも昔から提唱されている提案型営業についてお話したいと思います。
ひとことに提案型といっても何を提案するのかによって効果は大きく変わってきます。
お客様が日ごろより悩んでいることを聞くことはもちろん、話を聞く過程でお客様自身が認識していない問題点に気づき、解決につながる提案ができれば、よりお客様から信頼され必要とされる存在となります。
だだ、お客様目線とあまりにずれた提案は、日常の取引に不信感を与える場合があります。
大切なのはお客様をよく知り、お客様の立場での提案を行うことです。

例えば鉄鋼流通の販売形態には、紐(ひも)付きといわれる自動車メーカー向けのように生産計画に沿って事前に鋼材の確保と品質の取り決めを行い客先の生産状況に応じて販売する形態と、店売りといわれる工事物件等のように発生タイミングでその都度鋼材を販売する形態の二つが存在します。

それぞれの販売形態に合わせた提案営業を行うために必要なアクションとして、以下のような例が挙げられます。

【1】紐(ひも)付き販売
紐(ひも)付きのお客様の多くは、鋼材の安定的な調達と取り決めた品質の維持を目的に紐(ひも)付き契約を選ばれています。
そのためお客様では生産計画と実際の生産との乖離(かいり)による在庫の増減には高い関心を配っています。
そこで、高い鮮度の在庫情報(いま現在の在庫情報)をお客様に提供することができれば、お客様は在庫状況の変動をすばやく検知し対策が打てるようになります。

【2】店売り販売
店売りのお客様の急な工事物件対応で、自社以外での手配が必要になったときの手配先の連絡リストや市中相場情報も手元にあれば、たとえ外出先であっても即座の在庫確認や材料手配がその場で可能になります。

これだけでは、お客様への提案ではなく営業担当者自身の便利なツールではないかと思われるかもしれません。
しかし、これらのツールを自社内だけで使うのではなく、モバイルやスマートフォンを活用し、場所を選ばずどこでも提供できるというアピールが、お客様への提案の第一歩ではないでしょうか。

自分たちからアイデアを発信することで、お客様とより深いコミュニケーションを取り情報を引き出す。
そして次の提案につなげることが、まさに提案型営業といえます。

次回は8月17日(金)更新の予定です。

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この記事の著者

三由 浩司

株式会社CANVASは 2018年12月、株式会社日本金城印へ事業を移管いたしました。
鉄鋼流通・コイルセンターにおける業務全般(営業・生産・IT)のコンサルタントを中心に製造業全般の提案活動を実施。国内外における複数コイルセンターの標準化システム構築実績有。
株式会社日本金城印

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