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第7回 ハッピーリタイアメント
アメリカ人の主人に聞かれて困る質問、“リタイア(退職)したら何したい?”。
思わず、“リタイアせずにずっと働いていたい”というと、“そんな、ばかな!”という反応。
“僕はね・・・、まず1年に3回は海外旅行をして、大学で歴史の授業をとって、日本語も勉強したいな。後はガーデニングと自転車と読書を好きなだけやりたいね!”
“窓際族”、“濡れ落ち葉”、“熟年離婚”、こんな言葉が流行る日本に育った私には“リタイア”に対して悲観的で、楽しそうにリタイア後の夢を語る主人がいつにも増してアメリカ人に思えてしまうのです。
そもそも、二人の違いはそれぞれの父親にも顕著で、義父は保険会社で副社長まで努めて、計画通り55歳でリタイア、現在81歳ですが、10年前に初めて触れたコンピュータを習得し、心身ともに健在、リタイアメントライフを満喫中。
私の父は高校の教頭まで努め、70歳にして今年の3月にリタイア。
心身ともにとても健康なのですが、仕事一筋だったこともあり、これからリタイアメントライフを楽しめるか、少し心配です。
おそらく、私たち夫婦にとって、夢の老後は、主人=55歳で引退、私=生涯現役、何となくアメリカ人と日本人の違いがここで見えている気がします。
ご存知のとおり、Early Retirementは、アメリカ人にとって成功の証、十分なお金を稼いでしまったら、さっとリタイアして好きなことをすることがかっこいい、マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツさんは、53歳で引退、現在は奥様と慈善事業に打ち込んでいらっしゃる日々。
広いアメリカで、他にも優雅にEarly Retirementを楽しんでいらっしゃる方がいるとは聞きますが、身近にこうした方がいるというお話はあまり聞きません。
Gallup's Economy and Personal Finance survey.によると、2013年5月の時点で、アメリカ人の平均退職年齢は61歳、現役のアメリカ人の多くは年金が満額下りる66歳で退職をしようと計画をしてるとのことで、一部のお金持ちを除けば、退職の年齢はアメリカと日本で大きく差はなさそうです。
アメリカと日本の定年退職の大きな違いは、アメリカでは基本的には定年退職がないこと。もともと、年齢による雇用差別が違法なので、企業が年齢を理由に退職を迫ることはできません。
職務さえ果たしていれば、何歳になっても働くことが可能です。
強制的に退職をさせられるわけではないので、自分で退職する年齢を決め、それに向けて貯蓄をし、準備を進めていく、“自主性”を重んじられるアメリカらしい制度だと思います。
また、アメリカ人はリタイアに対して、これからやっと好きなことができる時間を得る、とポジティブに捉えていて、 “定年退職したら何をしたい?”という会話がオープンに交わされます。
もちろん、アメリカでもすべての人が、万全な計画と貯蓄を持ってリタイアを迎えるわけではなく、不安もあると思いますが、少なからず、リタイアメントは楽しみにしていると思います。
先日、主人の会社で、64歳の航空部品の現役エンジニアの方が、惜しまれながら退職していきました。
半年前にアルゼンチンタンゴ教室で4歳年下のガールフレンドと出会い、彼女との時間を多く持ちたいと退職を決めたとのこと。
リタイア生活を、仲良く一緒に熱いステップを踏んでいっていただきたいと思います。
アメリカのリタイア生活には、夢だけでなく、恋もありそう、日本も“窓際族”、“濡れ落ち葉”、“熟年離婚”などという言葉が廃れ、退職を前向きに受け取れる環境が出来上がると、いいですね。
次回は8月26日(月)更新予定です。
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