第9回 格差社会 -アメリカと日本-

12月初旬、たまたま日本へ出張時に流行語大賞のニュースを見ました。
「今でしょ!」「じぇじぇじぇ!」「倍返しだ!!」「お・も・て・な・し♪」、ほとんど日本にいない私にとっては耳新しい言葉ですが、こうした平和な言葉が流行する日本も景気がよくなってきたと感じられ、嬉しく思いました。

さて、流行語に関して、もう一つ、今年で30年目を迎える流行語大賞、過去30年間の受賞語337語からTOP10を選出、その首位に選ばれたのが2006年にノミネートされた“格差社会”という言葉だったとのこと。
平等が当たり前、1億総中流の時代から、日本にも格差が出てきて社会問題になっている、日本の変化を象徴する言葉だそうです。
とはいっても、アメリカから見ていると日本は収入においては、まだ平等な国だと思わずにはいられません。
アメリカは、上位1%のお金持ちが、アメリカ全体の19%の収入を、上位10%が48.2%の収入を占める格差の国。(情報ソース:2012年 Emmanuel Saez / University of California, Berkeley "Striking it Richer: The Evolution of Top Incomes in the United States".)
また、アメリカの大企業のCEOの平均年収は$12.3Million。平均のアメリカ人の収入($34,645) の354倍(情報ソース:2012年The American Federation of Labor and Congress of Industrial Organizations)だとのこと、庶民にとってはアメリカのお金持ちは程遠い存在であります。

一方、日本の上場企業で1億円を超える報酬を得た役員は2013年度で301人、一番報酬を得たCEOが産自動車のカルロス ゴーン代表取締役社長兼最高経営責任者が9億8,800万円とのことですが、アメリカのCEOの平均にも届かない。
国税庁の民間給与実態統計調査によると、2012年の日本国民の平均給与は408万円ということなので、日本の収入格差はまだ小さいのではないでしょうか。

アメリカのこうした収入の格差は、既に大学を卒業したばかりの新社会人にもあります。
National Association of Colleges and Employersの Salary Survey2013によると、新卒のエンジニアリング学部専攻の学生の初任給平均年収は$61,913、対して、日本でいう文学部にあたるでしょうか、Humanities & Social Sciences(人間学・社会学)専攻の学生の初任給は$36,988、エンジニアリング学部の学生の給与はこうした文学部系の学部の学生の1.7倍、と初任給の段階から差がついているというわけなのです。

もちろん、企業によって給与も大きく違います。先日話をしたアメリカのTOP大学の化学工学専攻の学生は、ある石油会社から初任給$90,000で内定を受けたといっていましたし、Google, Apple eBayなどのシリコンバレーでは、優秀な人材には$100000以上の初任給もまれではないそうです。

また、同じ企業で同じ専攻であったとしても、就職の時点でどれだけスキル、経験があるかで初任給から差がつくため、アメリカの大学の学生は在学中になるべくインターンシップなどをし、スキル、経験を積んでいきます。その後も、努力と結果次第で、給与の差がどんどん広がっていく、こうした“格差社会”の仕組みが、アメリカが世界中から優秀な人材を集め、力を発揮させていく環境を作っていると思わされます。

一方、日本では新卒という括りであれば、新入社員への給与はほぼ “横並び”、日経連の調査によれば、2013年4月入社の新卒の学士課程卒の平均初任給は、208,721円、学士、修士課程の間での差はありますが、技術系、文系の専攻の差はほとんどありません。
企業が違っても新卒の初任給の差額はそれほど大きくはないと思います。個人がどんな経験、スキルがあるかによって、新卒給与に差がつくことはありませんし、その後の給与の差の開き方も、アメリカに比較すると小さく、アメリカから見れば日本はまだまだ収入では差がつきにくい国といえるのではないでしょうか。

日本では “格差社会”を否定的に見られる傾向があるように感じられますが、アメリカを見ていると格差社会も取るべきところがあると思います。
個人の努力や結果、能力を適正に評価できる仕組みがあれば、個人の努力を促し、海外からも優秀な人材が集まり、日本企業の発展にもつながっていくと思います。
日本へ働きたいというアメリカ人の学生と話をすると、日本企業の給与の仕組みを知り、日本企業への興味を失ってしまう学生も多々います。
アメリカ人にとって、技術大国である日本は働く場所として大変魅力的なのですが、努力をしても他人とあまり変わらない、平等を重んじた給与制度では、海外から優秀な人材が集まらないだけではなく、優秀な日本人も国外へ流出してしまうリスクもあると思います。

これからの日本にとって“皆、平等”という意識から“格差社会”のいい部分を取り入れていくことは今後の日本に必ずよい結果をもたらすと思います。
アメリカに住んでいるからこそ、日本が一層愛しく思え、もっと日本が元気になってほしいと願います。

次回は2014年1月27日(月)更新予定です。

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この記事の著者

Global Career Partners Inc. General Manager

浜崎 日菜子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。日本で信販会社、人事マネジメントコンサルティング会社で7年間の勤務を経て渡米。2005年より現Global Career Partners Inc.の事業立ち上げに携わり現職。米国シアトルを拠点に日米両国の人材紹介・派遣、採用サポート事業に携わる。
アメリカ:人材紹介・派遣情報サイト 仕事探し.com
日本:留学生のための就職情報サイト 帰国GO.com

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