第14回 健康保険と転職の切り離せない関係

新年早々、ワシントン州にある、ある日系企業に、貿易事務の日本人女性を紹介しました。彼女の15年の同業界での経験が高く評価され、企業側が彼女の希望通り、現在の給与から$10,000アップの給与額を提示してくれたため、とんとん拍子に話が進み、“Happy 転職”、となる予定、でしたが…。
「浜崎さん、今、健康保険の内容を確認したんですが、あまりにもひどいんです!内定承諾は少し考えさせていただきます!」と転職者の方からの電話。

日本の皆さんもお聞きになられたことがあると思いますが、アメリカの医療費の自己負担額は信じられないほど高額です。企業に雇用されている人であれば、企業が提供する保険に加入することが一般的ですが、その内容が企業によって大きく違うため、転職によって給与は上がったけれど、保険の自己負担額が増えて、結局総収入がマイナスになる、ということも起こりかねます。

簡単ですが、就職、転職の際に、企業が提示する健康保険の条件についてのポイントをご紹介させていただきます。

【1】健康保険の内容
アメリカには保険会社がいくつかあり、各保険会社が数種類のプランを提供し、主に下記のような違いがあります。
・どんな病院、医師にかかれるのか(保険会社が契約している医療機関、医師以外は保険適用外)
・州外の病院、医師にもかかれるか(プランによっては州外の医療機関、医師は保険適用外)
・どんな疾病をカバーしてくれるか(出産などが適用外のプランもあり)
・Copay(一回診療を受ける際の自己負担), Deductible(免責額), Coinsurance(補償額), Out of Pocket Limit(自己負担の上限額)がいくらか。
同じ保険会社が提供しているプランでも、Out of Pocket Limitがたとえば弊社の加入している保険の場合だと$2,500~$7,500まで幅があり、月々の保険料が安いと喜んでいると、病気になった時に思わぬ高額の請求書が届き、真っ青になることもあります。

【2】企業側の負担率(本人、家族)
企業によって、A:本人から家族まで100%保険料を負担する企業から、B:家族の負担はなく本人のみ80%などなど、負担率が様々です。
たとえば、本人一人の場合の保険料が$400、本人から家族を含めての保険料が$1,500とすると、Aの企業に勤めている場合、月々の自己負担額はゼロ、企業が$1,500全額を支払ってくれます。Bの場合は、本人の保険$32($400×20%)に加え、家族の保険代$900、計$932が毎月自己負担になります。

冒頭で挙げた女性の場合、現在の給与が$35,000、新しい企業から$45,000の給与提示を受け、$10,000の収入アップ、になるはずでしたが、保険料の企業負担額が違いました。この女性の場合、ご自身、自営業のご主人、大学へ通う二人の息子さんの四人の健康保険料が発生します。現在勤務している企業は、家族の分まで100%保険料を負担。転職先になる企業は、本人のみ100%負担、家族の保険料の負担はゼロのため、保険の負担額が月々約$1,000、年間$12,000の支出増。というわけで、トータルには収入が減ってしまう、という計算になるわけです。

結局、二人のお子様が大学の3年生・4年生で、すぐに自分自身の保険を持てるようになる、ということで、将来性とやりがいから、この転職を決心されましたが、リクルーターとして改めて、転職・就職の際の健康保険の重要度を認識させられました。

日本で転職される方々が、それぞれの企業の保険制度を転職の条件として考えられることや、日本人の方が、病気になる度に病気の治療よりも送られてくる医療費の請求書が気になるということは、あまりないと思います。以前、日本の教育制度について平等で素晴らしいとお伝えしましたが、日本の国民健康保険の制度もまた平等で素晴らしい。アメリカに来て初めて、どれだけ日本という国に自分が守られていたかを実感しました。

私は現在、雇用主の立場として、会社として加入する保険会社や保険のプランを決める役割にあります。雇用主側にとって、いい保険を提供したいと思う気持ちと、かかる費用とのバランスが頭を悩ますところではあります。大きな会社と比較すると十分なことはできませんが、従業員が安心して仕事に打ち込んでくれる環境は提供していたいと常日頃考えています。

さて、最近私の友人が、数年前に車の事故で負った怪我の再手術にわざわざ日本へ行ったという話を聞きました。20年以上アメリカへ住んでいますが、日本国籍は保持しているため国民保険の適用を受けられるとのこと。彼の入っている保険では、自己負担最高額が$4,000、日本の国民健康保険の最高負担額は約8万円、「航空運賃を払ってもお釣りが来た!(しかも日本の病院の看護婦さんは本当に優しかった!)」そうです。
安心して暮らせる日本の国民健康保険制度や、優しい日本の病院の看護婦さんが懐かしくなる今日この頃です。

次回は3月25日(水)更新予定です。

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この記事の著者

Global Career Partners Inc. General Manager

浜崎 日菜子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。日本で信販会社、人事マネジメントコンサルティング会社で7年間の勤務を経て渡米。2005年より現Global Career Partners Inc.の事業立ち上げに携わり現職。米国シアトルを拠点に日米両国の人材紹介・派遣、採用サポート事業に携わる。
アメリカ:人材紹介・派遣情報サイト 仕事探し.com
日本:留学生のための就職情報サイト 帰国GO.com

アメリカの就職事情、採用事情 ~シアトルからのレポート~ バックナンバー

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