第99回 行政処分にならないための運送会社の必須対策10選

前回まで4回にわたり、運送業の行政処分について執筆してきました。「行政処分リスクの上昇」は、どの企業にとっても人ごとではない現実となりつつあります。今回は、自社を守るために最低限行うべき10の対策を、実務ベースで整理してお伝えします。

行政処分にならないための運送会社の必須対策10選

前回まで4回にわたり、運送業の行政処分について執筆してきました。「行政処分リスクの上昇」は、どの企業にとっても人ごとではない現実となりつつあります。実際、点呼未実施や記録の不備、拘束時間超過など、日常の管理ミスがそのまま処分に直結する事例が増えており、2025年の日本郵便への事業許可取り消し処分は象徴的な出来事でした。

今回は、自社を守るために最低限行うべき10の対策を、実務ベースで整理してお伝えします。

対策1. 点呼記録簿は「紙+クラウド」運用を基本に

点呼記録簿の記載漏れ・保管不備・虚偽記載は、処分理由の筆頭です。特に実施していても「記録が不十分」で違反扱いになるケースが多発しています。クラウド点呼などのシステムを活用し、スマートフォン・タブレット入力でクラウドに即時保存、時間・場所・管理者を明記、記録の改ざん防止策もセットで行いましょう。

本来クラウド上のデータ管理でOKなはずですが、なぜか行政や協会の担当者により見解が異なることもあるようですので、手書き記録は原本として残しつつ(システムから出力する)管理するようにしましょう。

対策2. 拘束時間・休息時間の「月別集計」と「超過アラート」

拘束時間の「日単位・月単位・年単位」の管理が、改善基準告示違反→行政処分へのルートになります。

  • 月284時間、年3,300時間の上限を日報で分割集計
  • 休息期間(9時間、本来11時間)の未確保も即違反
  • システムで超過しそうなときに自動でアラート表示

超過しているかどうかが基準ですが、管理をしているかどうかが最も重要です。

対策3. アルコールチェックは「記録+確認者署名」

アルコール検知器使用は義務で、記録不備・確認者署名なしは、処分対象になります。

  • 検知器の型番・検査時間・結果・管理者名を必ず記録
  • 乗務後点呼の漏れに特に注意(分割休息の場合も)
  • 「実施」だけでなく「記録」が評価対象

対策4. 整備記録・点検記録のスマートフォン入力+保存

点検項目や整備状況の記録がなければ、実施していても未整備とみなされます。日々の整備を「記録で残す」仕組みが必要です。

  • 点検時にスマートフォンで写真+項目入力→クラウド保存
  • 期限切れ・未更新車両をリスト化して通知
  • 記録保管期間(1年)も要確認

対策5. 「運転日報」の構造見直し

運転日報が不備だと、勤務実態の証明ができず違反扱いになります。トラック協会ごとに必須項目の見解が違う場合がありますが、特に「走行距離」「労働時間」「休憩時間」の記載は必須です。

  • 紙+Excelからアプリ運用へ移行を検討
  • 出勤→点呼→出発→運転→納品→帰庫→退勤までを時系列で構成
  • 出勤退勤時間と点呼・整備記録が連動・前後関係が整合しているかを確認

対策6. 乗務員への法令教育は「月1回+テスト」へ

違反の背景には、「知らなかった」という教育不足が根強くあります。

  • 点呼義務、改善基準告示、アルコール検査などの基礎知識をeラーニング+確認テストで月1回実施
  • 違反事例の共有(ドライバー会議で事故事例の水平展開)
  • 教育記録もクラウドで保存、実施履歴の提出に備える

対策7. デジタル台帳(運転者台帳・車両台帳)は即対応

点呼の前提となる台帳が紙保管で未更新、という会社は少なくありません。これも行政処分の対象です。

  • クラウド管理にして定期更新をリマインド化
  • 閲覧権限・変更履歴も管理できるようにする
  • 国交省監査では即提示が求められる項目

対策8. 点呼種別と要件の正確な理解

IT点呼や自動点呼の導入には実績条件・許可制・実施要件があります。

  • 「できる点呼」「できない点呼」を表にして管理者に周知徹底
  • 対面不可時の代替方法(電話点呼ができるのは中間点呼のみ)に注意

対策9. 日常点検・記録の「抜け」をアラートで拾う

整備・点呼・日報のいずれも「実施漏れ」が最大の処分トリガーです。抜けたときに気づける仕組みが必要です。

  • 点呼・整備・出退勤の未記録時に通知するアプリを導入
  • Excelや紙ベースの会社は週次で手動チェック表を作成
  • 拠点・ドライバー別の「ミス傾向」も一覧化

対策10. 行政処分の過去事例を「自社ルール」に翻訳する

最後に、最も重要なのは「対岸の火事」を「自社のルール」に落とし込むことです。

  • 公開されている行政処分事例(国土交通省/運輸局)を確認
  • 該当項目を社内マニュアル化・チェック表に反映
  • 「チェックされたら困る箇所」を全社で可視化し、改善へ

まとめ

行政処分は「法律を守れなかった企業に対する罰」ではなく、「見えない・見逃した・気づけなかった」企業に対する結果です。運送業は今後、データ化されていない行動が評価されなくなる時代に入っています。そのためにも、毎日の記録・教育・点検を残す、見える化することが、最大の対策です。
今すぐできることから始め、処分されない会社から「評価される会社」へ、守りの対策が、企業価値向上への第一歩となります。

次回は9月12日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社AppLogi 代表取締役

廣田 幹浩

国内大手コンサルティング会社SCM&ロジスティクスソリューショングループ グループマネージャー職を経て現職。300社を超える荷主向け物流効率化、数100社超の運輸・配送関連経営コンサルティングの実績をベースとして、2018年に株式会社AppLogiを設立。最新の運輸・配送関連クラウドアプリケーションを提供する。
株式会社AppLogi

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