第12回 日本にホワイトカラーエグゼンプションが根付くか?

先日、昨年末まで日本の大手都市銀行に総合職として3年間勤務し、アメリカ人との結婚を機に、シアトルへ引っ越してきた30代前半の日本人女性の就職相談を受けました。
日本で働いていた時には、毎日午後10時過ぎに退社、有休はほぼ消化できず、週末出勤もたびたびあったとか。そんなに忙しいのか、というと、実はそれが直接の理由ではなく、上司より先に帰りにくい、有給は消化“しないもの”という暗黙のルールがある、部署全員が出勤するのでとりあえず週末出勤、といったことがあるようでした。彼女に限らず、日本で働いている人の話を聞くと、このような労働環境にある日本企業は少なくはないように思います。
先月、半年振りに出張で日本へ帰国した際に、「ホワイトカラーエグゼンプション」制度の導入について、ニュースで議論が交わされていたのを目にしました。
年収1,000万円以上の労働者を「ホワイトカラーエグゼンプション」とみなし、労働時間ではなく成果で給与が支払われるということ、つまりこのカテゴリに当てはまる方々は、いくら残業しても残業代は支払われないという規定になるそうです。論点の一つは、どれほど残業をしても残業代が支払われない、サービス残業が増えるのではないかということでした。
アメリカでは、Exempt(エグゼンプト=ホワイトカラーエグゼンプション)と Non- Exempt(ノン エグゼンプト) という考えた方は、社会にしっかり根付いていて、法律も定められているため、日本のように議論になることはありません。職種や職務レベルによる規定はもちろんですが、給与について、年収23,600ドル以上(240万円)であれば、とりあえずExemptの資格を満たすため、残業代が適用されない、「ホワイトカラーエグゼンプション」の人はアメリカには多く存在します。
アメリカの「ホワイトカラーエグゼンプション」と、日本の年収1,000万円以上の「ホワイトカラーエグゼンプション」では、基準となる年収の額がかなり違います。アメリカでは、なぜ年収が300万円にも満たない人の「ホワイトカラーエグゼンプション」が成り立つのでしょうか。アメリカのExemptの働き方、考え方を見ていただくとよいと思います。

【1】上司より先に帰ってよいか=Yes
日本では、残業、長時間労働をしている事がよく働いていると評価をされる傾向が少なからずあるようですが、アメリカでは定時内に仕事が終わらない=仕事が遅い、能力がないとみなされます。また残業代も出ませんので、仕事を終わらせていれば、定時に会社を出ることが当然です。また、上の役職の人の方が給与が高い分、仕事をして当たり前と考えますから、自分の仕事が終われば心置きなく上司を置いて帰宅してもよいのです。

【2】チームの他の誰かが仕事をかかえていても、自分の仕事が終わったら帰ってよい=Yes
アメリカでは、個々の仕事の責任の範囲が明確、仕事の割り振りが縦割りです。自分の責任を果たすことが第一、他人の仕事まで手伝う、または付き合って会社に残るということはありません。顧客や取引先の担当者が、休暇中ということにでもなれば、その間を引き継ぐ人はいませんので本人の休暇が終わるまで、またなくてはならないということも日常茶飯事です。

【3】週末出勤と子供のサッカーの試合が重なったら週末出勤を断ってよい=Yes
子供を持つ私の友人によると、平日の夕方の子供のサッカーの練習にも多くの“お父さん”が送り迎えに現れ、週末の試合となればその数はもっと増えると聞いたことがあります。もちろん100%とはいえませんが、家族を大切にするのは当然、よっぽど重要な案件ではない限り、家族を優先することに関しては寛容に受け入れられます。
日本の企業でこのような行動を取れば、業務自体に影響はなかったとしても、人間関係といった点で、いづらくなってしまうのではないでしょうか。
アメリカエグゼンプトとは、自分の責任さえ果たしていればなので、時間は自分で管理するというのが根本の考え方です。アメリカは、訴訟の国、雇用者から企業が頻繁に訴えられる国ですが、「過労死」で訴えられたという例は聞いたことがありません。労働法の専門の弁護士さんに尋ねたところ、「死ぬまで残業するアメリカ人なんていませんよ」と一笑。いかに短時間で仕事を片付けるかが評価される国で、プライベートの充実も重要、そんなに残業が必要であれば、「死ぬ前に、アメリカ人は転職します」とのことでした。

では、アメリカは天国か、というと、その反面目標達成は厳しく評価され、万が一目標達成をしなかった場合は、昇進、給与、究極には雇用そのものにも影響します。そのため、 “自主的な”残業、自宅勤務、休日の労働はもちろんあり、目標達成に対する意識は日本人より高いかもしれません。
2013年版の通商白書では、日本の労働生産性は全産業で米国の6割弱とのことです。

平成25年版通商白書[概要]PDF(経済産業省 Webサイト)

このデータが全てを語る訳ではありませんが、やはり、日本は無駄な長時間労働、残業が多いように感じます。“生産性の向上”をゴールに置いて、残業、長時間労働をよしとする概念を取り除き、定時内に仕事を終わり退社することが普通とならなくては、日本に「ホワイトカラーエグゼンプション」の考え方が浸透していくことは難しいのではないかと思います。
かくいう私も十数年前までは、日本企業で冒頭の女性と同じような生活をしていました。今あの頃を振り返ると、時々“無駄な残業”のあと、上司、同僚と一緒に会社を出て、ちょっと一杯飲みに出かけていたのは、実は楽しい思い出、。ビールで乾杯する度に、チームとしての一体感を得たものでした。アメリカ人には決して理解できないビールの味かもしれません。

次回は8月27日(水)更新予定です。

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この記事の著者

Global Career Partners Inc. General Manager

浜崎 日菜子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。日本で信販会社、人事マネジメントコンサルティング会社で7年間の勤務を経て渡米。2005年より現Global Career Partners Inc.の事業立ち上げに携わり現職。米国シアトルを拠点に日米両国の人材紹介・派遣、採用サポート事業に携わる。
アメリカ:人材紹介・派遣情報サイト 仕事探し.com
日本:留学生のための就職情報サイト 帰国GO.com

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