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第5回 日本の履歴書、アメリカの履歴書
職業柄、履歴書を読むことで1日が始まり、多いときには1日に30通以上目を通します。
中身は英文、和文、新卒、キャリア、職種もさまざまです。
ご存知の方も多いと思いますが、英文履歴書と、一般的な日本の履歴書は記載されている内容が違い、それぞれから読み取れる内容も違ってきます。
違いの一つは、顔写真の有無。日本では当然のように顔写真を添付しますが、アメリカでは写真を求めることは法律で禁じられています。
根本には、人種、年齢、性別などによる差別の禁止があり、写真を見るとこれらのことが一度に分かってしまうからだと考えられます。
アメリカは多人種国家、氏名を見ただけでは、どこの国の出身なのか、また性別は分からないことが多々あります。
また、アメリカでは、履歴書に生年月日を表記することも禁じられています。
だいたい20歳代前半で大学を卒業する日本とは違い、30歳、40歳、50歳になって大学で学位をとる方もいるアメリカでは、大学の卒業年月を見るだけでは年齢も分かりません。
以前、エントリーレベルの経理担当者を探していた際に、大学を卒業したばかりのアメリカ人の方を面接にお呼びしたら、かなり高齢の女性だったということがあります。
子育てを終え、一念発起して大学へ入学し、Accountingの学位を取ったとのことでした。
お会いして初めて、人種、年齢、性別が明らかになるのがアメリカの履歴書の一つの特徴です。
また、特に新卒の履歴書を例にとってみると、“学生時代に一番がんばったこと”、“自分の長所”、履歴書のフォームによっては、“趣味・特技”、まで書く欄もあり、パーソナリティー、ポテンシャリティが問われる日本の履歴書に対し、アメリカの履歴書は“どれだけ即戦力となり得るか”が問われます。
よって、新卒であってもアメリカの履歴書はアルバイト、インターン、ボランティアでどれだけ仕事に直結する経験を積み、どんなスキルを身につけているか、というPRが中心になります。
過去に、アメリカ人の学生の日本語履歴書作成をお手伝いをしたことがありますが、“自分の長所”として彼らが上げてくるのは、コンピュータスキル、企業での就労経験(アルバイト、インターン)などであり、パーソナリティーを長所としてあげるということは日本で就職をしたいアメリカ人にとっては最初のカルチャーショックになるようです。
ちなみに、アメリカでは“健康状態”を聞くことも、法律で禁じられているため、履歴書上で問われることもありませんし、入社の条件として健康診断を義務付けることもできません。
アメリカの履歴書と日本の履歴書のどちらがよいか、と問われると、企業と求職者の方のベストマッチングには、経験・スキル、パーソナリティーはどれも欠かせない要素で人材紹介会社の立場としては両方を足したものが理想です。
余談ですが、アメリカでは写真の添付が禁じられているはずですが、自主的に添付をしてくる方もいます。
以前、シアトルのある企業の依頼で、受付/事務を募集したことがあり、性別、国籍、年齢がよく分からない履歴書が100通近く弊社に届きました。
その履歴書の中に、写真を添付した履歴書が5通、どれも女性の写真で、4名が顔写真、1名はスーツ姿の全身写真が添付されていました。
皆さん、リクルートスーツ、No Smileの日本の“履歴書用写真”からは程遠く、同姓の私から見ても魅力的な方々で、目を惹かれずにはいられませんでした。
結局、スキル不足で書類選考の段階で不合格にしてしまいましたが、写真は要りませんよといっているのに、写真を付けてくるアメリカ人の積極的な姿勢には頭が下がります。
次回は6月24日(月)更新予定です。
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