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第15回 5人に1人が犯罪歴を持つアメリカ、での身辺調査事情
アメリカで人材紹介の業界に飛び込み10年、初めて知ったことが多々ありますが、その中の一つが、バックグラウンドチェック(Background Checks)。日本語だと、“身辺調査”になるでしょうか。
バックグラウンドチェックとは、これから採用をしようとしている候補者に対して行われる調査のことです。
アメリカのバックグラウンドチェックにはさまざまな種類があり、Criminal Check(犯罪歴の有無)、 Legal working status(合法的に労働できるか)、Driving and vehicle records(事故や交通違反歴)、Drug tests(麻薬など違法な薬物の使用)、Education records(学歴調査)、Employment records(職歴調査)、Credit history(借金の返済歴)など、企業や職種によってさまざまなバックグラウンドチェックが実施されます。
Society for Human Resource Managementの統計によると、アメリカの70%の企業が犯罪歴を、47%が借金返済歴の調査を行っているとのことです。
なぜ、アメリカでは、このような調査が必要なのでしょうか。
National Employment Law Projectの調査によると“some 65 million people have a criminal record” 6500万人のアメリカ人に犯罪歴があるとのこと、つまり約4、5人に1人という割合で犯罪歴があるとのことです。また、ある調査によると“around 46% job applicants falsely extend claims in their resume.”(記事:Visual.ly)、46%の人がレジュメに虚偽があるとのこと。
こうした数字を見ると、アメリカの企業が犯罪歴をはじめ、さまざまな調査を行うことも仕方がないのかもと思います。
弊社では、ご紹介をした方が内定を受ける前に、企業から依頼を受け調査を実施しています。調査の種類は、企業や職種によって違いますが、多くの場合は犯罪歴、時に薬物検査、まれに借金返済歴、というような内容です。
犯罪歴は、弊社の場合、専門の調査機関に本人の個人情報(氏名、住居歴、ソーシャルセキュリティ番号など)を提出し、国・州・郡などの各裁判所にある犯罪歴を調べて回答してもらいます。
薬物検査は、本人に専門機関で尿検査を受けていただきます。調査の内容にもよりますが、基本的な薬物のみのものなら、数日で結果が出ます。
過去10年間で、ドラッグテストで問題のある調査結果を受け取ったことはまだありませんが、犯罪歴になると、実はこの10年間に二度ほど、そういった調査書を受け取ったことがあります。1件目は麻薬の所持、2件目は“軽い”窃盗。どちらもほぼ時効になりかけていることもあり、無事採用に至りました。犯罪歴があるとなると、日本では大事になってしまうと思いますが、これほど犯罪歴を持つ人が多いと、寛容にならざるを得ないのかもしれません。
あまりにも犯罪歴が多いので犯罪歴の取り方も議論されているとのことですが、弊社の場合、日本人の方が多いため、この割合が適用されていないのかもしれないと個人的には感じています。
さて、先日アメリカのメーカーでManager/Human Resource 、人事・採用を担当していらっしゃる女性の方とお話をする機会がありました。工場で100人程度の方が働いてらっしゃるそうですが、離職率が高く、常に採用活動、犯罪歴調査、薬物検査を行っていらっしゃるとのこと。
「うちの会社はね、いろいろな経歴の人がいるから、犯罪歴なんて珍しくないのよ。ドラッグテストも…出るのよ、よく。」薬物使用歴があるとさすがに採用には至らないそうですが、犯罪歴は内容によって採用に至ることもあるそうです。
そして彼女の今の悩みは、こうして採用した方々の間で起こる「窃盗問題」、会社の冷蔵庫に入れておいたお弁当が盗まれる、という苦情が後を絶たないそうです。「やっぱり、犯罪歴がある人を採用してはいけないのかしら…。」
何だか中学生のかわいい悪戯に思えてしまいますが、これも立派な犯罪です。人のお弁当を無断で食べてはいけませんね。日本では、同僚のお弁当を盗んで食べる人の話は聞いたことはありませんから、履歴書に「賞罰 なし」と書くだけで、よいのかもしれません。
次回は7月29日(水)更新予定です。
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