第14回 業績悪化企業が金利引き上げを阻止する方法

銀行の一番の収益源は、融資を行うことによる利息収入です。

利息は、融資金額×金利、で決まります。銀行が収益を増加させるには、融資金額を大きくすることと、金利を引き上げることが必要となります。

そのため銀行では時々、銀行内で金利の引き上げキャンペーンが行われます。
その時に特にねらわれるのは、業績の悪化により信用格付が低くなり、銀行が融資をしたくない企業、融資を引き上げたい企業です。そのような企業では銀行としては、企業から融資を全額返済されても問題ないわけですから、金利引上げを強く要求できることになります。

銀行では、金利引き上げキャンペーンの時に本部から各支店へ金利引き上げ目標が通知され、それぞれの銀行員は自分の担当先企業に、金利の引き上げ交渉を行います。

その中で目標達成を目指す銀行員は、企業との交渉において、いろいろな言い方で金利を引き上げようとします。

例えば次のようにです。

「御社は信用格付が下がりましたので、金利を引き上げてもらわなければなりません。」

「金利引き上げ目標が銀行でありまして、協力してもらえませんか。」

「御社は赤字です。黒字になったら金利は引き下げますから、今回は金利を引き上げさせてください。」

「今後、御社への融資をスムーズにするためにも、既存の融資の金利を引き上げさせてください。」

このようなことを言われると、金利を引き上げなければ今後、融資を受けられなくなるかもしれないと経営者が恐怖に感じることから、多くの経営者は金利引き上げを受け入れてしまいます。

ただ、変動金利の融資で、短期プライムレートや新長期プライムレートなどのベースとなる金利の変動による金利引き上げでないかぎり、企業は金利引き上げを受け入れる必要はありません。

融資審査において、既存の融資の金利を引き上げてくれない企業だからと不利になることはありません。融資審査の8割は、決算書の内容により決まります。

金利引き上げについて、銀行取引約定書や金銭消費貸借契約書を見ると、金利は銀行と企業とで合意したことによるものとし、金融情勢の変化その他相当の事由がある場合にはお互いが相手方に対し、一般に合理的と認められる程度に変更することについて協議を求めることができる、と書かれてあります。

銀行は金利の引き上げの協議を求めることはできますが、一方的に金利引き上げを約束させることはできません。そのため、銀行の金利引き上げ要請は断ればよいのです。

また、赤字になったから金利を引き上げてほしい、黒字になったら引き下げるからと言われたとしても、信じてはいけません。

■金利の引き上げは経営改善計画書の説明で阻止する

ただ、銀行からの金利引き上げ要求を阻止するとは言っても、企業の業績悪化を理由としたのであれば、今後の銀行との関係を考えると、企業側としては断る明確な理由がほしいところです。

その時に作るとよいのが、経営改善計画書です。

経営改善計画書とは、業績悪化している企業が、どのようにして業績を改善していくか、書いたものです。

業績悪化となると、銀行がその企業に対して出している融資の、貸倒れリスクは高まります。

貸倒れリスクを銀行がカバーするために、銀行は金利を引き上げたいのです。
そのような理屈から、業績悪化している企業が金利引き上げを阻止するには、経営改善計画書を作成して銀行の貸倒れリスクを低いように見せることが重要となります。

また経営改善計画書の中には、企業の経費削減計画も書きますが、その中に利息の削減計画も書きます。

利息の削減計画とは、まさに金利の引き下げです。銀行は金利を引き上げたいのに、企業側は金利を引き下げたいと言ってきているのであれば、銀行は金利の引き上げをなかなか言いづらくなることでしょう。銀行が金利の引き上げを要求することは、銀行はこの経営改善計画書の内容を認めない、ということになりますから。

このようにして、業績悪化企業でも銀行からの金利引き上げ要求を断ることができます。

次回は11月18日(火)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社グラティチュード・トゥーユー 代表取締役

川北 英貴

株式会社グラティチュード・トゥーユー代表取締役。資金繰り改善コンサルタント。1974年、愛知県東海市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、97年、大垣共立銀行入行、主に中小企業向け融資業務を行う。同行を退職後、2004年に株式会社フィナンシャル・インスティチュートを設立。代表を退いた後、2016年、株式会社グラティチュード・トゥーユー設立。中小企業向けに資金繰り改善・経営改善のコンサルティングを行う。著者は『絶対にカネ詰まりを起こさな い!資金繰りの教科書』他、合計11冊。
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