ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
第21回 「○○○をするな」より「○○○をしよう」
全国の運送会社の管理者からメールで寄せられる個別のご相談に応じています。
安全や品質への取り組みに関する内容や、社内外の人間関係に関するお悩みなど。
項目は違えども上位を占める共通のキーワードはこの三つ。
・伝わらない
・伝えられない
・何を伝えたら良いのかわからない
たしかに「誰かに何かを正しく伝えることは難しい」と思います。
だからこそ、この種のお悩みは良いお悩みと受け止めています。
なぜならば、ご相談をされる方々は「もっと正しく伝えようと工夫している人」ばかり。
伝えようとする(困難なことにも立ち向かう)姿勢が、個々の成長の証しや組織上での責任感の表れだと捉えています。
さらには「わからない」や「なんとかしたい」とのご自身の意思を、社外者の私に伝えることができる勇気も素晴らしい。
その行動は良化や解決に向けて本気になっている証拠です。
本気のご相談には「伝え方を変える」ことをお勧めしています。
たったこれだけ変えるだけ。
「○○○をするな」ではなく「○○○をしよう」に変えてみるだけ。
一例として・・・。
「交通事故を起こすな」ではなく「安全運転をしましょう」
「荷台から飛び降りるな」ではなく「荷台に登った逆の手順で後ろ足から降りましょう」
フォークリフトは「右側からの乗降禁止」ではなく「左側から乗りましょう」
「ポロシャツの裾をズボンから出すな」ではなく「ポロシャツの裾はズボンに入れましょう」
今、このコラムを社内でご覧になっている皆様。
事業所内の掲示物をご覧ください。
社内での会話や指示内容に耳を傾けてください。
指示や伝達事項に「○○○をするな」や「○○○禁止」等の“禁止”用語が使われていませんか?」
言い換えると「○○○をするな」と言うだけなら簡単なこと。
簡単な言い回しだから相手に熱意が伝わらないのかもしれません。
正しい手順を伝えず「○○○をするな」ばかりでは、相手は言われたことしかやらなくなり、いつしか主体的に動く意欲が失せてしまいます。
「○○○をしよう」と正しい手順を伝えましょう。
「○○○をするな」とだけ発して、ミスをしてから指摘するばかりではなく。
「○○○をしよう」と、できるまで教えるのが指導者であり職場のリーダー。
できなかったミスを叱るより、できるようになるための手順を教える。
これは事故処理と事故防止の違いにも似ています。
手順を教えるにはマニュアルで教えるのではなく、「やって見せる」ことをお勧めしています。
この方法を言葉に記すと「率先垂範」
そう記すと重く感じるかもしれませんが、伝える方法として「やって見せる」ことに勝るものはございません。
一例として・・・。
皆様は子どもの頃に鉄棒の逆上がりのやり方を、どの方法で教わりましたか?
皆様が子どもに自転車の乗り方を教えるならば、どのようにして教えますか?
一番簡単な伝え方は「やって見せる」ことです。
管理者がマニュアルを作成するだけではなく、管理者自らが「動くマニュアル」になるのです。
だから挨拶や身だしなみなどを含めて、上司ができていないことは部下に伝わりにくい。
ちなみにトラックしか運転したことがない私たちプロデキューブは、バス会社やタクシー会社からの安全研修に関するご依頼は基本的にお断りしています。
私たちの伝える力が達人レベルなら伝わるかもしれませんが・・・。
「社内で管理できる管理者を育成する」以上に、「社内で指導できる指導者を育成する」ことが、各運送会社で開催している管理者勉強会の共通テーマ。
社内講師を育成することが私たちの考えるゴールです。
最後に皆様へ質問です。
「現在のあなたはどちらのタイプですか?」
「○○○をするな」は管理者タイプ。
「○○○をしよう」は指導者タイプ。
「あなたはどちらのタイプになりたいですか?」
ありがとうございました。
次回は4月4日(金)更新の予定です。
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