第15回 融資の申し込み時に必ず金利の話も行う

企業は銀行に融資を申し込む時、最も心配することは、希望通りの融資が出るかどうかです。

そのため、企業として金利は二の次となりやすいです。そこから、後で金利を聞かされて思ったより高い金利となってしまった、ということが起こりやすいです。

■金利交渉は融資の申し込み時に行う

融資の金利は、次の二つのパターンで決まります。

1.融資申し込み後の審査にあたって金利が決まり、融資が実行される。
2.既存の融資の金利が、途中で変更になる。

2の場合、その中でも次の二つのパターンがあります。

2(1)金利は変動金利であり、短期プライムレートなど銀行独自のベースとなる金利の変動により、個別の融資の金利も変動する。

例えば短期プライム―レートが1.500%、個別の融資の上乗せ幅が0.125%であれば、その融資の金利は1.625%ですが、その銀行の短期プライムレートが1.625%に上がると、その融資の金利は  1.625%+0.125%=1.750%と変更されます。

2(2)ベースとなる金利の上乗せ幅が変更になる。もしくは固定金利の融資で金利が変更になる。

この中で、銀行と企業との交渉により金利が決まるのは、1の融資申込みの際の交渉時と、2(2)の既存融資の金利変更交渉時となります。

この二つの交渉の機会において、どちらが金利の交渉を行いやすいかというと、1の融資申し込み時です。

既存の融資の金利を途中から引き下げるのはなかなか難しくても、融資の申し込み時では、その融資の金利はどうするか、交渉しやすいのです。

銀行は融資審査を稟議書にて行います。融資審査を行う書類を銀行内で回覧して、支店長や審査部などの決裁者が決裁を行うやり方です。
そこには融資の金利をどうするかも書かれています。そして金利は、一度決裁されたら、その内容を後で変更するのは難しいです。

例えば稟議書では融資の金利は2.5%とすると書いてあったら、決裁された後、融資の実行前に企業から「金利は1.5%で考えてほしい。」という交渉は困難です。

そこから考えると、銀行内で融資審査が行われる前の融資申し込み時に、企業は銀行に金利を交渉しなければなりません。

しかし多くの企業では、融資が希望額どおり出るかどうかに頭がいきます。
金利のことは二の次であり、そのため後から、金利が思ったより高かったという事態となりやすいのです。

■余裕を持った資金繰り計画を

では、なぜ企業は、融資が希望額どおり出るかに頭がいってしまうのか。
それは、いつもぎりぎりの資金繰りをしている、いつもぎりぎりになって融資を申し込みしているからでしょう。

それであれば、資金繰りの年間計画、何月にどこの銀行でいくら調達するのかの融資の年間計画を立てて、心に余裕を持って、融資の申し込みをしていきたいものです。

例えば12月の運転資金をしのぐために11月に融資を申し込んでいるのであれば、前もって9月ごろ融資を申し込んで融資を受けておき、余裕を持った資金繰りを行うのです。

また設備資金であれば設備投資のぎりぎりになって融資を申し込むのではなく、設備投資の3ヶ月前ごろに融資の審査をしてもらえば、企業は余裕を持って設備投資の資金調達の準備を行うことができます。

企業が心の余裕を持てば、金利のことも考えやすくなります。融資の申し込み時に、金利はどのようにしてほしい、という話もします。

なお銀行は、融資の申し込み時に金利の話もしてくる企業は、金利にもきちんとしている細かい企業だと見ます。

そのような企業に対し、銀行としては、金利をどうするかをしっかりと考えていかなければならない、と考えます。そうなれば、金利は低くなっていくものです。

次回は12月16日(火)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社グラティチュード・トゥーユー 代表取締役

川北 英貴

株式会社グラティチュード・トゥーユー代表取締役。資金繰り改善コンサルタント。1974年、愛知県東海市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、97年、大垣共立銀行入行、主に中小企業向け融資業務を行う。同行を退職後、2004年に株式会社フィナンシャル・インスティチュートを設立。代表を退いた後、2016年、株式会社グラティチュード・トゥーユー設立。中小企業向けに資金繰り改善・経営改善のコンサルティングを行う。著者は『絶対にカネ詰まりを起こさな い!資金繰りの教科書』他、合計11冊。
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