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第23回 あなたの会社の稟議書を書きやすくする
銀行は、企業の融資審査を稟議書で行います。
稟議書とは、会議で集まる代わりに議題を書面に記載して、それが回覧されて決裁されるものですが、銀行においては企業から融資の申し込みを受けた担当者が稟議書を作成し、それが支店内で回覧され、支店長が最後、融資を出すかどうか、そして金額や返済期間、金利などの条件を決裁するものです。
また、その企業への融資総額が一定額を超えるなど、支店長で決裁権限がない場合は支店長を通過した後、審査部などの名称である本部の部署に稟議書が回され、そこで決裁されることになります。
そして融資が通るかどうかは、稟議書の内容が支店長や本部の部長に融資をしたいと納得させられるものであるかによります。銀行がその企業に融資を出すかどうか、判断がギリギリの場合においては、いかに融資を出したくなるように稟議書が書かれているかが融資審査を左右するポイントとなります。それであれば、稟議書を書く担当の銀行員に、融資審査を通せるような稟議書を書いてもらえばよいことになります。
しかし考えてみてください。
あなたといつもやりとりをする担当の銀行員は、経験が豊富にありそうな人でしょうか。稟議書を書く銀行員は、たいていは平社員です。なぜなら銀行内では、融資の申し込みは企業を担当する銀行員が受け、その銀行員が稟議書を書き、それを銀行内、支店内の組織の下から上に回していく、という流れだからです。
一般企業の多くは、お客さんとやりとりをする担当者は平社員の立場であることが多いと思いますが、銀行も同じです。ここから考えると、稟議書を書く銀行員は若手の平社員で、稟議書を書いた経験が多くない人、という像が浮かび上がります。
しかしその銀行員は、たいていは支店内で営業を担う係です。営業係の人事評価は、いかに数字を上げるか、です。その銀行員は、融資を多く実行してこそ銀行内での人事評価が上がります。しかしせっかく企業から融資が申込まれても、審査が通らなかったら融資の実績はゼロです。稟議書を書く銀行員は、なんとか融資審査を通したい、と思っているものです。
経験の少ない稟議書に、融資審査を通せる稟議書を書かせる方法
担当の銀行員に、融資審査を通せる内容の稟議書を書いてもらわなければなりません。そのために、あなたの会社から担当の銀行員に稟議書を書くための材料を多く提供してあげることが大事です。
担当の銀行員がまだ若手の平社員で、経験が少ない人であれば、稟議書を書くためにあなたから何を聞き出せばよいかも分かっていないかもしれません。それであれば、あなたは次の観点で、あらかじめ文章にまとめておいて、それを書面で、銀行員に提供できるとよいでしょう。
今後の売上・利益予測
- 今後5年間の年次の損益計算書の予測
売上について
- あなたの会社の商品・製品・サービスの市場の動向はどうか
- 各販売先に対する、ここ数年間の売上高推移、今後の売上見込みはどうか
- 販売先に大きな変動があった場合、それがあなたの会社にどう影響しているか
- 新規販売先の開拓への取り組み、開拓実績はどうか
- あなたの会社がこれから力を入れていく商品・製品・サービスは何か、またその市場動向はどうか
- 業界動向はどうか
- 同業他社の動向はどうか
粗利率改善について
- 仕入れの商品・材料の価格動向、外注費の価格動向はどうか
- 製造業であれば生産性向上・不良品削減の取り組みはどうか
- 仕入値を少しでも下げられるよう、相見積りなどの工夫はどう行っているか
- 無理な価格引き下げによる販売を行わないよう、どう取り組みをしているか
経費について
- 無駄な経費を使わないよう管理体制はどうしているか
- 経費の削減状況はどうか
人材について
- 人材育成の取り組みはどのように行っているか
- 社員の採用、退職予定はどうか
- 人件費削減の取り組みはどうか
設備投資について
- 最近行った設備投資による効果はどうか
- 今後の設備投資計画はどうか、またその費用対効果はどうか
入金・支払い
- 入金サイト・支払サイト・入金日・支払日はどうか
自社で稟議書を書いている企業も……
企業の中には、経理部長が元銀行員という場合もあります。銀行出身の経理部長は、銀行の融資審査の仕組みについて熟知しています。そして、いかに審査を通しやすい稟議書を担当の銀行員に書かせるかが、融資を通しやすくするポイントであることを理解しています。そのような経理部長の中には、経験の少ない担当銀行員に代わって、稟議書の原稿を書いてあげる強者もいます。
世の中には、融資を通すためにそこまでやる企業もあるのです。融資審査を通すために、稟議書を書きやすくしてあげるべく、多くの材料を銀行員に提供していきましょう。
次回は8月18日(火)更新予定です。