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第6回 国のトップを育成するお値段
アメリカには、大きく分けて2つの種類の大学があり、一つは州立大学、もう一つは私立大学、日本のように国立大学はありません。
私立大学の“年間”授業料の平均は$29000以上、それでは州立は安いのか、というと全国平均で$9647。大学の授業料は州ごとではなく、大学ごとに決められ、一番高いペンシルベニア州立大学で$16,444(年間)、一番安いワイオミン大学で$4,277と幅が広く、名門といわれる州立大学ほど授業料が高くなる傾向があります。
日本の場合、国公立大学の授業料が56万円程度、私立大学でさえ86万円程度、決して安いとはいえませんが、中流家庭であれば、何とか手の届く金額ではないでしょうか。
こんなに学費の高いアメリカですが、アメリカの大学への進学率は71%(日本は51%OECD「Education at a Glance 2012」)多くの人が、ご両親の積み立て、奨学金、students loan、本人のアルバイト、などさまざまな方法で学費を捻出(ねんしゅつ)し大学を目指します。
大学を卒業するアメリカ人は平均$28,000の借金を抱えて卒業するそうですが、借金を抱えても卒業できるのはまだいい方で、学費が続かず休学、中退、また、賄えるだけの授業を取り、長い年月をかけてやっと卒業していくアメリカ人も珍しくありません。
日本も学歴社会とは言われますが、アメリカでは学歴が給与にもっと大きく影響を及ぼしています。日本では男性の生涯賃金平均は高校卒業者で2億6千万円、4年制大学卒業者で2億9千万円(労働政策研究・研修機構調べ)ですが、米国国勢調査によると、アメリカでは男性の生涯賃金平均は高校卒業者で140万ドル、4年制大学卒業者で250万ドルと、アメリカの方が日本よりも学歴の違いによる給与の差が大きくなっています。
さらに、その上の学位となると修士号が290万ドル、博士号が380万ドルと、学歴が高くなるにつれて生涯賃金も顕著に上昇します。
また、日本でもその傾向はありますが、アメリカでは大学のレベルによって、給与額に差がつき、その格差は日本より遥かに大きいものです。
一般的に、学位が高いほど、大学がハイレベルであるほど、授業料も上がりますが、将来の収入の格差を考えると、高い学位、ハイレベルな大学への授業料も必要な投資、といえるのかもしれません。
少し前、オバマ大統領が演説の中で、今から9年前、13年掛かってやっとStudent Loanの返済をし終えたと伝えたことが話題になりました。
アメリカの大統領になる人が、大統領になるたったの5年前、42歳でやっと学費を完済したというのは、ちょっとした驚きでした。
オバマ大統領といえば、アメリカのロースクールの最高峰、ハーバード大学の出身、その授業料というと、年間$55,848(約544万円)、3年間のロースクールを終えると授業料だけで1500万円の費用が掛かってしまうという計算、奨学金の制度が充実しているとはいっても、一般市民にはちょっと手が届かない金額です。(これは大学院なので、大学の授業料はまた別になります)
一方、日本の最高峰といえば、やはり東京大学、東大大学法科大学院の授業料、年間804,000円、3年間で約240万円。
決して安いとはいいませんが、一般市民でも、手の届くところに日本の教育の最高峰があると思います。
ちなみに、安部首相の卒業された成蹊大学法学部の授業料は年間約77万円、4年間で約300万円、もちろん単純にこれだけを比較はできませんが、大学の授業料だけをみると、日本は誰にでも一国のトップになれるチャンスがある国といえないでしょうか。
日本は、すべての人に平等に高等教育を受けられる環境があり、がんばればどんな目標も夢も実現できる環境がある、アメリカから日本を見ているとそう感じます。
日本にはジャパニーズドリームがある、その実現のために若い人たちにがんばってほしい、と願っています。
次回は7月29日(月)更新予定です。
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