高品質の金型を武器にメイド・イン・ジャパンを発信したい

2013年6月取材

メキシコに現地法人を設立 創業60年の老舗プレス加工メーカーが下した決断とは

1998年に生産管理システムを導入 短納期・小ロット生産を実現

プレス加工を行う会社は多いですが、御社の強みはなんでしょうか。

金型の製作も手がけていることです。当社くらいの規模で、このふたつを同時に行っているところは少ないんですよ。

近年、中国や韓国といったアジアの工場に金型製作を依頼する傾向が加速しています。リーマン・ショック後は、技術者の高齢化、後継者不足にくわえ、資金繰りの悪化によって金型メーカーが次々と減少。だからこそ、金型にチャンスがあると考えています。

なぜ国内市場の縮小が進む金型製作がチャンスなのですか。

金型はものづくりの要であり、最終製品の完成度まで左右します。そのため、近い将来、日本製の金型が再び必要とされるはずだからです。

この技術は、何十年という経験を重ねてようやく身につくもの。見た目は同じような金型でも、鉄のなかの成分や焼入れする際の温度によって、強度や精度が変わってしまいます。

コスト優先の場合、海外で生産された金型でいいかもしれません。しかし、多少コストがかかっても高い品質を保持し、何年経っても破損しにくい金型が世界中で必要とされるでしょう。実際、当社でも「外国製を使っていたが、日本製がほしい」といった案件が増えつつありますね。

パーキングブレーキやベアリングなど、自動車部品の金型を製作。複雑で多工程を要する部品の金型にも対応

御社は創業から60年にわたって経営を続けています。なぜ長期的に事業を継続できるのでしょう。

えらそうなことはいえませんが、まずは目の前の課題を一つひとつ解決していくこと。そのうえで、長期的な視点をもって事業計画を立てたからだと思います。

私が入社した15年前は、在庫や生産計画は手書き台帳で管理するという超アナログ状態。取引先が次々と「かんばん方式」を取り入れ、納期短縮、小ロット生産のニーズが高まるなか、管理体制の早急な改革が必要でした。

急きょパソコンを導入してExcel管理に切り替えましたが、それだけでは限界がありました。そこで、販売・生産・外注・品質管理を全て網羅する大塚商会の生産管理システム「生産革新 Ryu-jin(旧製品名、『遉』)」を導入したんです。

その結果、数千点にもおよぶ在庫部品の保管場所、在庫数や生産の進捗状況を全社員が即座に把握できるようになりました。最大の目的だった顧客ニーズに応えることができ、新たな取り組みを進める土台が整いました。

潮流に背を向けた逆張り戦略根幹技術への回帰で差別化

その後、どのようなことに取り組んだのですか。

金型製作の強化です。創業当時は金型をメインにやっていましたが、プレス加工のニーズが増えると事業をシフト。気がつけば、メンテナンスもできないくらい金型の技術力が落ちていたんです。「このままではいけない」と人材と設備とを整えて、金型製作の体制を再構築。技術をもった職人が残っていたため、なんとか技術を継承することができました。

20台以上のプレス機械が並ぶ。加工が難しいとされる厚版のプレスを得意としている

そのままプレス加工を続けたり、高付加価値の組み立てにシフトする選択もあったと思います。

ええ、正直悩みました。既に海外で金型を製作する流れは加速しており、国内市場は縮小傾向にありましたから。しかし、全ての根幹は金型。10年、20年先を見すえたとき、金型技術の向上が必要だと考えたんです。

当時、プレス加工の会社は組み立てなど後工程の方向に次々と転換。まわりが付加価値を求めていくなか、あえて逆方向に舵をきりました。だからこそ、二次請け企業の国内淘汰が進んでも生き残っているのです。

メキシコ工場に金型を 輸出国内の売上拡大を図る

今年4月にメキシコ法人を立ち上げたそうですね。多くの日本企業がアジアに進出するなか、メキシコを選択した理由はなんでしょう。

東南アジア各国を視察したのですが、既に多くの中小企業が進出しているため、競争が激しいと感じました。また、コスト面でも折りあいがつかず、進出をためらっていたんです。

そんなとき、得意先の企業から「協力してほしい」とメキシコ進出の打診がありました。現地に行ってみると、タイやインドネシアなどのアジア諸国と違い、進出している日系企業は大手ばかり。同規模のサプライヤーが少なく、私たちが協力できるニーズが多いと判断しました。

左:メキシコ工場のリーダー結城氏
「もともと海外で力を発揮したいと思っていたので、絶好のチャンス。毎日スペイン語を勉強中です」
右:金型職人の松原氏
「使命は技術継承。私がメキシコに行っても、日本で高品質の金型が生産できるようにします」

今後のビジョンを聞かせてください。

まずはメキシコのプレス工場で日本の金型を使用します。プレス加工の評価が上がれば、金型の評価も上がるでしょう。北米でメイド・イン・ジャパンの金型をアピールすることで、国内に仕事を取り戻そうと考えているんです。

もちろん、まだチャレンジを始めたばかりですから、大口はたたけません。しかし、当社には有望な若手とベテランの職人がいるので勝算はあります。日本のものづくりの力を、メキシコから世界に発信したいですね。

【まとめ】大栄製作所に学ぶ 継続経営3つのポイント!

時流に流されず 自社の強みを磨く

時流に流されて他社と同じことをすれば、価格競争に巻き込まれる。国内市場が縮小している金型製作にあえて舵をきることで、他社との差別化を図った。

社内の反発を緩和しながら生産体制をIT化する

短納期・小ロット生産を実現するため、生産管理システムを導入。パソコンを敬遠する年配社員を説得しIT化することで、在庫や生産の進捗状況を全社員で共有できるようにした。

長期的視点で人材を育成する

金型の製作技術を修得するには長い年月がかる。派遣社員を活用せず、すべて正社員として採用することで、暗黙知を継承している。

インタビュー企業 プロフィール

株式会社大栄製作所

代表取締役社長 大谷 昇氏(おおたに のぼる)

1970年、神奈川県生まれ。関東学院大学を卒業後、自動車関連会社に入社。生産管理業務を担当する。1998年、株式会社大栄製作所に営業部長として入社。生産管理システム「生産革新 Ryu-jin(旧製品名、『遉』)」を導入し、短納期・小ロットに対応した管理体制を構築。2008年、代表取締役社長に就任。2013年4月にメキシコ法人を設立し、日本の技術力を世界に発信しようとしている。

株式会社大栄製作所
創業/1953年11月 設立/1964年1月 資本金/1,000万円 従業員数/24名
事業内容/金属プレス加工および金型製作、3D測定および解析リバースエンジニアリングなど

株式会社大栄製作所 Webサイト

[記事・写真提供/雑誌「経営者通信」]

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