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第13回 “紙の領収書”がついに保管不要に!?規制緩和でスキャナー保存がこう進む!
2005年に施行された「e-文書法」は、取引先から入手した国税関係書類を電子化しようとすると、法的な要件が厳しかったため、積極的に電子化に取り組む企業はそれほど多くありませんでした。しかし、2015年1月「平成27年度税制改正の大綱」が閣議決定されたことにより、e-文書法の規制緩和が決まりました。今後、スキャナー保存対象の幅が大きく広がり、企業における紙文書の電子化がさらに促進することが予想されます。
そこで今回は、e-文書法の規制緩和による企業のメリットについてご紹介します。
なぜ「e-文書法」は浸透していなかったのか?
「e-文書法」とは、これまで「紙」での保存が法的に義務付けられていた文書をスキャナーなどで読み込み、「電子化した状態での保存を容認する法律」のことを言います。この法律により、紙文書の電子化自体は進みましたが、国税の分野では少し停滞気味の状況が続いていました。
例えば「領収書」の場合、3万円未満の領収書に限っては、スキャナーで読み取り原本を廃棄することが認められていましたが、実際の現場では3万円未満の領収書と3万円以上の領収書を別々に処理する手間の方が面倒であるため、結局全てを紙のまま保管する企業が大半でした。また、電子署名・タイムスタンプが必要など、複雑な要件が必要となっていたことも、停滞していた要因として挙げられています。
規制緩和で全ての領収書のスキャン保管・原本処分が可能に
今回の国税関係書類の規制緩和は、2015年9月30日以降に行う承認申請からとなり、領収書・契約書など、多くの文書が電子化して保存できるようになります。領収書の「3万円未満」という制限がなくなりました。つまり、もらった領収書をスキャンしたら原本を処分できるようになったのです。このことにより、経理・総務部門にとっては、大量の領収書の保管場所の確保や管理の必要がなくなるとともに、検索性の向上など多くのメリットが得られるようになりそうです。「書類は全てスキャンして処分」できることで、紙文書の管理・保管コストを抑え、業務効率の向上につながることが期待できます。
経団連は、これまで大半の会社が強いられていた7年間の原本保存に約3000億円の保存コストがかかっていたと試算しています。規制緩和によるペーパーレス化推進で保存コストをゼロにできれば、日本企業にとっては「実効税率が0.6%下がるのと同等のコスト削減」が見込まれています。
次回は10月上旬の更新予定です。