第8回 契約書は信頼の証?

毎年、7月、8月の夏の時期は、普段私たちが就職活動をサポートしている留学生の皆さんが一斉に日本へ帰国、面接を受け、結果を得る時期、私たちスタッフはシアトルで、留学生の皆さんからの吉報を待ちわびる季節になります。

こうした時期に、毎年めでたく内々定を得た留学生の皆さんから持ち込まれる質問があります。“内々定通知は電話だけなのでしょうか”。

今年もまたある男子学生から連絡が入りました。
第一志望の日本の大手メーカーから電話で内々定の知らせを受け大喜びで受諾をしたのですが、ふと、その電話が間違い、あるいはいたずら電話かもしれない・・・という不安が横切り、同時進行していた他の企業の選考を辞退してよいものかどうか、迷っていいるとのこと。証拠に残るように、文書やメールでの連絡が欲しいのですが、変なことを要求してせっかく内々定をいだいた企業に悪い印象を持たれることを心配しているとのことでした。

日本では、電話一本で内々定の通知、承諾が成り立ち、正式な書類は10月1日の内定式の時に交わす、という企業も少なくないようです。新卒としての就職は人生の一大事、電話だけではやはり不安という学生たちの気持ちもよく分かり、簡単な書類だけでもあったらよいのにと思うこともあります。信頼関係があるから契約書は必要ない、といったところでしょうか。

一方、アメリカ、たとえ新卒の学生であっても、Offer letterと呼ばれる雇用契約書を必ず交わします。
基本の内容は就労日、給与、福利厚生、役職、勤務時間などになりますが、企業によっては、その他の条件が細かく記載してあり、数ページに及ぶ場合もあります。人材紹介会社の弊社としては、この書類を元に、請求額や請求書が決定するため、とても大事な意味を持ちますが、採用予定者にとっても、契約書を交わすことで、雇用や条件が保証され安心できるため、Offer letterを交わすことはとてもよいことだと思っています。

時には、Offer letterが企業から送られた後に、採用予定者から、“入社3ヶ月に給与を見直しすること”、ご主人の健康保険に入るので、健康保険の補助は不要、“その分を給与に加算すること”など、細かいリクエストがあり、何度かOffer letterを書き換えることもあります。

日本人の感覚からいくと、採用前にこんなに細かくお金のことを言ったら、企業側に疎ましく思われるのではないかと心配になることもありますが、企業側も慣れた対応です。契約後に“そんなはずではなかった”とトラブルになるよりも、すべてのことを明確に、契約書に示すことがアメリカ流、契約書を交わすことで、かえって信頼関係が生まれるのかもしれません。

さて、契約社会のアメリカ、Prenuptial Agreement(婚前契約書)という言葉、お聞きになったことはあるでしょうか。
結婚前に、結婚後、あるいは離婚をした時に備えて財産分与などをあらかじめ契約で決めておくというもの。
このような契約書を結ぶのは一握りの財産家には限られるようですが、少し前に離婚をしたタイガー・ウッズは、10年結婚生活が続いたら、$20 million(約20億円) を前妻に支払うというPrenuptial Agreementを交わしていたそうです。(ご存知のとおり、10年は続きませんでしたが)
雇用契約書には賛成派ですが、婚前契約書については、この契約を結ぶことで信頼関係や愛が深まるか、についてはまだ謎です。

次回は9月30日(月)更新予定です。

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この記事の著者

Global Career Partners Inc. General Manager

浜崎 日菜子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。日本で信販会社、人事マネジメントコンサルティング会社で7年間の勤務を経て渡米。2005年より現Global Career Partners Inc.の事業立ち上げに携わり現職。米国シアトルを拠点に日米両国の人材紹介・派遣、採用サポート事業に携わる。
アメリカ:人材紹介・派遣情報サイト 仕事探し.com
日本:留学生のための就職情報サイト 帰国GO.com

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