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第1回 白ナンバー事業者アルコールチェック義務化の背景と管理項目
白ナンバー事業者へのアルコール検知器の使用によるチェックが義務化されましたが、半導体不足などの影響から当面延期の状況が続いています。しかし、何らかの通達が出る可能性も予測され体制を整えておく必要はあります。第1回では、アルコールチェック義務化の背景と、管理項目について解説します。
白ナンバー事業者アルコールチェック義務化の背景と管理項目
2022年4月から白ナンバー事業者のアルコールチェックが義務化されました。安全運転管理者の責任の下、運転者に対して目視などによる確認や、検査記録の1年間の保存が必要です。2022年10月からはアルコールチェックの際に、アルコール検知器の使用が必須となるはずでした。しかし、このコラム執筆時においても、検査におけるアルコール検知器の使用必須を当面見送る状況が続いています。半導体不足などの影響によりアルコール検知器の在庫が不足し入手困難であったことから当面延期の判断が下りましたが、現在は徐々に市場流通の改善がみられます。警察庁から何らかの通達が出る可能性も高いとみるべきで、早期にアルコール検知器を使用した検査が実施できるよう体制を整えておく必要がありそうです。
アルコールチェック義務化の背景
白ナンバーのアルコールチェックが義務化は、数年前に起こった飲酒事故がきっかけです。2021年6月28日に千葉県八街市で、下校中の児童5人が飲酒運転のトラックにはねられ死傷する事故が起きました。このような凄惨(せいさん)な飲酒事故を二度と起こさないため、白ナンバー事業者にもアルコールチェックが義務付けられました。
ここ数年にわたり飲酒事故の件数は減少傾向でしたが、いまだにテレビやWebサイトで新たな飲酒事故のニュースを目にすることがあり、飲酒事故がゼロにはならないという現実を受け止めざるを得ません。だからこそ意識を高く持ち、取り組んでいく必要がありますが、過度な管理を求めれば安全運転管理者にも運転者にも負担がかかります。また、単に義務化されたから、という理由だけでは社員のモチベーションも上がらず管理が形骸化し、コストだけがかさむ状態になりかねません。今回の義務化の背景には凄惨な飲酒事故が存在することを意識し、飲酒が運転にもたらす影響を理解したうえでアルコールチェックの必要性を啓発する必要があります。
アルコールチェックの管理項目
アルコールチェックによる飲酒事故の根絶には、企業への負担が大きくなりますが、万が一にも飲酒事故を起こしてしまった場合、その代償は計り知れないものです。人命を奪い、企業活動の存続が危ぶまれる事態も起こりえます。そのような事態を招かないためにも常日頃から継続して取り組む必要があります。
アルコールチェック義務化に伴う具体的な業務において、検査結果の記録、保存があります。記録、保存しなければならない項目は以下の八つです。
- 確認者名
- 運転者
- 運転者の業務に係る自動車の自動車登録番号または識別できる記号、番号など
- 確認の日時
- 確認の方法
・アルコール検知器の使用の有無
・対面でない場合は具体的方法 - 酒気帯びの有無
- 指示事項
- その他必要な事項
一方で、これらの項目の記録方法については特に定められているわけではありません。企業によっては、紙台帳での管理、Excelなどパソコンを使った管理、クラウドサービスによる管理など、その管理方法はさまざまです。当然、対象となる運転者の人数や、社有車の台数、その利用状況などにより管理の負担が違ってきます。ただし、検査結果を1年間保持する必要がある点は共通です。そのため、適切な管理がなされていなければ、エビデンスの提出や監査などの事態が発生した場合、その対応に想像以上のコストを費やす羽目になり、本末転倒な結果を迎える可能性があります。
そこで、次回は適切な管理運用についてお話ししたいと思います。
次回は4月14日(金)更新予定です。