第46回 企業風土がはっきりあらわれる「部下から上司への接し方」の話

組織風土は会社によって千差万別ですが、人事施策を考えるうえではとても重要で、コンサルタントはこの把握のために多くの時間と労力を使います。その中で「部下から上司への接し方」は違いがよくあらわれる所です。

企業風土がはっきりあらわれる「部下から上司への接し方」の話

私が今まで多くの会社とお付き合いをする中で、会社ごとの雰囲気の違いというのは、いろいろな部分で感じます。組織風土ということで、それは業界や業種、社歴や企業規模、年齢構成や男女比、さらには地域や土地柄など、本当にいろいろな要素が絡み合っている中から醸し出されるものであり、全く同じという会社はありません。

私たちのような人事コンサルタントが企業の人事施策を考えていく中では、この組織風土はとても重要な要素で、その把握にはかなりの時間と労力を使います。やり方は人によっていろいろですが、かなり細かいところまで結構シビアに観察しています。

こんな組織風土の違いがあらわれる部分として、私がよく見ていることの一つに、「部下から上司への接し方」があります。経営者や上司に対して社員たちがどんな対応をしているかということです。その違いを単純化していうと、“フラットで差が少ないイーブンな関係”なのか、または“何かと上司を特別扱いするような関係”なのかというところです。

前者は比較的社員の年齢や社歴が若い会社に多く、俗にいう「さん付け運動」などは無縁の会社で、後者は中堅規模以上で年齢構成が比較的高い、社歴が比較的長いというようなところに当てはまることが多く、「さん付け運動」を真剣に検討するような会社という感じです。
また、これはあくまで私が感じることですが、前者は議論や意見交換が活発だが、俗にいう礼儀やマナーにはちょっとルーズで、後者は上意下達、トップダウンの傾向が強く、上司に対して物申すような気概はあまりないというところがあります。

私が知る会社の中に、圧倒的にこの後者の雰囲気を持った会社があります。
上司が近寄ってくると社員たちは何となくそわそわしだし、気を遣って話しかけたりします。上司たちは決していばるわけではありませんが、そんな感じをどこか当たり前に捉えている様子が見えます。
飲み会をすれば必ず上司の特別席があり、周りがあれこれと世話を焼きます。これは社員旅行、ゴルフコンペ、会社関係の冠婚葬祭のような時も同じで、何かにつけて上司にチヤホヤします。

私は今までいろいろな会社を見てきましたので、その会社の風土が世間一般でどんな位置づけにあるか、自分の経験値である程度は分かります。そんな私から見ると「ちょっとチヤホヤしすぎ」などと思ってしまいますが、組織の中にいる人たちは、他と比べる尺度をほとんど持っていませんから、仕方ないことなのかもしれません。

私自身は権威主義な感じよりは、フラットな関係性の会社に好感を持ちますが、それでもあまりに礼儀知らず、常識知らずでは困ります。組織の統制を考えれば適度なトップダウンも必要です。
また、会社が順調に伸びている時は、このフラットさが良い方に働きますが、伸び悩みや頭打ちの時期には、途端に組織が機能しなくなります。守りの施策というのはおのおのの現場任せでは打ち出しにくく、それでは統一性が取れずに効果を発揮できなくなります。
フラットというのは、言い換えればリーダー不在ということもでき、いざという時にリーダーシップを取れる者がいません。メンバーたちは他人にリードされた経験が少ないので、会社のピンチにもかかわらず、トップダウンの施策に反発したりします。

一方で、上司に何かとチヤホヤする会社では、上司は自分たち社員の身の上に影響を及ぼす相手だという認識が割と強く、上司の指示命令に従って動くことが、基本的な行動原理となっています。指示に忠実ということでは、組織が機能しているとはいえるでしょう。
ただ、これも行き過ぎると、社員が自律的に考えることをしなくなり、常に上司の顔色をうかがって些細なことも指示を仰ぎ、組織としての活力を失っていきます。上司の意向にいかに沿うかが意識の中心にあるので、「そもそも上司の意向は正しいのか」といった議論にはなりません。上司の責任になるような誤りや不正があっても、それが放置されたり隠されたりします。

組織風土というのは、このように「あちらを立てればこちらが立たず」というところがありますが、例えばフラットな関係を維持しながら礼儀正しいといった、トレードオフになりがちな要素を両立している会社もあります。
ある会社では、もともと自由な雰囲気がある中で、顧客向けの礼儀を重視した教育をしていったところ、いつの間にか社内でも「親しき仲に礼儀あり」の雰囲気ができていったということがあります。

好ましい組織風土を意識的に作るのはなかなか難しいことですが、工夫すれば相反する良い面を両立することができます。自社なりの方法をいろいろ試してみると良いと思います。

次回は7月25日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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