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第1回 アメリカ人の大学生の就職率
はじめまして、Global Career Partners Inc.、浜崎 日菜子と申します。
弊社は2004年から米国ワシントン州のシアトル近郊を拠点に、日米両国の人材採用サポート事業に携わっています。
本コラムでは、アメリカの就職、採用事情を日本と比較しながらご紹介させていただきたいと思います。
さて、1回目は、アメリカ人の大学生の就職率についてお伝えいたします。
AP通信が2012年4月、“1 in 2 new graduates are jobless or underemployed”というショッキングな記事を発表しました。
アメリカでBachelor(四年制大学の学位)を取得した25歳以下の若者の内、2人に1人、53.6%、約150万人が、失業中、あるいはレストランのウェイター、ウェイトレス、バーテンダー、小売店の店員など、低賃金、大学卒の学歴の必要とされない職業についているとのことです。
一方の日本、文部科学省と厚生労働省が、同じく昨年5月に発表した2012年3月に卒業した大学生の就職率は93.6%とのこと、大学生の厳しい就職活動の状況が言われますが、ふたを開けてみると、9割以上は卒業後すぐに就職ができているようです。
アメリカの新卒学生の就職状況は、もちろん不況の影響もありますが、ドットコムバブルのはじける前、比較的景気がよかった2000年であっても、アメリカでは新卒の学生の41%がjobless or underemployedだったということで、93.6%の大学生が大学を卒業してすぐに就職をする日本とは異なる事情がうかがえます。
弊社のオフィスの近郊には、アメリカ大学ランキングでトップ50位に入る名門校、ワシントン大学があり、大学を卒業したアメリカ人の学生が仕事の相談で訪れます。日本の感覚で言えば、こうしたトップ大学の学生であれば、企業側から引く手あまたではないかと思われるのですが、そうした学生はコンピュータサイエンスなどのエンジニアリング系、あるいは会計系の専攻で、専門性と企業側からのニーズの高い一部の学生に過ぎず、文学、歴史、社会学などいわゆるliberal arts(リベラル・アーツ、一般教養)系の専攻の学生は、卒業後すぐに正社員として採用されることはかなりハードルが高いようです。
私が会った学生の中には、卒業後、半年から長くて2年以上もスターバックスや小売店の店員などをしながら、就職活動を続けている学生たちがいました。
彼らの内の一人は、ワシントン大学のファイナンス専攻の男性でしたが、卒業してから半年後にやっとアメリカの大手銀行での窓口担当の仕事が決まり、時給$12の契約社員として社会人のスタートを切りました。
93.6%が卒業後に就職をしていく日本、もし日本で卒業して半年間も就職できないとなると本人はもちろん大変ですが、家族や社会の目も気になるところです。
アメリカでは、新聞などでは、就職が決まらない新卒の学生の悲壮な様子が伝えられていますが、実際、私が会ったアメリカ人の新卒の学生からはそうした悲壮感は感じられず、意外なほど楽観的、他人がどうであれ自分は自分、将来やりたいことを時間を掛けて探すんだ、という自信と余裕さえ感じられることもあり、日本とはずいぶんと状況が違うものだと感じました。
この先の就職は大丈夫なのか、金銭的に続くのか、ご両親はどんなに心配しているか、とこちらの方が色々と心配になるくらいでした。
最後に一つ、日本人の学生の方が以外に自立しているかもしれないと思った記事をご紹介させていただきます。Twentysomething Inc., というコンサルティング会社が2011年に“85% of New College Grads Move Back in with Mom and Dad”、つまり大学卒業後に、アメリカでは85%の学生が両親の元へ帰って一緒に暮しているという調査結果を発表しました。
アメリカ人の学生が卒業後に就職が決まっていなくても自信と余裕を持ち続けられるのは、これから始まる長い社会人生活への準備にしっかり時間をかけることを認めて、それを精神的にも金銭的にも支える両親が背景にいるのかもしれません。
次回は2月25日(月)更新予定です。
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