ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
第2回 白ナンバー事業者アルコールチェック管理の運用負担と効率化
第1回のコラムでは、アルコールチェック管理において八つの項目を記録して1年間保存が必要ということに触れました。第2回ではいかに負担を減らし、管理を効率化していくかを考えていきたいと思います。理解を簡単にするために今回は、アルコール検査結果の取得、集約、保管の三つに分けて考えていきます。
白ナンバー事業者アルコールチェック管理の運用負担と効率化
第1回のコラムでは、アルコールチェック管理において八つの項目を記録して1年間保存が必要ということに触れました。事業者にとっては大変大きな負担となりますが、第2回ではいかに負担を減らし、管理を効率化していくかを考えていきたいと思います。まずは理解を簡単にするために、幾つかに分解してみましょう。
今回は、アルコール検査結果の取得、集約、保管の三つに分けてみました。
- 運転者からどうやって実施結果を得るか?
- 実施結果をどう集めて整理するか?
- 整理した結果をどうやって保存するか?
となります。順を追って進めていきたいところですが、(1)は一番難しいステップのため、(3)からさかのぼってみたいと思います。
整理した結果をどうやって保存するか?
では早速(3)の整理した結果をどうやって保存するか? ですが、すぐに思いつく選択肢は三つほどあります。例えば、
A. 紙の保存(紙台帳による管理)
B. PCの保存(Excelなどによる管理)
C. クラウドの保存(サービス利用による管理)
などが考えられ、それぞれ下記のような特徴を持ちます。
A. 紙の保存
- 紙をとじるなどしてまとめる手間や、紙の保管場所が必要
- 紛失・改ざん・差し替えなどが他の方法と比較して容易なため、リスク対策が必要
- 確認のためには必ず保管場所に行くことが必要
- 用紙の準備で済むため低コストで運用が可能
B. PCの保存
- PCを利用するためPC本体(ハードウェア資産)やアプリケーション、ネットワーク環境、セキュリティ対策などの(ソフトウェア資産)準備が必要
- PCを通常に利用している環境があれば、専用のフォームをオフィス系ソフトで制作すれば運用が可能
- 複数の人数で入力、閲覧ができるため紙管理より効率的
C. クラウドの保存
- サーバー利用料などのランニングコストが必要
- 専用のハードウェアの準備や定期的なメンテナンス作業などが不要
- セキュリティなどの対策が最新の状態で安心して利用できる
運転者の数が少なく、管理者の目の届く範囲にとどまっていれば紙管理でも必要十分という考え方もありますが、紙台帳などを適切に保管できていなければ、改ざんなどの不正のリスクが起こりやすいのも事実です。また、数が増えるほど管理のために費やす時間が増えやすく、ある程度の規模の組織になると早い段階で紙管理の限界に達してしまう場合もあります。
その点では、PCやクラウド管理を使った電子データ管理の方が利便性が高く、より効率的な管理の実現に適しています。ただ、PCによる管理を適切に行うためには、自社で運用や管理するための環境を構築したり、常に最新のセキュリティ対策を施したりといった維持管理が必要です。もし、維持管理が難しいと思われる場合はクラウドの活用が妥当だといえます。
実施結果をどう集めて整理するか?
続いて、(2)実施結果をどう集めて整理するか? です。これは、先ほどの(3)の選択肢に依存し、当然ですが紙で保管する場合は、検査結果の紙への記入が伴います。例えば、アルコール検査を必ず事業所で実施する場合、台帳に直接記入するといった管理が考えられます。しかし、業務内容や勤務形態によっては直行直帰、出張など、事業所外でアルコール検査が必要な場合も多々あります。
この場合、事前に運転者がアルコール検知器とともに記入用紙を携帯し、運転前後でアルコール検査を実施、用紙に記入するといった対応が必要となり、帰社のタイミングなどでその紙を回収しなければならなくなります。また、全て手書きのため、管理者は記載内容の漏れや誤記などを確認する作業に計り知れない労力を要してしまいます……。
では、PCの保存が前提の場合はどうでしょうか?
おそらくExcelなどの表計算ソフトを利用し、定型フォーマットを作成したり、集計のためのプロクラムを準備したりと、効率的に実施するための準備に手間と工夫を重ねる必要があります。データの入力を容易にしないと運転者には検査結果を適切にファイルに書き込んでもらえなさそうです。
運転者は、共有ファイルに書き込んだり、個別に配布したファイルに書き込んだりすることで、データの保管を行い、管理者はその内容を紙よりも効率的に確認できそうです。ただ、日々の情報入力によりデータが肥大化することでファイルを開く時間が伸びたり、集計の処理時間が長くなったりという経験をされている方もいらっしゃるのではないかと思います。
その場合は、クラウドへの切り替えを検討するタイミングかもしれません。
運転者からどうやって実施結果を得るか?
ようやく、(1)運転者からどうやって実施結果を得るか? の話にたどり着きました。
このステップは少し厄介です。といいますのも、運転者に車両を運転する前後に必ずアルコールチェックを実施してもらい、なおかつ、誤記入や漏れがないように対応してもらわなければならないからです。
ただでさえ現場で忙しい運転者にとって、検査と記入の負担は甚大で、方法によっては現場から反発が起きてしまうかもしれません。運転者に対して、数回の勉強会や説明などを実施し、しっかりフォローしながら進めることが重要になってきます。一方で管理者が適切に運用しようとすればするほど、現場の負担も増える傾向にあり、面倒な作業であればあるほど、アルコール検査の実施結果が集まらない……というような事態を招きかねません。
このような事態にならないためには、運転者があまり負担を感じず継続して実施できる仕組みを整える必要があります。まさにスマートフォンの活用などがそのよい例です。例えばスマートフォンのアプリであれば、画面に表示される手順どおりに実施するだけで、記入漏れが防げたり、一字一句書かなくても選択肢から選べたり……と少しでも運転者の負担を減らすことができます。
さらにスマートフォンであれば、入力したデータが自動でクラウドに登録され集計されるというところまで一貫して実現ができます。実はこれがスムーズに運転者から検査結果を得るための一番の近道なのではないでしょうか。しかも検査結果を帰社や出社を待たずにリアルタイムに把握でき、外出先での検査や、直行直帰にも対応できるというメリットまで兼ね備えています。
ここまで読んでいただき、そろそろクラウドで管理しようかなという気になっていただけたら幸いです。次回は、運転者に負担なく入力してもらう方法をテーマにしたいと思います。
次回は4月28日(金)更新予定です。