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【最終回】 リスケジュールを行っている企業に求められるのは、会社再生の見込み
リスケジュールとは、毎月銀行へ支払っている返済金額の減額・猶予をしてもらったり、一括返済の融資の返済の延長や、分割支払いへの切り替えを銀行にしてもらったりすることを言います。
リスケジュールで企業に問われるのは、会社再生の見込み
銀行にリスケジュールを初めて交渉する際、もしくはリスケジュールを更新する交渉をする際、銀行に経営改善計画書を提出します。経営改善計画書とは、企業がどのようにして、現状の赤字の状態から脱し、黒字化するか、それを書いた計画書のことを言います。
そしてリスケジュールの間、銀行は毎月や三ヶ月に一回、六ヶ月に一回など、企業が経営改善計画どおりに経営改善を行っているか、進捗をチェックします。そのため経営改善計画の内容は絵に描いたモチではなく、十分達成できるものになっていなければなりません。
特に売上計画は、経営者の希望としては右肩上がりのものにしがちですので、現実を見据えた、十分達成実現可能なものにしておく必要があります。
経営改善計画の達成は、売上・利益にて、100%達成が望ましいですが、少なくとも80%の達成は実現したいところです。銀行はそこを目安にしております。
経営改善計画の達成が厳しい場合
経営改善計画の達成状況が、100%はともかく80%も厳しい場合。経営者としてはリスケジュールの更新を銀行に拒否されてしまいたくありません。
ここで重要なことは、経営者が、「会社再生の見込みがあり、その方向に向かって努力していること」を大きな声で主張することです。
銀行は、企業が良い方向に向かっているか、それとも悪い方向に向かっているか、この方向により方針を決定しております。例えば、次のような情報は、銀行に対してアピールする材料となるでしょう。
・市場が伸びている。
・取扱い商品やサービスに、潜在的なニーズが見込まれる。
・営業に取り組んでいき、顧客数が徐々に増加している。
経営改善計画書には、このようなことを書いていき、どのように経営改善していくかを書いていきたいものですし、今までの計画が達成できていなくても、ここから経営者が踏ん張るという姿勢を見せていきたいものです。
実際に、銀行が企業に付けている債務者区分が破綻懸念先、つまり銀行からは不良債権扱いされている場合でも、リスケジュールの更新を続けられている会社があります。このような企業は、債務超過が著しい状況で、銀行の基準を満たす経営改善計画を作ることができていなくても、売上が回復に傾向にあったり、少しずつでも返済が継続されていたりするなど、銀行から見て方向が悪くはないため、銀行はリスケジュールに応じ続けているのです。
なお銀行は、経営改善計画書を企業から提出されてリスケジュールを行った後、銀行に対し定期的に業績を報告したり、可能な範囲で返済額を増額したりするなど、銀行に対し誠意を見せていると、リスケジュールは更新しやすくなります。
リスケジュールの更新がされなくても企業は倒産しない
リスケジュールを断られると、企業は自動的に倒産してしまうかというとそうではありません。
リスケジュールは銀行と企業との同意のもと、返済条件を企業にとってラクにすることですが、初めてのリスケジュール交渉で銀行が同意しない、もしくはリスケジュール更新時に銀行が同意しない場合は、銀行は不良債権処理の流れに移っていきます。
信用保証協会保証付融資では、保証協会から銀行へ代わりに支払う代位弁済、保証付融資でない融資(プロパー融資)では債権をサービサーに売却、という流れが普通です。その流れの中で、同じ銀行にある預金は相殺(そのため、預金はリスケジュールを行っていない、融資を受けていない銀行に移しておくとよいでしょう)、担保不動産の競売を行います。
そしてその後は、保証協会やサービサーとの返済交渉の流れになります。保証協会やサービサーとは、企業や連帯保証人が返済可能な金額を返済するというスタンスになります。
こう考えると、リスケジュールを更新できなくても悲観することはありません。経営は継続することはできます。しかし、その後、新たに融資を受ける道が断たれる(全く断たれるというわけではないですが)など、やはりリスケジュールは更新を続け、いつかは返済再開の道ができる方を、経営者は目指すべきです。
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