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第58回 日本の中堅・中小企業が抱える切実な社会問題――今から取るべき対策とは
景気拡大と少子高齢化、そして労働者の売り手市場の影響により、中堅・中小企業の人手不足が深刻な事態を迎えています。政府の経済政策によって、有効求人倍率の増加と失業率の低下という結果が出ているにもかかわらず、中堅・中小企業では労働力の確保が難しくなっています。今回は、中堅・中小企業が抱える切実な社会問題(=労働人口の減少)と、その対策についてお伝えします。
止まらない人口減少! 日本人は過去最大の減少幅となる43万人減
総務省が発表した住民基本台帳に基づく2019年1月1日時点の人口動態調査によれば、日本人の人口は1億2,477万6,364人と、前年から43万3,239人の減少となりました。減少は10年連続となり、減少幅は1968年の調査開始以来、過去最大となりました。一方、外国人は16万9,543人増えて、過去最多の266万7,199人でした。
また、日本人の生産年齢人口(15~64歳)は7,423万887人と、61万3,028人減りました。全体に占める割合は過去最低の59.5%に下がり、高齢化に拍車がかかっています。なお、死亡数から出生数を引いた自然減は、過去最大の44万2,564人となりました。
近年、日本の人口減少と高齢化は際立っており、2017年の推計で2100年の人口は8,450万人でしたが、今回は7,500万人に下方修正されました。
- (注)出典:「日本の将来推計人口(平成29年推計)」(国立社会保障・人口問題研究所)
(http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp_zenkoku2017.asp)
図II-2 年齢 3 区分別人口の推移 をもとに制作
年齢3区分別人口の推移(注)
中堅・中小企業が「働き方を変える」ために必要なこと
生産年齢人口の減少によって、企業規模にかかわらず、企業では人材確保や労働生産性を上げる対策が必須となっています。中でも、深刻な人材不足に悩む中堅・中小企業では、大企業以上にその対策が求められています。
まずは、大企業を対象に始まっている「働き方改革関連法」の施行(2019年4月から開始)。中堅・中小企業でも2020年4月には施行開始となり、その対応を迫られることになります。そもそも「働き方改革」とは、「効率よく働くことで生産性も上がる」という一連の取り組みのことを指しています。そして、政府が働き方改革を進めている主な理由は、
- 日本の人口、特に労働力人口が継続して減少していること
- 日本の長時間労働がなかなか改善されていないこと
- 政府が奨励しているダイバーシティー(多様性)マネジメントや生産性向上が働き方改革と直接的につながっていること
の三つです。
つまり国内の労働力人口が減っていく中で、長時間労働や残業などの慣習が日本経済の足を引っ張り、生産性低下の原因になっていることから、働き方改革に乗り出したということになります。
改革に向けたさまざまな取り組みが検討されていますが、大切なことは仕事の無駄や長時間労働をなくすこと。そうなれば企業の生産性が向上し、労働者は出産・子育て・介護といったプライベートと仕事の両立(=ワーク・ライフ・バランスの実現)が可能になり、多様な人材が活躍できるということになります。働き方改革が成功すれば、企業にとっても労働者にとっても「WIN-WIN」になるはずです。
そのために「働き方を変える」ということが、今後はよりいっそう必要になっていきます。長時間労働を美徳とせず、限られた時間内で効率よく働く。効率を上げるために人だけに頼らず、機械などに仕事を任せる。そして人(従業員)が、いつでも・どこでも働くことができるようにする。こうした「働き方を変える」ためには、「ITの活用」が不可欠になります。いま一度、自社のIT活用について、見直してみてはいかがでしょうか。