第42回 「ローカライズとカルチャライズ」

ITの話になると北米、欧州が中心となりますが最近大きな動きがあるのがアセアン諸国です。中国のマーケットを目指した日本のIT企業は、オフショアで現地を使うことはできましたが、IT製品を売り込むことには全敗と言っていいのではないでしょうか。

特にソフトウェア分野ではソースコードの提供を要求されてから進出計画は全く聞かなくなりました。コラム第38回で台湾の事情を書きましたが、台湾企業経由で販売しようとした経過はありますが成功した事例は聞こえてきません。韓国に対しても言語の問題があり同様の結果と聞いています。その中で急速に注目されてきたのが東南アジアのアセアン諸国です。インドネシア、マレーシア、タイ、カンボジア、ミャンマー、最近は当然ベトナムが注目されてきました。ここにインドが加われば中国以上の巨大マーケットが出現します。ビジネス的には注目すべきだと思います。

海外進出の注意点は、規格の違いです。コラムのはじめに2層式の洗濯機の話を書きましたが、日本の当時の洗濯機は、回転中でも追加で洗濯物が入れられるように蓋を開けると急停止して安全を担保していました。ところが諸外国の仕様はそもそも回転中には蓋が開いてはいけない仕様です。それを知らないメーカーが輸出をして大量クレームとなり大きな損害となりました。今となっては笑い話です。現地の仕様に合わせることをローカライズと言いますが東南アジアのメリットは言語的に英語が流通している点です。

ホテルでも大型ショッピングセンターでも英語は普通に通じます。IT系では仕様書は英語表記が大半です。標準規格も欧米準拠となっています。製品を販売しようとした場合のローカライズが比較的行いやすいし共通化が図れます。

問題がもう一点あります。それはカルチャライズです。文化と宗教の違いです。
日本で最もグローバルなソフトウェアはゲームソフトです。世界中で販売できてすごいと思いますが、実は大変な苦労があります。それがカルチャライズです。例えば宗教上の理由で肉を食べてはいけない国があります。ゲームの中で肉を食べるシーンがあったらそれを別のものに変えなければなりません。女性の顔を隠す習慣がある国では、顔は出せません。また、決闘シーンで流血があったら禁止される国もあります。色の制限や日本人には想像できない制約が存在します。これらを書き換える作業がカルチャライズです。
これを怠ると、全く売れない製品となります。

中堅・中小企業が一から全て調べて対応すると莫大な費用が必要です。そこで業界団体としてマレーシアのテスト事業者と情報交換を行っています。東南アジアではマレーシアを中心に品質の一環としてローカライズとカルチャライズの対応をする検証会社が複数設立されています。東南アジアマーケットに興味を持たれたら一度ご相談ください。

次回は2017年1月26日(木)更新予定です。

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この記事の著者

日本ナレッジ株式会社 代表取締役社長

藤井 洋一

1957年生まれ。大学卒業後、金融機関を経て27歳で創業。業種に特化したパッケージソフトウェア開発を中心にビジネス展開し、2005年からソフトウェアの品質向上の手法として、第三者検証の有効性と必要性を説き事業化。
一般社団法人 IT検証産業協会 会長
一般社団法人 コンピュータソフトウェア協会 理事兼PSQ品質基準委員会 委員長
著書:
「スポーツでの映像システム活用法」 日本文化出版
「IT検証技術者認定試験 知識試験テキスト」 BCN
日本ナレッジ株式会社

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