最終回 Point3 社員が成長できる-評価面談の目的と注意点-

社員の成長を促すには、評価制度が「見える化」されていること、上司が部下に対して支援型のマネジメントを行うこと、定期的に面談を行うことが重要です。

評価面談の目的と注意点

評価面談の目的は、部下が期初に設定した目標の達成状況を振り返り、その評価をフィードバックして、次回の目標設定につなげることです。

実施に当たっては準備として、上司(評価者)と部下(被評価者)とがそれぞれ、評価シートに評価点とコメントを記入しておきます。

面談では、部下が、自分で掲げた目標一つひとつについて、「これはできた」「これはできなかった」と、自己評価を上司にプレゼンします。

達成できた目標については、再現できるように成功要因を確認します。達成できなかった目標については、問題点や改善策を明確にし、問題解決のために部下が行うこと、上司が支援することを具体化します。

部下が、上司の評価点より著しく高い評価点や、著しく低い評価点を付けている場合があります。そんな時は、上司は、その部下が自分に対して甘い人間なのか、ストイックな人間なのか、パーソナリティーも判断し、アドバイスや指導に生かします。

部下が上司の評価に対して不満を持つこともあります。その場合、上司が絶対にやってはいけないことがあります。その注意点を分かりやすく説明しましょう。

登場人物は、スタッフ、課長、部長です。スタッフが被評価者、課長が一次評価者、部長が二次評価者で査定を行うという設定です。

評価面談で、スタッフは自己評価の評価点を65点で出してきました。それに対して、課長の評価は60点でした。そこで、スタッフと課長がキャッチボール(話し合い)をして、スタッフも60点の評価点で納得し、合意形成ができました。課長がその評価点を部長に上げたところ、部長は、「これはない」と判断しました。
実は、その課長は、甘い点を付ける人だったのです。その課は、ほかの課と比べて良い業績を上げているわけではありません。業績が良いほかの課が上げてきたスタッフの評価点は、58点、57点、56点、60点という点数でした。

部長は全体が見えているので、「これはない」と判断したのです。そこで、「申し訳ないけれど、55点だ」と課長に伝えました。すると課長は、スタッフにこう伝えました。「おれは60点で出したんだけど、部長に55点と言われちゃった。ごめんね」
これは絶対にだめです。これでは課長の立場がなくなります。また、課長とスタッフとが一緒になって会社を批判することにもなります。

目標設定の時は、被評価者と一次評価者が話し合って加筆・修正をして合意形成ができた目標を、二次評価者(承認者)に上げていきます。評価面談の時は、これとはフローが異なります。評価面談では、被評価者と一次評価者で、評価点についてキャッチボールをやってはいけません。

では、どうしたら良いのでしょうか。次に正しいフィードバックの仕方を説明しましょう。
課長は、評価点を何点で部長へ上げるか、スタッフには伝えていません。以下、課長と部長とのやり取りです。
「スタッフは65点を出してきたのですが、私は60点だと評価しました」
「60点はないな。ほかの課は、あなたの課より業績が良いのは知っているよね」
「知っています」
「あれだけ業績が良くても、60点評価のスタッフは一人だよ。あなたの評価はちょっと甘いのではないですか」
「そうですか」
「あなたの課のスタッフは、プロセスの一部の目標は達成できたかもしれない。しかし、一つひとつの達成度をよく見ると、全部積み上げて60点というのは納得がいかない。部の業績を見ても、まず難しい」
「なるほど」
「55点にさせてもらっていいですか」
「分かりました」
課長と部長とがそんなふうに合意形成をしたあとは、
「部長に55点と言われちゃった。ごめんね」
ではなく、課長は自分の言葉で、自分の評価として、スタッフに「55点」とフィードバックします。

以上の説明では、分かりやすくするため、査定も部長が行う設定でした。

しかし、実際の会社では査定調整会議をやっています。その場合、部長が「55点」を査定調整会議にかけ、そこでOKをもらって初めてフィードバックするという流れになります。査定調整会議の結果、「52点」になるかもしれません。この時も、部長、課長は、結果を自分の意思としてフィードバックしないと、職責を全うしたとはいえません。

社員を大切にする会社とは、目標が明確であり、評価制度が「見える化」されていて、社員が成長できる会社です。そういう会社は業績も持続的に伸びていきます。社員を大切にしたいと思う経営者には、一日も早く、社員が成長できる人事評価制度を導入し、効果的に運用してもらいたいと思います。

また、部下を持っているマネージャーであれば、まだ制度が100%整っていなくても、自分でできることがあると思います。もう一度自分の職責を見直し、より良い会社にするために、中間管理職としてやるべきことをやりましょう。

本コラムを読んでいただきありがとうございました。何か気付きがあれば幸いです。

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この記事の著者

株式会社あしたのチーム 代表取締役社長/給与コンサルタント

高橋 恭介

株式会社あしたのチーム代表取締役社長。1974年千葉県生まれ。大学卒業後、興銀リース株式会社に入社し2年間リース営業と財務を経験。2002年、ベンチャー企業であったプリモ・ジャパン株式会社に入社。副社長として人事業務に携わり、当時数十名だった同社を500人規模にまでに成長させブライダルジュエリー業界シェア1位にまで成長させた。2008年には、同社での経験を生かしリーマンショックの直後に株式会社あしたのチームを設立、代表取締役社長に就任する。現在、国内19拠点、台湾・シンガポールに現地法人を設立するまでに成長。1,000社を超える中小・ベンチャー企業に対して人事評価制度の構築・運用実績を持つ。給与コンサルタントとして数々のセミナーの講師も務める。
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