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第11回 パッケージソフトウェア品質認証制度(PSQ認証制度)はじまる
2013年6月12日(水)ホテルオークラのメイプルルームにて3年間かけて取り組んできたPSQ認証制度の正式開始の記者発表が行われました。
同時に国の直轄である独立行政法人情報処理推進機構ソフトウェア高信頼化センター(IPA/SEC)の「ソフトウェア品質説明のための制度ガイドライン」公開の発表も行われました。
これは“ソフトウェアの品質を第三者が確認する”制度構築の指針をまとめたものでPSQ制度もこの国のガイドラインに準拠しています。
個人的には国の機関と同じ壇上で記者発表できたことの意義は大きく、国が第三者による品質の見える化の必要性を明言し具体化したことはおおげさではなくITの歴史に残る記念日と思っています。
「ソフトウェア品質説明のための制度ガイドライン」は製品・システムの品質を第三者が確認する制度を設ける際の要求事項(43項目)等を下記の観点からまとめたものです。
●公正性の確保
・製品やシステムを確認する第三者と供給者の独立性の確保
・制度に関与していない外部者による制度のレビューの実施 等
●整合性の確保
・製品・システムの分野に依存しない要求事項
・分野ごとに異なる品質要求や技術に対応した審査基準策定の考え方 等
これによりさまざまな製品やシステム分野で業界団体が公正で整合性のとれた制度構築をすることができるとしています。(※2013年6月12日IPAプレスリリースより抜粋)
第10回でITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)の未来の自動車を含めたモビリティの進化について書きましたが、まさに安全性の確保に必要なソフトウェアに関して重要な定義付けがされたことになります。
産業が発展するには規制緩和が必要ですが品質や安全を無視した緩和はありえません。
きちんとしたルール(基準)の中でより良い製品をつくり提供することが企業の使命となってきます。
話をPSQ認証制度に戻します。
制度の中身はこのコラムの第3回と4回で書きましたのでそちらを読んでくだい。
では認証を取るとどんなメリットがあるのでしょうか。
一番は認証マークを付けることで利用者に安心感を与え売上を伸ばすことです。
同一の機能を提供する製品に対しての差別化もメリットとしてあります。
海外に進出していたり、これから進出する企業にとって製品に国際規格に準拠した認証が得られるメリットは間違いなく大きいと思われます。
ソフトウェア製品はOEM供給するケースも多々あります。
その際、品質を示す基準がないと相手先の基準に沿って再度品質テストを行わなければならず大きな負担となります。このようなケースでも認証を受けていることで負担を軽減できます。
認証を申請し取得する付帯的メリットとしてこれまで基準がなくテストしていた開発会社が基準や手法を設定できることがあります。
申請するためには社内の試験文書の整理が必要です。
どのような観点(品質特性)でテストを行い、その結果がどうであったか、修正履歴はどのようであったかなどを見直す機会となりその後の社内品質基準の目安となります。
私のコラムでは再三、品質はコスト増ではありませんと主張しています。
テストすべき観点を整理して一定の基準(目安)を設定して行えば効率的に品質は確保できます。
基準はその製品の社会的影響度合いによって大きく差があり注目されている原子力発電所や生命に関わる医療系は可能な限りの厳しく行うべきです。
その結果第三者の検証範囲が広がって負担が増えても将来的に安心、安全な社会に貢献でき信頼を得ることができますので必要な費用ととらえ積極的な取り組みを願っています。
本コラムの関連記事を下記にご紹介します。
■新聞掲載分
○日経産業新聞:6/13日版 5面
○電波新聞:6/13日版 2面
■Web掲載分
CSAJがパッケージソフト品質認証制度を開始、IPA/SECのガイドラインを基に制度設計(ITpro by 日経コンピュータ Webサイト)
IPA、ソフトウェアの品質を確認するガイドライン--CSAJ、認証制度を展開(ZDNet Japan Webサイト)
次回は7月25日(木)の更新予定です。
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