第22回 利用時の品質から学ぶ(リスク回避性について)

前回は利用時の品質の満足性について解説しました。今回はソフトウェアに限らずすべての製品で検討が必要なリスク回避性に関して記述します。

■品質特性のリスク回避性について
リスク回避性とは「製品又はシステムが経済状況、人間の生活又は環境に対する潜在的なリスクを緩和する度合い。」と規定されています。
また、リスクの定義として「所与の脅威の発生によって起きる悪影響の可能性との関数である。」ウィキペディアを引用すると「一例として人体もしくは財産等に対するリスクに危害リスク (risk of harm) といった危害発生の確からしさ、危害の厳しさに対する一つの組み合わせなどのリスクがあり、リスクには事象が顕在化することから好ましくない影響ごとが発生されること、その事象がいつ顕在化するかが明らかではない発生不確定性があるという性質が含まれる」と解説されています。
解釈としては、いろいろなリスクに対してどこまで考慮して回避できるようにしてあるか
と考えれば良いと思います。自動車で事故に備えた安全装備がどこまで実装されているかということになります。

副特性として具体的に三つの特性が追加されています。

・経済リスク緩和性「意図した利用状況において、財政状況、効率的運用操作、商業資産評判又は他の資源に対する潜在的なリスクを製品又はシステムが緩和する度合い」解釈としては、システムを導入し通常の運用している場合、人件費の節約など投資に対する適正な財務効果がありシステム導入により業務が停止するような大きな負のリスクが発生しないように提供されていることになります。

・健康・安全リスク緩和性「意図した利用状況において、製品又はシステムが人々に対する潜在的なリスクを緩和する度合い」これはソフトウェアではあまり対象とならないがシステム全体として利用による健康被害等を防止する配慮となります。
長時間の画面操作による視力低下や電磁波の損害を受ける人に対するリスクを緩和せよということです。

・環境リスク緩和性「意図した利用状況において、環境に対する潜在的なリスクを製品又はシステムが軽減する度合い」製品は企画から廃棄までのすべてのプロセスにおいて管理すべきであるのでシステム移行の際のPC廃棄や帳票出力用のインクやトナーを含めた環境への影響がないものを利用しているかと考えられる。

今回のリスク回避性はソフトウェア品質ではなくハードウェアを含めたシステム全体の品質と考えられます。
携帯電話やスマホのゲームが主流となりゲーム専用機の販売が厳しくなっています。
その反面知らない間に課金されびっくりするような料金が請求され社会問題となり、その対策として限度額の設定ができるようになりました。
これが経済的リスク緩和性です。
徹夜でゲームにのめり込んで寝不足による健康被害や視力の低下が問題となりました。
この問題に対し、連続の利用時間制限をかけ子供の健康リスクを緩和するようになりました。
自転車ではBAAの安全マークを付与しました。
その基準の一つに自転車の部品に含まれる鉛の量を制限し廃棄時の環境への影響度合いを軽減しました。
電気の省力化も広義での環境への影響軽減といえます。
利用時の品質は、「人間中心の設計」を心がければ実現できます。
開発側がどれだけ事前に顧客要望を聞きだし、明確化して合意形成をするかにかかっています。
これはすべてのモノづくりに共通しますので是非参考にしてください。

次回は8月28日(木)の更新予定です。

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この記事の著者

日本ナレッジ株式会社 代表取締役社長

藤井 洋一

1957年生まれ。大学卒業後、金融機関を経て27歳で創業。業種に特化したパッケージソフトウェア開発を中心にビジネス展開し、2005年からソフトウェアの品質向上の手法として、第三者検証の有効性と必要性を説き事業化。
一般社団法人 IT検証産業協会 会長
一般社団法人 コンピュータソフトウェア協会 理事兼PSQ品質基準委員会 委員長
著書:
「スポーツでの映像システム活用法」 日本文化出版
「IT検証技術者認定試験 知識試験テキスト」 BCN
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