第4回 アメリカ人が日本で就職する際の高い壁

弊社のサービスの一つに、日本企業にアメリカ人、またはカナダ人の新卒学生の採用をお手伝いをさせていただくことがあります。

日本では、多くの企業がGlobal 人材の採用に取り組んでいらっしゃいます。
アメリカにいて、日々日本人とは違うアメリカ人のものの考え方、アメリカ企業のビジネスに対する考え方を目にしていると、日本企業がアメリカ人を採用することは、日本企業の活性化・多様化が進み、グローバル化へのベネフィットは大きいと感じ、私自身はとてもやりがいを感じているサービスの1つではあるのですが、実はこれがなかなか簡単にはいきません。

アメリカにおいて、日本で働くことに興味を持ってくれているアメリカ人を見つけることは難しくありません。
ビデオゲーム、アニメーション、イチロー、寿司、自動車、カメラなど、様々な入り口から日本に興味を持ち、日本について知るうちに、日本へ行ってみたい、住んでみたい、と思ってくれるようで、日本文化、日本人に対して、よいイメージを持ってくれています。

ところが、就職となると話は別。現在の日本の企業制度が、なかなかアメリカ人には受け入れにくく、それを理解した途端に、日本への就職をあきらめる、といった例が過去に多々あります。

アメリカ人が受け入れられない日本企業制度の一つは、新卒の給与額にあります。

日本の2012年の大卒事務職の平均初任給は20万7,585円、技術職では20万7,535円、年収ベースでは250万円程度でしょうか。(日本経済団体連合会調査)
一方のアメリカ、2013年の新卒の平均給与は$44,928(NACE Salary Survey)。簡単に1$=100円で考えて、アメリカの新卒給与は日本の1.8倍になります。

もちろん、日本企業にはボーナスや、住宅補助、交通費の支給など、月給以外の収入がありますが、応募の段階で、これらの支給金額を明示する企業は稀(まれ)で、彼らの目に映る給与は月給のみとなり、日本企業=給与が安いという理解になってしまうわけです。
また、日本には給与や福利厚生を記載した契約書を結ぶ企業も稀で、契約社会で育った彼らからすれば契約書に明示されていないことは信用できないということで、まずは給与の額に納得してもらうことに高いハードルがあります。

また、日本企業の給与額の横並びにも一つの原因があります。
最近では日本でも個々の能力に応じて、給与額に差をつける企業もあるようですが、同じ企業であれば新卒の給与はほぼ同じ、職種や能力に応じて差がつくということはほぼないかと思います。

アメリカでは、同じ新卒であっても職種あるいは大学での専攻によって給与に差がつきます。
たとえば、2013年のEngineering 学部卒の平均年収は$62,535、一番低いHumanities & Social Sciencesの専攻で $37,058と(NACE Salary Survey)なっています。
アメリカでは大学でEngineering学部に入るのも出るのも難易度が高いのですが、企業からの需要や給与も高く、苦労した分あとから報われるという公式になっています。

全米でもTOP3に入るカリフォルニア工科大学のキャリアセンターの担当者とお会いしたときに、ここを卒業するとシリコンバレーのIT企業をはじめ、どこの企業からも引き合いがあり初任給は学士過程で$70,000、修士課程で$90,000、博士課程を持っていると$100,000以上は普通とのことでした。

昨年末、あるアメリカ人の男性をいくつかの日本企業へ紹介をさせていただきました。
この男性はアメリカの中でもTOP30校にランクされる大学の機械工学の修士課程で成績優秀、日本語も堪能でした。
能力的にも十分魅力的なのですが、コミュニケーション能力にたけ、礼儀正しく、日本人以上に気遣いのできる学生で、彼であればアメリカのどこの企業でも就職できると思われ、本当に日本で働きたいのかという確認、また日本の企業制度についての説明を何度もした後に日本企業を紹介しました。
日本で働くということが彼の長年の夢であり、“お金ではない”というのが当初の彼の考え方でした。

応募後、能力、人格ともに非の打ち所のない彼の選考は着々と進み、あとは年末に日本での最終面接を残すのみとなっていました。
ところが、日本へ旅立つ1週間前に彼から電話があり、中西部にある、ある自動車メーカーに$100,000近い給与で内定をもらい大変迷った末にここに入社することに決めたとのことでした。

日本で働きたいというあれだけの強い思いも、$100,000という金額にはやはり勝てなかったと寂しい思いもありましたが、彼の将来を考えると正しい選択だったと思います。

給与の額の問題で、途中で日本での就職を断念していったのは彼だけではありません。
特に技術職の学生であればその可能性は高くなります。
日本企業で働く以上、日本企業制度を受け入れることは当然だと思う反面、日本で働きたいと希望している優秀なアメリカ人を受けいれられる給与体系はないものか・・・とこのようなことが起こるたびに考えさせられます。

なかなか実現は難しいのですが、一人でも多くのアメリカ人学生が日本で活躍してくれるよう努力をしたいと思っています。

次回は5月27日(月)更新予定です。

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この記事の著者

Global Career Partners Inc. General Manager

浜崎 日菜子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。日本で信販会社、人事マネジメントコンサルティング会社で7年間の勤務を経て渡米。2005年より現Global Career Partners Inc.の事業立ち上げに携わり現職。米国シアトルを拠点に日米両国の人材紹介・派遣、採用サポート事業に携わる。
アメリカ:人材紹介・派遣情報サイト 仕事探し.com
日本:留学生のための就職情報サイト 帰国GO.com

アメリカの就職事情、採用事情 ~シアトルからのレポート~ バックナンバー

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