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第28回 上海ソフトウェア事情見聞録
ソフトウェア試験の国際規格について書いてきましたが今回は一休み。
6月の初旬に上海に行ってきました。前回は2010年の上海万博の直前に行きましたので5年ぶりの訪問でした。ルートは羽田~虹橋空港です。
まず驚いたのは羽田で両替した時です。私の記憶では1万円で900元が700元まで元高になったところまででした。現在円安といえ、なんと400元+若干の差額になっており換金率が半分以下になっていました。上海について知人の車で市内に入りました。昼間は相変わらずの渋滞で、夜なら10分で着くホテルまでの道のりに30分を要しました。その間の市内の景色に二度目のびっくりです。走っている車が欧米・日本の高級車の多いことと、道路の道端が清潔できれいに清掃されておりゴミが落ちていないことです。20年前の中国を知っている私には信じられない光景です。緑が多く計画的に花壇もつくられています。5年前は万博に備え地下鉄工事があちこちで行われていました。それが現在では13号線まで整備され、東京の地下鉄並みの便利さです。また、ホテルのフロントの人は英語を話せましたがそれ以外の従業員は中国語しか話せませんでした。それが今や若い従業員であれば簡単な英語が通じます。日本語、朝鮮語も話せる人が多いようです。訪問した現地法人の社長の話では英語は第一外国語で必修となり、第二外国語で日本語か朝鮮語を勉強する人が多いと教えてくれました。上海の教育レベルの高さに驚かされました。
今回の訪中目的は、高騰するソフトウェア開発費の実態を確認することでした。
中国国内の仕事を受託する場合は人月40万円が常識で、日本からの受託は35万円と逆転現象となっているとの事前情報で、実態も違わずその通りでした。開発希望者が少なくなり技術者を確保することが難しくなっています。税金と年金が高く、自由業・契約社員が急増し、税金を払わない宅配の若者が金持ちとなる現象も起きているようです。
今回は日系企業2社、現地法人3社を訪問しましたが答えは全て一緒で、中国国内のインフレが加速していることが確認できました。為替の影響もありますが上海の物価に関しては3年前の3倍くらいではないかとの意見が多数ありました。ユニクロは日本では低価格商品ですが、上海では高級商品となっていてそれでも売れています。一例ですが男性用のチノパンは日本で3,980円ですが上海では1万円の価格感となっています。
本業のソフトウェア品質に関してですが、上海テスティングセンターという上海市が運営する組織があります。上海市の発注するソフトウェアの受入検査は全てこのセンターで行われ、合格しないと検収とはなりません。市販のプロダクト製品も同様の扱いとなるようです。技術的にはテスト技法の標準であるISTQBを取り入れ、資格試験の運用も行われています。常時200名体制を維持しているようです。
本コラムで解説しているISO/IEC/IEEE 29119については知っているようですが、中国語訳されたものはなく、解説本もこれからのようです。国際規格としての構成について説明するとかなり興味を持ったようで、専門用語で多くの質問をされました。それだけのレベルを持っているということです。日本でもこれから普及していく本規格ですが、上海市の団体が大きな予算で取り組みを行ったら、あっという間にアジア圏の標準となってしまうのではと感じました。
夜になると盛り場が一杯になり、カラオケでボトルを入れると2万円です。タクシーは捕まらず、まるで日本のバブル時代を彷彿させる活気に圧倒され帰国しました。
次回は7月30日(木)の更新予定です。