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第2回 アメリカの女性就労事情
アメリカに来て10年、日々、アメリカ人、あるいはアメリカに暮らす女性のたくましさには驚かされます。
まずはさまざまな職種における女性の進出、医者、弁護士、大学教授などの専門職に、もはや女性は珍しくなく、日本では女性をほとんど見かけない職種、バス・トラックドライバー、建築・土木の作業員、警察官もそれぞれの職種の中で“女性だから”という特別扱いは受けず、男性と同じ内容の業務にあたっているたくましい女性を見かけます。
法律で職業における性差別が厳しく禁じられている国ではありますが、法律の上だけではなく現実的にも、アメリカには女性の職域には聖域は存在しないという印象を受けます。
また、アメリカの中流家庭においては共働きが基本、一家に二本の大黒柱があり、女性もその片方としてしっかり家計を支えています。
ご存知のとおり、アメリカでは、事業の縮小や企業の買収・合併によるレイオフが頻繁にありますが、ご主人が突然レイオフにあったとしても、“ここでこそ私ががんばって働くわ!”、というたくましさを見せてくれるのがアメリカの女性、ご主人が大学院へ通っている間、家計とご主人の学費を稼ぐ奥様、日本でも例が増えてきているようですが、出産後、夫を育児のために家庭に残し、収入の高い奥様が職場へ戻るという例はめずらしくはないようです。
2010年のアメリカの調査では35歳から44歳までの女性の未婚女性、既婚女性の就労率はそれぞれ78.2%と72.8%:(Labor Force Status - The 2012 Statistical Abstract - US Census Bureauより)、日本ではそれが86.7%と約62.2%(総務省統計局「労働力調査」を参考)、アメリカでは、結婚が女性が仕事を辞めるきっかけにはなりにくいようです。
以前、“トウキョウソナタ”という日本の映画を見ました。
一家の家計を一人で支えるお父さんがある日突然レイオフにあいましたが、そのことをなかなか家族に言い出せず、会社に勤めているふりをして毎日出かけていくという少し切ないお話。
一緒に見ていたアメリカ人の友人にすれば、奥様に隠しているお父さんや、代わりに働きに出ない奥様が“変”らしいのですが、ここは日本人にしか分からない事情と心情があり、日本の家庭ではまだまだお父さんが家族のたった一本の大黒柱、その一本の柱が倒れるということは大変なことだと思います。
さて、その一方で、最近、ヒラリー・クリントン氏が、国務長官を退任、次期大統領候補、そしてアメリカ史上初の女性大統領になるのではと話題のアメリカですが、ドイツ、ブラジル、タイ、日本のお隣の韓国でさえ、史上初の女性のトップリーダーを輩出しているこのご時代に、アメリカでは実はまだ女性の大統領が登場していません。
また、2013年1月付けで、Fortune 500の企業中、女性CEOは21名(4.2%)ということ、また、シニアマネジメントに占める女性の割合は世界平均21%に対して、アメリカ17%、日本5%、(参照:GRANT THORNTON IBR 2012)とのことで、確かに日本と比較するとアメリカは女性の社会進出が進み、就労環境も整えられているといえるものの、世界的にみるとアメリカは女性の社会進出のトップを走っているわけではなく、意外とGlass Ceiling(ガラスの天井)は厚いようです。
しかしながら、日々、たくましいアメリカの女性たちを考えると、アメリカのこうした状況が変わる日はそう遠くはないと思わされ、私自身はヒラリー氏がアメリカ史上初の女性大統領大統領となる日を楽しみにしています。
次回は3月25日(月)更新予定です。
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